ギターの種類と難易度2015-12-04
サブメニューに「ギター&アナログ楽器」と題しておきながら、全くギターの事を書いて無かったことに気付いて、今更ながら書き始めることにしました。最初は総論ということで、ギターの種類によって難しさはどう変わるか?というテーマで書きたいと思います。
指の痛さとの闘い
僕がギターを始めた(というか最初に買った)のはもう20年ほど前になりますが、何度も挫折したので実質ギター歴は延べ5年ほどです^^;
元々手指が繊細にできているのか、左手の指がとても痛くて弦を押さえられなかったのです。最初に買ったのは、ヤマハのナイロン弦のミニエレアコですが、それでも指が痛くてコードを習得する事すら出来ませんでした。
その後10年くらいのブランクを経て、ウクレレだったら何とかなるだろうと思い立ち、プレイテックのソプラノウクレレを買って初めてみました。最初はそれでも少し痛かったけど、流石に全てソリッドナイロン弦でテンションも緩いので、半年くらいで何とか簡単なコードを抑えられるようになりました。
で次は実家にあったクラシックギターに挑戦してみたわけですが、やっぱりハイテンションだし弦高は高いしで、未だ手に負えるシロモノじゃ無さそう。そこで、楽器店で弦長500mm前後のミニクラシックギターを試したのですが、音があまりにもヘロヘロで、こりゃ楽器としては使えないなと思って断念。
エレキ登場
そこで次に候補に挙がったのがエレキギターです。勿論ナイロン弦ではなく、恐ろしい金属弦が付いていますが、クラシックギターというかアコースティックギター全般と比べてテンションが緩く、弦高もかなり低い事を知ったからです。
そこでエレキギターを手に入れ、少しずつ弾いてみたところ、やっぱり指が痛い(-_-;) 特に極細の高音減が指に食い込んで切れそうです。おまけに僕の手指から何か劇酸の液が出てるようで、ソリッド弦を一瞬にして錆びさせてしまいます。だから細いワイヤーがザラザラになってまるで糸鋸みたいです。
「そうか、ギターって最初は指が切れまくって血だらけになって練習するものなのか!」と思いましたが、その話を楽器店員にすると「指が切れるという話は聞いたことないですね(;´∀`)」とのこと。まあ僕も実際切れたことはないですけど(^^; スライドさせると本当に切れちゃいそうで、思い切って演奏できないのです。
対策としてバイク用の皮手袋をして弾いたり、ダイソーでゴムの指サックを買ってはめたりしたのですが、そんなごわごわの指で演奏できるはずもありません。実は後で知った事ですが、指に瞬間接着剤を塗ってカチカチに固めて弾くと痛くないそうです(;’∀’)
ただ僕の場合は、痛みが耐えられなくなったら練習をやめて、何週間か経ってからまた練習再開。ということを繰り返しているうちに、徐々に慣れてきました。これは指の皮が厚くなったのかもしれませんが、無駄に力を入れて弦を押さえなくなったのも大きい気がします。
というのも、運指やコードのポジションに不慣れだと、ついつい力を入れて弦を押さえてしまうんですよね。また当然ながら、同じポジションを何度も練習していると、同じ指の同じ場所が痛くなってしまいます。だから今でも、難しめのポジションを練習するときはやはり指が痛くなります(;’∀’)
ギターの種類と弦のテンション
というわけで、僕の苦労話をダラダラと書いてしまいましたが、ここからが本題です^^;
指の痛さの主原因とおぼしき弦の張力(テンション)は、ギターの種類によってどの程度違うのでしょうか?次の表は最もポピュラーなダダリオの製品で、多分最も売れているセット弦(ゲージ)のテンションを公式サイトから写したものです。
ギターの種類 | 製品名 | 各弦のテンション(kgf) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
E-Hi | B | G | D | A | E-Low | Total | ||
金属弦アコギ | EJ16 Phosphor Bronze, Light, 12-53 | 10.60 | 10.57 | 13.63 | 13.58 | 13.12 | 11.32 | 72.82 |
エレキギター | EXL110 Nickel Wound, Regular Light, 10-46 | 7.36 | 6.98 | 7.52 | 8.34 | 8.64 | 7.67 | 46.51 |
ガットギター | J45 Pro-Arté Nylon, Normal Tension | 7.36 | 5.46 | 5.39 | 7.08 | 7.12 | 6.43 | 38.84 |
どうですか?所謂「アコギ」(フォークギター)の金属弦だけ突出してハイテンションですよね。僕もエレキは比較的ローテンションだということは知っていましたが、同じアコギでも金属弦とナイロン弦でこんなに違うとは思いませんでした。これで、エレキギターやクラッシクギターでヒーヒー言ってる者が、金属弦アコギをやるなんて自殺行為だということが判るでしょう^^;
ダメ押しに上の表をグラフにしてみました⇩
アコギ金属弦の中でも、G弦とD弦はナイロン弦の2倍近い張力なんですね。音の高さ(固有振動数)が同じなら、張力は弦の重さ(長さ当たりの質量)に比例し、弦長の2乗とゲージに比例します。すると、アコギ金属弦はそれだけ重いって事ですね。
尚、エレキやアコギのロングスケール(と言っても一般的な弦長)は、650mmでクラシックギターの弦長と同じです。上の数値は皆ロングスケールで合わせてあると思うので、それより短いミディアムスケール(620~630mm台)であればもう少しテンションは緩くなります。それでも630/650くらいの比率になるだけなので、アコギの金属弦のダントツ1位は揺るぎないでしょう。
ギターの種類と総合的な弾きやすさ
