日産リーフ試乗レポート2011-05-16
遂に日産リーフに試乗しました。年始に京都で開かれた試乗イベントでは抽選漏れになるほどの虎の子のリーフですが、ラッキーにも近所のディーラーにあったのです。しかもここは、勝手知ったるワインディングの直ぐ近くという絶好のロケーション。では早速試乗インプレ行きます!
サウンド
先ず、走り出しが無音なのはi-MiEVと同じ。例の近接警告音はOFFだったのか聞こえませんでした。アクセルを踏み込むと、キーンというモーター音(インバーター音?)が控えめに、しかしはっきりと聞こえます。この新幹線のようなサウンドは旅行のときのウキウキ感と、未来の乗り物に乗っているという興奮を与えてくれます。
勿論、内燃機関車より遥かに静かなのですが、「EVは無音」と枕詞のように言われる事には違和感を覚えます。もしこの音が聞こえないのであれば、周囲がかなり煩いか、その人が難聴になっているからでしょう(^^;
動力性能
音の話が長くなりましたが、動力性能は文句無く素晴らしいです。山中の長い上り坂でも、一切もたつかずグングン加速します。 しかも高負荷であっても、エンジンの雄叫びが無いので、ジェット機(にしてはかなり騒音が小さい)がふわっと飛び立つような心地よさです。
パワーモードは通常のDとEcoの2つだけ。Ecoにすると明らかにパワーダウンするのでやはりDモードで乗りたいですね。またEcoモードは回生ブレーキが多めに掛かるとの事で、アクセルを戻した瞬間は確かにそんな感じはしますが、アクセルOFFで坂を下ってる最中に切り替えても減速感は変わりませんでした。回生を強く効かせるBモードのようなものがあっても良いと思います。
アクセルレスポンスはシャープすぎずダルすぎず極めて適切。内燃機関ならこの辺りの味付けは苦労するところですが、EVの場合は完全にプログラミングの世界。ATのズルズル感、CVTのすべり感、MTのギクシャク感が一切ありません。レスポンスはマイルドなのにダイレクト感がある・・・EVだけが味わえる世界でしょう。
ハンドリング/乗り心地
ハンドリングも負けず劣らず素晴らしいです。通常のFFより慣性モーメントが明らかに小さく、大抵のFRよりも軽快な回頭性です。さりとてシャープを演出したような不自然さはありません。ステアリング操作に対して完全リニアに向きが変わる感じです。
顕著なのはS字コーナーの切り替えしの時に感じる収まりの良さ。これに乗ると、FFもFRもエンジンの慣性力で揺さぶれててるんだなと判ります。巨大な重量物であるエンジンをゴムブッシュでマウントするという、内燃機関車の宿命から開放されたEVは生まれながらのハンドリングマシンと言えるでしょう。
乗り心地も非常に良好。ギャップの吸収性が良いのに、フワフワせず引き締まった感じです。それほど高級なサスを使ってるとも思えないので、重さと重量配分の良さの賜物ではないでしょうか?
