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MIDIキーボードレビュー2016(標準鍵盤)2016-11-28

標準鍵盤のMIDIキーボードのレビューです。例によって殆どの製品では音を出しておらず、専らキーの感触だけのレビューです。

シンセ鍵盤の構造

シンセ鍵盤 構造

製品レビューの前に所謂シンセ鍵盤の構造について少し触れたいと思います。上の写真は私のシンセ(MR-61)を分解してキーボードだけ取り出したところです。このようにキーの一番奥にコイルバネが付いていて、支点はそこから10mmほど手前(写真奥)です。キーを押すとこのバネが伸び、離すと戻るという単純な構造です。

幾つかのサイトにRolandやその他の鍵盤の内部の写真がありましたが、これと瓜2つだったので殆どの鍵盤はこんな構造だと思います。他に板バネを使ったタイプもあり、こちらの方が軽快でクリック感があるので僕は好きです。ただ板バネタイプの鍵盤は現在では殆ど使われていないと思います。

それとこれは標準鍵盤の話しであって、ミニ鍵盤だとどういう構造になっているのか私には判りません。感触から言って、バネの代わりにゴムを使ってるような気もするんですが(^_^;)

セミ・ウェイテッド

セミ・ウェイテッド鍵盤

「セミ・ウェイテッド鍵盤」を謳っているキーボードがありますが、これの仕組みは実はキーの裏におもりが貼ってあるだけです。ピアノ鍵盤のように内部のハンマー的なものがスイングして質量感を出しているわけではありません。

ただ、このおもりによってキーの先端部が補強されるのでしっかりしますし、勿論質量感は増すので重厚は感じになります。また、キーが戻った時に反動で震えるのか、演奏するとブリっとした感触があります。

製品レビュー(タッチ比較)

※写真をクリックするとサウンドハウスの商品ページに行きます。

Alesis Q49

Alesis Q49

サウンドハウスでは標準鍵盤の中で最安値。機能的にはミニマムながら、スライダーとか要らないという人には必要十分で、ボディーもコンパクトなのは良いです。

キータッチはかなり軽いです。デモ機は白鍵が変色するほど弾き込まれた個体でしたが、それを考慮しても軽い部類だと思います。と言っても、シンセ鍵盤が重い場合はバネ的な反力が強いだけなので、タッチが軽い事自体は問題ありません。

問題なのはキーの肉厚が薄すぎてペラペラなことです。工学的に言うと剛性が低く、特にストロークの床ではキーがしなってる感じがします。また当然キーの質量が小さいため、手応えが悪い意味で軽々しいです。後述しますが、これは低価格帯のMIDIキーボード共通の欠点ですね。

M-Audio Keystation 49

M-Audio Keystation 49

上のQ49とほぼ同じ価格とサイズですが、こちらは小さなトランスポーズボタンと十字キーが付いてる分若干高機能のようです。

キータッチはQ49よりやや反発力が強く、若干スポンジ感というかバネっぽさが増します。そしてこれも一番の問題はキー自体がペラペラでグニョグニョしていることです。もしかしてQ49と同じキーを使ってるのかと思って裏を見たらリブの形状が違いました(^_^;)

あと、展示品のキーが黄色く変色しているので、最初は多くの人が触ったからだと思いましたが、どの店でも一様に黄色いので、経年劣化で変色しやすい素材なのかも知れません。もしかして最初からアイボリー系の色なのかとも思いましたが、Webサイトの写真は真っ白だからそれは多分無いかなと。

IK MULTIMEDIA iRig Keys 37 PRO

標準鍵盤としては珍しく37鍵でベゼルもミニマムなので、ボディーが圧倒的に軽量・コンパクト。ミニ鍵盤のように気軽に机の上に出したり引っ込めたり出来そうです。

機能的にはパタメータ設定用ノブが同じく1個だけですが、こちらはシーンボタンで4つのシーンを切り替えられます。ただ標準鍵盤なのに、USB端子が標準タイプではなくミニタイプというのは強度的に大丈夫なのでしょうか?