テンション以外にもボディーの大きさやネックの太さなどが、ギターの弾きやすさに関わってきます。それらを加味して、先に結論をまとめると次のような感じになると思います。
ギターの種類 | 弦の張力 | 弦の感触 | 弦の錆びやすさ | 弦高 | ギターのサイズと構えやすさ | ギターの重さ |
---|---|---|---|---|---|---|
エレキギター | 緩い | シャープ。但し巻線は割とスムーズ | よくさびる。特に高音弦が酷い。 | 低い | 小さく体にフィットして構えやすい | 重い |
ガットギター | やや強い | 良く伸びて柔らか。高音弦は超スムーズ。巻線はエレキの巻線よりややザラザラ。 | 高音弦は全く錆びない。巻弦は少し錆びる。 | 高い | 大き目でやや構えにくい。ネックが太い | 普通 |
金属弦アコギ | 強い | シャープ。巻線はザラザラ。高音弦はエレキよりやや太いので、指への攻撃性は若干低いか? | 錆びるけどエレキよりはマシか? | 低い | ドレッドノートは巨大。小ぶりのものはクラシックより構えやすい。 | やや重い |
上の3種を組み合わせ対決させながら、詳細を下記しました。
エレキVS金属弦アコギ
弦の素材はエレキがニッケル系でアコギがブロンズ系という違いはありますが、比重や弾力性は似たようなものでしょう。よって一般にゲージが細いエレキの方が、スケールが同じならテンションは低いというわけです。実際、ビギナーでもはっきり判るほとテンション感が違うと思います。達人の演奏を見ても、エレキなら軽々とチョーキングしていますが、アコギはそこまでしませんよね。
構えやすさも両極端で、アコギは音響を重視した巨大な箱、エレキは奏性を重視した薄くて体にフィットするボディー。だから、テンションの緩さを含めたトータルの弾きやすさはエレキの圧勝です。エレキでは速弾きギターヒーローみたいなのが沢山いますが、アコギで同じことをするのは達人でも不可能でしょう。逆に言えば、同じフレーズを弾くならエレキのほうが簡単ということでしょう。
これは、自分だけで音を出さないといけないか、電気の力で増幅できるかの違いですね。逆に言えば、エレキはギター本体以外にアンプやエフェクタといった機材もそろえる必要があり、その意味では初心者には少々ハードルが高いかもしれません。しかし、そのおかげでエレキは様々な音を出すことができ、アコギより幅広い音楽ジャンルに対応できるという利点があります。
金属弦アコギVSクラシック
比重はアコギ弦(ブロンズ系)の方が当然重いですが直径は遥かに細いので、長さ当たりの重量はあまり変わらない気がします。すると弦長が同じだからテンションも同程度ということになりますが、クラシックの方が柔らかく感じるのはナイロン(巻線も芯はナイロン)の方が良く伸びるからだと思います。さらにナイロン弦(高音のソリッド弦)の方が太いので、指に対してはより優しくなります。
上述の通り、弦のテンションは金属弦アコギが2倍近く強く、おまけに素材の感触としてナイロンよりシャープ。その意味では、指への攻撃力は圧倒的に金属弦アコギの方が高いわけです^^;サビ易さに関してはエレキのソリッド弦より若干マシな気がしますが、全くサビないナイロン弦とは勝負になりませんね。
ただ、クラシックギターは弦高が高いので、その分沢山引っ張ってフレットに届かせる必要があり、その意味では指に厳しくなります。ローポジションではあまり感じませんが、ミドル→ハイポジションと行くにつれ厳しくなります。また、クラシックはネックが太いので、バレーコードなどは押さえ辛く、それが指への負担と感じる事もあるでしょう。
ボディーはアコギの方が一般に大きく重いです。特にドレッドノートは幅も厚みもあるので、体が大きくないとギターに抱き着くような姿勢になってしまいます。ただ小ぶりのアコギ(「フォークサイズ」やooo「トリプル・オー」タイプ)なら右腕の上がり具合も大分楽になりますし、弦長も短いので左手指への負担も減ります。
ということは、小ぶりなアコギVSクラシックでいうと、指の負担でクラシックやや有利、コードの押さえやすさで小ぶりアコギ有利ということで、総合では良い勝負かな。
エレキVSクラシック
この対決はテンションが近いので、左指への負担という意味では良い勝負です。弦高の低さでエレキ、素材の柔らかさでクラシック有利と言ったところ。エレキのソリッド弦は使って錆びると攻撃力が更に増しますけどね。
ただこれに、ネックの太さや楽器の構えやすさを加味すると、圧倒的にエレキの方が弾きやすいです。実際、同じフレーズを両方で弾いたら、エレキの方が断然簡単ですもん(^▽^)/ だから僕は、ボサノバなどクラシックで演奏すべき曲を練習していて難しいフレーズで躓いたら、エレキで弾いてみたりします。
ギターの種類と音楽
以上、弾きやすさのみにフォーカスして書いてきましたが、それとその人の音楽の嗜好とは勿論別問題です。ロックバンドをやりたいのに指に優しいという理由でクラシックギターを選ぶ人は居ないでしょう。
ただ、そのクラシック(ガット)ギターにしても、クラシック音楽にしか使えないかというとそんなことはなく、ボサノバをはじめ色んなポップスのジャンルに使われています。またエレキギターだってHR/HM系のディストーションサウンド一辺倒ではなく、セッティングによってはJazzyなクリーミートーンも出せます。
実は時々、ストリートライブやバンドコンテストなんかをチェックするんですが、なんかアコギの弾き語りばかりな気がするのです。エレキをソロで弾き語りとか、クラシックギターとフルートのユニットとかあっても良いんじゃないかと。
もし「エレキギターやガットギターは特殊なので、もしそっち方面に特別こだわりがなければアコギ」という選択をしてそのまま来てるとしたらとても残念に思います。だからアーティストには、既成概念に縛られずに自由でユニークなスタイルを追及してほしいと思います。