唯一気になったのは、ブレーキ力が弱いこと。ティーダやスパシオより明らかに弱く、旧型MPVと同じくらいの減速感でしょうか。 プりウスのようなカックンブレーキではないので「回生/油圧協調ブレーキではないのですか?」と同乗した営業マンに聞きましたが、良く判らない様子。モードセレクトでも良いので、アクセルOFFでもっと強い回生ブレーキを効かせるようにして欲しいです。
インパネなど
メーターパネルの中にはEVらしく巨大な電池残量計が光り、反対側にはこれも巨大なバッテリー温度計と思しきインジケーターがあります。そんなに激しく温度が上下するんでしょうか?ハンドルの上、ウインドの下あたりにシンプルなデジタルスピードメーターがあり、視認性の点で好ましいと思いました。
マウスのようだと言われるセレクトレバーはあまり使い勝手が良いとは思いませんでした。走行中に操作するのは、走行モードDとEcoの切り替えくらいですが、 これをやるにはレバーを一旦右に押して下にという逆L字型の動きをする必要があります。レバーから手を離すと必ず元の位置に戻るので、レバーの位置から走行モードを知る事は出来ません。普通のATのようにセレクターの上下移動にするか、ODのようなON/OFFスイッチの方が良いような気がします。
パッケージングなど
ボンネットフードを開けると、ぱっと見エンジン車だと言われても判らないようなルックスです。EVのくせに12Vの鉛バッテリーが鎮座し、シリンダーヘッドのように見えるのはインバーターだそうです。そしてモーターは一番下にあって見えません。普通の車から乗り換えても違和感の無いエンジン(?)ルームを目指したのでしょうか?(^^;
鉛バッテリーはi-MiEVにも付いていますが、システム起動と電装品の一部に使うようです。確かに、メインバッテリーをDC-DCコンバーターで降圧して電装品に使うと、メインバッテリーが切れたりトラぶったりしたときはハザードランプすら点かないという状況になります。よって、電装系は別系統のバッテリにするのは良いですが、何も鉛バッテリーにしなくてもね。
「EVなのに何故FFなのか?」と予てからの疑問を営業マンにぶつけてみると、「スペース効率」「ハンドリングになじみがある」「クラッシャブルゾーンが確保できる」など割とそれらしい答えが返ってきましたが、実はどれもあまり理由になってません。 僕は独自プラットフォームとはいえ、既存のFF用コンポーネントを出来るだけ使いたかったのではないかと推測しています。
また、リアハッチを開けると、リアシートの直ぐ後ろに巨大な防波堤のようなものが横たわっています。これによって、 ラゲッジスペースは圧縮され、リアシートはティーダのように後ろに下げる事が出来ません。
これは何かと尋ねたら、側突時にバッテリーを守るメンバー(中は空洞)ではないかと営業マン。 ところが後でカタログを見たら、この中に充電器が入ってるようです。しかも、ボディーのメンバーではない様子。充電ポートは鼻先なのに、何故こんな後ろに充電器をもってくるのか意味不明です。
i-MiEVとの比較
i-MiEV単独で乗ると、とても重厚で安定していましたが、Leafに乗ってしまうとi-MiEVはやはり軽だったんだなと感じます。確かにi-MiEVも低重心でフロア部分の剛性は高そうですが、その割りにボディーの上モノは普通の軽なのでチグハグ感があるというか。サスペンションの容量や、遮音性から受ける印象もあるかもしれません。
あと、Leafの走行音の話をしましたが、i-MiEVはリアモーターのせいかもっと篭ってるというか、あまり印象に残らない音でした。
まとめ
EVの試乗レポートというと、CO2を出さないとか音が静かとかどの位走れるかとか、そういうことばかり取り上げるのはかなり偏ってると思います。リーフに乗ると、エコとかエコノミーはEVにとってマイナーな利点ではないか?とすら思えてきます。EV最大の利点は上質な走りにあると。
正直、このリーフの作りは、特別マスの集中化に注力したとも思えないし、ボディー構造が洗練されてるようにも見えません。にもかかわらず、これだけ上質な走りを実現できたという事は、EVの走りのポテンシャルがいかに高いかを示しています。 スムーズでリニアで強力なパワートレーン、上質な乗り心地と自在なハンドリング。これらはまさに、世界のプレミアムカーが目指してきた特性です。それをEVは量産後まもなく達成してしまったのです。
だから、走りにこだわる車好きにこそ、リーフに乗って欲しいし、売り手の訴求の仕方もエコ一辺倒から脱却すべきだと思います。
【10/1追記】
再び試乗したのでレポートを追記します。試乗コースとほぼ同じながら、今回は偶々道がすいていて、前回より多少ハイスピードで走れました。
先ず、空いた道でアクセルを多めに開けると、すばらしく気持ちよい加速。楽々周囲の流れをリードできます。しかも音が静かなので正にワープ感覚です。
乗り心地はフラットな路面ではフラット(ロールが少ない)ですが、前回より速めにギャップを越えると多少ドタバタしました。
今回は電費計をチェックしてみたのですが、試乗終了時に5.8km/kWhとなっていました。1kWhで5.8km走れると言う意味ですね。リーフのバッテリーは24kWhなので140km弱走れるという事です。
勿論、カタログデータの200kmには遠く及びませんが、街中とワインディングをECOモード無しで気持ちよいペースで走ってこの数値なら悪くないと思います。