さて、以前はショーケースの中にある個体を出してもらって膝の上で弾いてみただけでしたが、別の店でオープンな棚の上でそのまま触れるものがあったのでレビューを修正します。

先ずキータッチですが、反発力は弱めでスムーズに動きます。軽い中にも、ストロークの途中に僅かにブリっとした抵抗感があり、これが一種のクリック感になっています。キーはやはり薄くて軽い方ですが、Q49やKeystation49ほどペラペラには感じません。これはキーの肉厚の問題だけでなく、ストロークの奥の方で反発力が強まらない為、しなりが少ないのかも知れません。

尚、ショーケースの個体ではキーの動作音はカタカタと煩かったのですが、オープンラックの個体ではあまり感じませんでした。その辺は製造過程でのバラツキなのか、それとも弾き込むほど動作音が小さくなるのかは判りません。

実は先日、この機種がセール中で税込み9000円弱だったので買おうかと悩みましたが、結局ネックになったのは鍵盤数でした。37鍵(3オクターブ)だとピアノは勿論、エレピや電気オルガンのフレーズでも足りなくなることが多いのです。

正確に言えば、C2からC5の音域だと高域は十分だけど低音が足りなくなり、オクターブシフトでC1からC4にすると逆に低域は十分だけど高域が足りなくなってしまいます。CからCというキー配列はどうも中途半端で、これがAからAとかFからFとかなら3オクターブを無駄なく使えたのにと思います。

M-AUDIO Oxygen49

ここからはいきなりノブやスライダーやパットまで山ほど付いてきます。だからと言って値段が跳ね上がるわけではないので、こういう機能が欲しい人にはお買い得感はあるでしょう。

パッドの素材は硬い感触ですが、珍しく音を出せる状態にあったので叩いてみると反応は重くはなかったです。デモ機の弾き込み度にもよりますが、僕が持ってるKorg nano padよりも軽く音が出るかも。

さて肝心の鍵盤ですが、Keystation49より軽めの反力でスポンジっぽさがなく好印象です。ただしこれもキーの肉厚が薄っぺらくてグニャグニャしてるのが難点です。ただ、キーの素材(プラスチックの種類)が違うのか、こちらの方が若干しっとりした感触というか、Keystation49のようなツルツル・カチャカチャ感は薄らいでる気がします。またMIDI鍵盤にしては珍しく、黒鍵がサテン仕上げでサラッとしてるのは美点です。

NOVATION Launchkey 49

※結局これを買ったので詳しくはこちらのレビューを御覧ください。

鍵盤のタッチはOxygen49と同様に軽いのですが、ストロークの途中で微かにグニョっとした感触があり、これが良い意味でのクリック感になっています。ただキー自体はやはり薄っぺらく、Oxygen49と同等か僅かにマシか?といったところです。

ボディーはOxygenより両端がスパッとカットされ、若干ながらコンパクトです。底面からキーの上面までの高さ(厚み)もOxygenより薄く、スリム&スマートな印象です。

ROLAND A-49

大御所ローランドらしくいきなり値段が上がります。しかも以前は15,000台だったのに、何故か最近どの店でも2万円近い値段になってしまいました。

ただ流石に鍵盤は上述のモデルのように薄っぺらくありません。というかこれが普通のシンセ鍵盤です。セミ・ウェイテッドでは有りませんが、これくらいの肉厚は欲しいところです。

キーの反発力としては新品だと若干強めですが、ある程度ヘタった個体だと丁度いい感じになります。クリック感は有りませんが、Keystation49のようなスポンジが詰まったような硬さもありません。

ボディーはベゼルがミニマムだし、更にRolandはキー自体が若干短い事も相まって、特に奥行きが短いのは素晴らしいです。またUSB端子が裏から見て少し奥まった位置にあるので、USBケーブルを挿した状態での実質的な奥行きも短くなります。

機能的にはSuperNATURALスイッチやD-BEAMがローランド独自のものですが、個人的には何方も要りませんね。また、アサイナブルノブが2つ付いてるのは良いのですが、なんでこうつまみにくい形状なのでしょう?

そしてこの製品で一番不可解なのは、USBデバイスクラスに準拠していないところです。つまり独自のドライバが必須なのでLinuxでは使えません(誰かがこれ用のドライバを作ってくれてたら別ですが)。まあ通常はWindowsで使うと思いますが、OSのバージョンが新しくなると直ぐに対応しないんじゃないかとか、独自ドライバのせいでPCの挙動が不安定になるんじゃないかとか、あれこれ心配するのが面倒なんですよね。

KORG TRITON taktile-49

KORG TRITON taktile-49

これは音源付きだから、純粋なMIDIキーボードというより、外部音源コントロールを重視したシンセと言った趣。

ところが売りであるTritonの音というのは、実はオリジナル音源からダウングレードしたものらしく、LINE OUTもステレオミニ端子のみという事からしてあまり音質を重視したモデルでは無さそうです。

となると、実質普通のMIDIキーボードとあまり変わらないわけで、内容に対して割高感は否めません。先ず鍵盤は廉価モデルと大差ないペラペラキーで、これの何処が「弾き心地抜群のセミ・ウェイテッド鍵盤」なのか首を傾げたくなります。

