チェンバロ試奏レビュー2022-09-19
クラビコード試奏レビューに続いてチェンバロの試奏レビューです。
フレンチ
超豪華なチェンバロも触らせてもらいました。クラビコードの音がか弱かったせいか、想像以上にブリリアントなサウンドに感激しました(^^) ピアノのように鉄筋をゴンゴン叩いてるような音ではなく、繊細でありながら華やかな音です。
音量的にはアップライトピアノをあまり頑張らずに弾いたくらいでしょうか。普通の住宅内では十分以上の音量です(環境によってはご近所に気を使う)。だから、小さなホールやよく響く中規模ホール(例:宝塚ベガホール)ならマイク無しで十分ではないかと。
ただ、キータッチはやはりクリック感の塊ですね(*_*;ONかOFF、0か100でその中間はありません。ピアノだと何げなくフワッと弾いても音は出ますが、チェンバロだとしっかり押さえる必要が有ります。クラビコードが気をつけないと余計な音を出してしまうのに対し、チェンバロは気をつけないと必要な音が鳴らないのです。
ご主人は「キーを下ろす速さで音色を変えられる」と仰るので試してみたら、確かに相当ゆっくり押せばシャカンという音になり(前後のジャックの僅かなズレ?)、スコンと一気に押せばズンと塊感のある音になるような気もします。ただ「出来てますよ」と言われても正直「うーん」と唸ってしまうような微妙な差ですね(*_*; これは聴き分けるのも弾き分けるのも相当訓練が必要そうです。
構造
このチェンバロはフレンチと呼ばれるタイプですが、後述のイタリアンとの違いはケースが上下に分厚い事だそうです(鍵盤が1段か2段かは関係ない)。よって、イタリアンと比べるとやや重厚で円やかな音がします。
初めて知ったのですが、チェンバロのケースって、響板・側板・底版で閉じてるんですね(この楽器は響板にロゼッタというバラ模様の小さな穴が開いてるが、無いものもある)。これはギターで言えばサウンドホールが無いのと同じなので、音が篭りそうですがそんなことはありません。
音域は(写真で数えると^^;)5オクターブ+1=61鍵かな?キーピッチは現在の標準鍵盤より狭そうだし、左右の枠はほぼ側板1枚分しかないので、幅というか間口は案外狭いです(900mmも無いらしい)。一方、(演奏者から見た)奥行きは多分2m以上あり、写真で見るよりかなり細長い楽器です。
上下の鍵盤の使い分けは、上がメロディーで下がベースとかではありません^^;上下段は同じ音程ですが、弾く弦の本数を変えて音色を変えています。
この楽器の場合、1音につき3本の弦が張ってありますが、内訳は8フィートと呼ばれる通常の弦が2本、そして4フィートと呼ばれる半分の長さ弦(1オクターブ高い)が1本です。上の鍵盤を押すと8フィートが1本だけ弾かれ、下の鍵盤を押すと8フィートと4フィートが1本づつ弾かれます。つまり、下段はユニゾンで弾いてるので、分厚く派手な音になります。
更に、上の鍵盤は手前に少し引き出して弾く弦の数を変えられます。このポジションでは、下の鍵盤を押せば上の鍵盤も連動して下がります(つまり3本すべての弦を弾く)。その時上段だけを押さえると・・・確か8フィートが2本鳴るんだったかな?(うろ覚えですみません^^;)
ちなみに、この2本の8フィート弦はテンションもゲージも弦長も同じですが、弾く場所が前後にズレているので音色が若干違います(弦の端で弾くほうが倍音が多く派手な音)。
イタリアン
写真は撮ってませんが、イタリアンのチェンバロも弾かせてもらいました(何とこれもキット販売してる)。鍵盤は1段で音域が狭く、間口は上述のフレンチより更に狭いのに(700mmちょと?)、奥行きは2mくらいあるという超細長い楽器です。これは広めの廊下に置けば良いのでしょうか^^;?
弦は各音につき2本で、1本だけ弾くことが出来たかどうかは確認してません。音はフレンチより明るくカラッとした印象です。実はサスティーンが短いとご主人に言われてフレンチと比べたら確かに短いですね。
ところで、商品情報(置いてあった楽器とは外装違い?)を見ると何と重量が25kgしか無いそうです。デジタルピアノより格段に軽いじゃないですか!(重めのステージピアノと同じくらい)。ギターや管楽器などでは、良い楽器ほど軽いと言いますが、鍵盤楽器だってアコースティックなら同じはずですよね。
フィレミッシュ
フォレミッシュというのは初めて聞きましたが、これはフランドル地方(現フランス、ベルギー、オランダにまたがる地域)で作られたチェンバロだそうです。フレンチより歴史が古いというか、そもそもフレンチはフレミッシュを手本に発展したようです。
鍵盤は2段で、ゴージャスな見た目も音も上述のフレンチに似ていますが、フレンチより明るい音だと言われて比べたら、確かにちょっと明るいですね^^;
なおこれとは別に1段鍵盤のタイプもあるそうで、これは上のイタリアンより音域が広いにも関わらず、奥行きが間近いそうです。それはお買い得感がありますね、値段は未だ見てませんけど^^;
スピネットとヴァージナル
実は僕はスピネットを見たかったんですが、展示品も含む在庫が全て売り切れてしまったそうです(なんでも消費税UP前の駆け込み需要とか^^;)。
スピネットとは写真のような小型チェンバロで、弦が各音に1本づつしか張られていません。よって音色は1種類ですが、ジャックが各弦につき1本なので鍵盤に対して弦をかなり斜めに張ることが出来、奥行きが格段に短くなっています。これだったら普通の住宅に置けそうだし、見た目もオシャレですよね。
一方、ヴァージナルという小型チェンバロは置いてありました。これは上記のクラビコードを一回り大きくしたくらいの真四角の箱から鍵盤だけ飛び出しているような形状です。
スピネットと同様に各音につき弦一本ですが、低音弦が手前に来て高音弦が奥に張ってあります(スピネットは逆)。言ってみれば、スピネットはチェンバロの弦を右側に傾けていった形状で、ヴァージナルは左に傾けた・・・・というよりチェンバロの左側面に鍵盤をくっつけたような形態です。
でそのヴァージナルを弾いてみた感想は、ちゃんとチェンバロの音がします(^^/ ケースの蓋を閉じていたせいか、イタリアンチェンバロよりむしろ落ち着いた音に聴こえました。音量も家庭で弾くには十分以上です。ただ、音やタッチが同じなら、見た目がエレガントなスピネットの方が良いかな^^