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宗教となって躍進したアップルと多角化で低迷するソニー2008-03-14

先のエントリーで少しMacの話が出ましたが、最近のAppleは絶好調ですね。Fortune誌の全米で最も賞賛される企業に選ばれたりしています。

紹介されているiphoneは、日本では規制の壁に阻まれて電話機能が省かれ、ipod touchとかいう苦し紛れの名前と機能で発売されました。別途契約すればネット閲覧はできるようですが、そんな音楽プレーヤー付きPDA(日本では不人気)みたいな物に誰が4万円も出して買うのか?と思いきや、結構売れてるみたいです。何故?・・・それは宗教だから!

宗教ほど美味しいビジネスはない

もし同じ機能、同じようなデザインの製品を今のソニーが出してもきっと売れないでしょう。大体そうした用途ならPSPの方がゲームも出来る分お得というもの。

あえて要因を探せば、ipodからグレードアップした、タッチパネルでネットもできるモデルと解釈すれば、それほど高いと感じないのかも知れません。しかし、携帯電話が異様に高機能化した日本で、通信機能が標準装備でないハードウェアに4万も投資する合理的理由がみあたりません。

やはりアップル製品はリンゴの紋所があればこそ人々はひれ伏すのでしょう。製品そのものではなく、その裏にある権威が重要なのです。「かの」畏れ多いApple様の紋所が目に入らぬかと、首から下げて持ち歩くことに意義があると:-)

特にデジタル製品の場合は、パーツや製造行程がかなりコモディティー化ているので、機能や価格で差別化することは非常に難しい。だからこそブランド化して価格に下駄を履かせると、たちまち高収益になると言う訳です。

ソニーの苦悩

一方ソニーですが、90年代まではVAIOやAIBOといったヒット商品でブランド力は強かった。当時のアップルは「ソニーのような会社になりたい」と言ってたくらいですし、ソニーブランドでMac互換機を作って欲しいと申し出たが断られた、なんて話もありました。

今世紀に入ると、PS2やPSPがそれなりに注目されるものの、かつてのブランド力は失ってしまった。その原因はやはり「多角化」しすぎて、事業所毎にバラバラのベクトルに動き始めたからだと思います。典型的なのが、「なまじ音楽コンテンツ部門を持っていたからネット配信事業に二の足を踏んだ」という話です。

少し前に「シナジー効果」という言葉が流行りました。手広く事業をやってブランドを浸透させるという発想です。例えば、「三菱」というブランドは家電からクルマ、戦闘機や豪華客船まで作っているという意味で、意外と海外では威力があります。しかし、こうした相乗効果があるのは重厚長大系の産業で、なおかつ発展途上国向きだと思います。

逆に、おしゃれさや遊び心を売りにする嗜好品メーカーは、 俗っぽいものを作っているとブランドイメージを下げてしまいます。 生活臭がするとダメなんです。 同じ日用雑貨でも、franc francのようにおしゃれで何処か非現実的な香りが必要なんだと思います。

その意味で、ソニーはパナソニックや東芝でも作れそうな製品を出してはいけなかった。ゲーム機やロボットや高級ビデオカメラと言った、遊びや道楽高級品の類に特化すべきだったと思います。テレビやDVDレコーダー部門なんて何処かに売却しても良かったのではないでしょうか。

アップルの歴史

何だかソニーばかり貶してしますが、アップルの過去にも触れておきましょう。

ご存知のようにスティーブ・ジョブズはアップルコンピューターの生みの親ですが、彼は人間的にはとても自己中で嫌なやつだというのは有名な話です。結局、ジョブズは社内対立によって一時アップルを去ることになります。

そこで、NeXTなる会社を立ち上げて自称クールなコンピュータを作るのですが、普通の人は名前すら聞いたことがないくらい、泣かず飛ばずの売れ行きで終わっています。

一方、ジョブズが去ったアップルはというと、世の中がWindows95で沸く中、ぱっと見地味で存在感がないPCを作っていました。Pioniaなどに互換機を提供するものの、やはり売れずに程なく姿を消してしまいます。僕がMacを買っていたいの丁度そのころです(^^;

その後、97年くらいにジョブズがアップルに復帰して、iMacなどとにかく見た目が特徴的な製品を出して、次々にヒットさせます。 それまではマニア向けの感じだった秋葉原のMac館が、一気に華やかになった(客層にカップルや家族連れが増えた)のを覚えています。

つまり、アップルはジョブズを必要としていたし、ジョブズもまたアップルを必要としていたということでしょう。

デザインの細かな所まで指示して、決して妥協をしないというジョブズのわがままさも、結果的にプラスに働いているようです。何事も合議制で、リーダーたちの面子を潰さない日本の大企業ではとてもできない事です。

日本型経営の限界

一時はソニーもアップル的な要素がありました。普通のメーカーはまずやらないキワモノ的な構造で、実際良く壊れるという評判でした。しかし、今世紀に入ってからはそんな事が許されない大企業になってしまったのかも知れません。

プレステの生みの親の久多良木氏はちょっとカリスマ性があって、もしかしたら和製ジョブズになれたかもなんて話があります。しかし、彼の立場はあくまでソニーの一社員であり、プレステの成功で大金を手にして新しい会社を立ち上げるなんてことはできません。それどころか、「あの変わり者が好きなことをさせてもらって」と他の社員から妬まれているかもしれません。まあ、最終的には名誉職のようなものに就いて仕事人生を終えるんじゃないでしょうか。

あと、アップルは「何でもパソコン中心で考える」という思想で一貫しているようです。2000年ごろだったか、高機能携帯の市場が拡大する日本で「アップルもモバイルに参入するのか?」と聞かれて、「しない、我々はパソコンの可能性をもっと追求したい」みたいな話をしていました。今のiPodやiPhoneにしても、PCのデータの一部を取り出して持ち歩くという発想で、中核はやはりPCなんだという哲学のようです。

一方、日本の家電メーカーは「PCは古い、これからは携帯だ」とか、「これからはネットはテレビでやる時代だ」なんて言ってましたが、これというヒット商品はないしブランド力はさっぱりです。結局、理由をつけて自社の多様な製品を売りたいだけであり、割り切った製品は出せないのでしょう。

そういう意味では今は、総合〇〇みたいな企業はお互いの足を引っ張るだけで利益は上がらない。これしかやっていないが世界一、みたいな一点突破型の企業が高収益を上げるのでしょう。Googleの時価総額で日立が200個買えると言われるように。

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