KORG自慢のXYパッドやドラムパッドも、自照式という事以外は基本的にnanoPadと同じだろうし、見た目も地味すぎて同価格帯の海外ブランド製品より見劣りします。クールでコストパが高いKORG製品としては珍しく、ちょっと残念な製品と言わざるを得ません。

ROLAND A-500PRO

A49の上位モデルでスライダーやノブ、スイッチやパッドらしきものが沢山ついています。鍵盤の触感はA49と殆ど同じですが、こちらは確かセミ・ウェイテッドで、そのせいか若干ブリッとした感触と質量感が増します。

ただ、品質はRolandらしく確かなんでしょうが、見た目もRolandらしく地味だしコストパ的にも海外ブランドに見劣りします。個人的にはMIDIキーボードに3万円もかけたいとは思いませんが、もしかけるなら数千円追加してCode49に行くでしょうね。まだ触ってないのでタッチ次第ですが。

AKAI ADVANCE 49

此処から先は、もう私の購入対象を完全に逸脱した価格帯ですが、参考までに触った感想だけ書いておきます。

先ず鍵盤ですが、流石に中身が詰まった高級感はありますが、何分にも重すぎ(反力が強すぎ)です。パットもノブもゴツくて重いと言うか硬い。Akaiの製品てミニ鍵盤でもパットのみでも皆重いのは、重くしたら高級だとでも思ってるんでしょうか?

M-AUDIO CTRL49

これもMIDIキーボードしかもM-Audioの製品に有るまじき高価さですが、同じ鍵盤を下位のCodeシリースやもしかしたらKeystation61でも使っていると思われるので参考までに書きます。

このボックス構造の「セミ・ウェイテッド」鍵盤はびっくりするほど素晴らしいわけではありませんが、Keystation49の鍵盤と比べたら格段に良いです。

先ずボックス構造=リブが高いだけあって剛性は高くグニャグニャしないし、質量感も「ウェイテッド」って程ではないにせよ必要十分にあります。この個体もショーケースの中にあってあまり弾かれていないせいか、キーの動きに若干の渋さはありましたが、バネ的な重さ(反発力)が控えめなのが好印象です。

もしこの鍵盤でスライダー等無くて49鍵のコンパクトがモデルがあって、値段が12,000円位なら僕は欲しいです。Keystation61ならそれに近いですが、やっぱり61鍵では出し入れしながら使うには大きすぎるんですよね。

NEKTAR PANORAMA P4

新生Nektarのフラッグシップモデル。操作パネルは見ての通りゴージャスそのものですが、これだけ広大だとどうやって設置するか悩みます。少なくともPCのキーボードは使わずに、このMidiキーボードとマウスだけでDAWをコントロールする前提ですかね。

鍵盤はCTRL49と同じボックスタイプ。キーの反力は然程強くないけど変な軽々しさは無く、中々しっとりしたタッチです。まあ値段を考えると、キーの質量感やクリック感がもう少しあっても良いかなとは思いますが。

NEKTAR IMPACT GX49

以前、日本でも売って欲しいと書いたNEKTARのエントリーモデルで、少し前から店頭に並ぶようになりました。鍵盤はPANORAMAのものとは別物で、タッチも材質も違っていました。

先ずタッチですが、新しい個体だからかも知れませんが、やや反発力が強めに感じました。ラバーカップよりもバネで反発力を出しているようで、ストロークの奥で反発力が急増する事はありません。この価格帯の鍵盤としてはソリッドでシッカリしてる方だと思います。

鍵盤の動作音としては、私のLounchkeyのようにキーが左右に動いてガチャガチャと音を立てることは有りませんが、キーの押し始めに若干カチャっとした感触があります。キー上面の肉厚が薄いのでしょうか?

黒鍵はこのクラスとしては珍しくザラッとして滑りにくい表面処理になっています。ただ断面が長方形に近い形状で(通常は台形)キー上面の幅が広く、黒鍵と黒鍵の間の白鍵を押す時に引っかかってしまいそうです。

IMPACTシリーズは使っているDAWやソフトシンセを自動認識して、例えば矢印ボタンで音色選択を送り/戻しが自動的に出来るそうです。この機能は私が何時もほしいと思っているもので、もし所有するソフトシンセで本当に機能するならかなり便利でしょうね。

ノブ(多分ロータリーエンコーダ)は一つ付いているだけですが、モジュレーションホイールも任意のMIDI CCを割り当てられるようです。音源のパラメータをあれこれとイジらない人なら、こういうシンプルなものの方が使いやすいでしょう。仮にノブやスライダーが沢山付いていて音色毎にパラメータをアサインしても、直ぐに忘れてしまって結局マウスでGUIを操作してたなんてことはよくありますから(^_^;)

また小さいながらもトランスポートボタンが付いてるのは結構重要なポイントです。薄くて小さいミニ鍵盤のキーボードならともかく、標準鍵盤のものは奥行きも厚みもあるので、その奥にPCのキーボードを置いてDAWの再生・停止・録音操作をするのって意外とやりにくいんですよね。

値段は税込み1.3万円台と、シンプルな割にはやや高感がありますが、タッチも作りも1万円以下のものよりは上質です。しかも49鍵の標準鍵盤としては最もコンパクトな部類と言うところがポイント。私のように普段はMIDIキーボードをしまってあって、使う時だけ机の上に置くスタイルなら軽量・コンパクトな事は重要です。

NEKTAR IMPACT LX49+

上のGX49にノブやスライダー、パッドなどが付いた機種です。GXと同様に61鍵タイプもあります。ただこの写真、サウンドハウスのLX49から引用したものですが、61鍵あるのでGX61のものですね(^_^;)

先ずキーボードはGXのものと同じだったので、上のレビューを参照して下さい。

その他の部分では先ずパッドですが、タッチはかなり固いです。パッドには通常メカニカルなストロークはなく、押した時にシリコン系の素材が凹むだけですが、その素材が固いのでストローク感は殆どありません。なので極端に言えば、スマフォやタブレットをタップしてる感覚。しかし実は音源につないで音を出せば、ストロークは無くともヒットする強さだけで自在に音の強弱を付けられるのでしょうか?

もっとも機能的には優秀で、各パッドには好きなMIDIノートをアサインできます。しかも、Korg Nano Padのように専用ソフトでノート#を文字入力するのではなく、鍵盤のキーでアサインできるらしく、それなら非常に便利ですね。ドラムセット音色で好きなドラムを選んで好きな場所に配置すれば、演奏がとてもやりやすくなると思います。

その他は、スライダーの形状がフラットなのとストロークが短め且つ動きは渋めなので若干操作し辛いかな。もっとも機能的には矢張り優秀で、DAWのみならずソフト音源も自動認識して、勝手に適切なパタメータ(MIDI CC)をノブやスライダーにアサインしてくれるようです(Cut offとかDecayなどのシンセのパラメータまで最初から印字されている)。

ただ、49鍵モデルで税込み2.2万円という価格はGX49以上に割高感がありますね。機能的な優秀さを考慮しても、8個のノブとスライダーとパッド代が価格差の9千円と考えるとちと高いかな。勿論、同等の機能で遥かに高価な製品も沢山あるので、高機能製品の中では比較的安いのかも知れませんが。

Native Instruments KOMPLETE KONTROL S49

これだけ高価なのに楽器店に展示してある(しかも音が出せる)確率が高いこの逸品。もっともこれは、バンドルされた高価なNI製ソフトシンセも含めた値段なんでしょうけど。

当然ながら同社のソフトとの連携はバッチリで、ノブを動かすと高級感溢れるパネルの各パラメータの数値か変わります。ただ文字が小さすぎて見やすいかどうかは別問題です。

さてFatar製セミ・ウェイテッド鍵盤ですが、先ずキーの触感というか材質感からして他のモデルとは違いますね。裏の重りの質量感と相まって、非常にしっとりと高級な感じで動きます。ただアクション(反力変化)としては普通というか、良くも悪くもコイルバネっぽいです。

あとこれは欠点といえるかどうか判りませんが、流石に総重量はかなり重いです。持ち上げた感じではOxygenやLaunchkeyの1.5倍はあるような気がします。

まとめ

というわけで、1万円前後のものだとアクション以前にキーの肉厚が薄くてペラペラなのが問題です。ほんの少し肉厚を増やせば格段にしっかりする一方、コストは殆ど変わらないと思いますけどね。 総重量だってセミ・ウェイテッドでない限り大差ない筈なのに、何故そんなに材料をケチるんでしょう?

残念ながらMIDIキーボードは、一般的な音源付きシンセの鍵盤からすると、かなりクオリティが落ちると言わざるを得ません。例えばヤマハのファミリー向けキーボードなんて鍵盤にクリック感があって、同価格帯のMIDIキーボードより寧ろ良いくらいです。市場規模が違うとは言え、音源もスピーカーも付いたキーボードの方が実質安いとはこれ如何に?

そう言えば何故ヤマハはMIDIキーボードを出さないんでしょうね?このファミリー・キーボードと同じ鍵盤で49鍵のコンパクトなMIDIキーボードが1万円位なら多分買います(´∀`)。これと同じ鍵盤(ピアノというよりシンセ/オルガンタッチ)のMIDIキーボードが1.5万円でもかなり売れると思います。

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