EV -- MCタイチ

電気自動車用モータの種類と特徴2009-07-15

電気モータは内燃機関より随分高効率で乗り物向きだという話をしました。しかし、自動車のように負荷と回転数が常に変化する使い方は、電気モータにとって未知の体験で技術要求は高いようです。考えてみたら、電車にしろ洗濯機にしろエアコンにしろ、ある程度決まったパターンでしか運転しませんからね。

モーターの分類

モータの種類は、同じものに対して慣用的に違う呼び名(分類方法や階層が違う)が使われたりするのでかなり混乱します。なので、何度か修正を加えつつまとめてみました。

大分類 一般名称 特徴 用途
直流モータ 永久磁石DCモータ 低コスト、ブラシが磨耗 自動車のワイパーやパワーウインド、普及価格帯の模型/RC駆動用
電磁石DCモータ 上に同じ。プラス大型対応 昔の電車、クレーン、エレベータ
同期(SM)モータ ブラシレスDCモータ
永久磁石同期モータ(PM)
高効率、小型・軽量、複雑、希土類が必要 車のステアリング、ラジエータファン、PCのドライブやファン
HV・EV(駆動用)、エレベータ
スイッチトリラクタンスモータ(SRM) 高回転、単純構造、安価、制御複雑 クレーン,コンベア・ベルト,掃除機
同期リラクタンスモータ(SynRM) 単純構造、回転滑らか 工作機械、エアコンコンプレッサー
交流モータ 誘導モータ(IM) 堅牢、安価、高回転対応 新幹線車両、扇風機、電子レンジ、エアコン
整流子モータ 直流でも使用可 掃除機、電動工具

参考:技術評論社「(最新)小型モータの全てがわかる」、電気自動車の駆動系-どんなモータが最適か

永久磁石DCモータ

数量的には最も多く使われている小型モータ。プラモデルなどのモータ(所謂「マブチモータ」)といえばこれ。 ブラシが磨耗するので、車のドアミラーなど比較的運転時間が短い用途に使われる。

電磁石DCモータ

永久磁石の代わりに電磁石を用いて中型~大型に対応したモータ。更に細かく、直巻/分巻/他励モータに分類できる。

ブラシレスDCモータ/永久磁石同期モータ(PM)

最初は私も混乱したが、これらは実は原理的に同じもの。慣用的にインバータ内臓で直流電流を流すものを「ブラシレスDCモータ」、交流電源でそのまま同期、又は別体式のインバータを使うものを「永久磁石同期モータ(PM)」と呼んでいる様だ。さらに「ACサーボモータ」とも呼ばれる。Yahoo知恵袋

PMはIMのような籠型ロータがないので、コンパクトに作れる。しかし、永久磁石には希少資源を使うので価格高騰のリスクがある。PMは更に、次の2種類に分類される。

表面磁石同期モータ

ロータの表面に永久磁石を貼り付けて、 ステータ(コイル)の回転磁界と同期して回転。高速回転すると磁石がはがれるのでカバーを付けるが、ここで損失が出るのが難点。

埋込磁石同期モータ(IPM)

殆どの量産型HV/EVに使わており、今最もホットかつ高級なモータ。リラクタンストルクを発生する電磁鋼板と、永久磁石を埋め込んだロータを組合せる。磁石の反発力に加えリラクタンストルクも使えるので、出力も効率も向上する。永久磁石リラクタンスモータとも呼ばれる。

プリウスi-MiEVリーフは全てこのIPMを使用している。

スイッチトリラクタンスモータ(SRM)

ロータの位置情報に基づいて、ステータの巻線に電流を供給し、連続的な磁気吸引力により回転運動を作り出す。永久磁石を使わないので、資源問題も逆起電力も発生しない。ロータには巻線すらなく、構造が簡単で安価かつ堅牢、発熱問題もない。

高度な電流制御が要求されるため(振動、騒音問題)長らく主流にはならなかったが、 昨今の制御技術の発展により再び注目され、EV用としても期待されている。回路図アニメーション

同期リラクタンスモータ(SynRM)

ロータに何層も重ねた電磁鋼板(フラックスバリア)を使いてリラクタンスに方向性を持たせ、回転磁界を発生する(永久磁石同期モータと同じ)ステータと組み合わせる。SRMより振動が少ない。

誘導モータ(IM)

ステータ(固定子)が作る磁界の周波数と籠型ロータの回転数がずれる(非同期)ことでトルクを発生する。堅牢で低コスト。高回転を使えるので小型化が可能。起動トルク=最大トルクではなく、山形のトルクカーブでピークの後急に低下する。効率はSMに比べて一般に劣る(特に低負荷時)。

EVに最適なモータは?

用途に応じてどれもありえますが、今のとこと次のように使い分けられるのではないでしょうか?

電動スクーターや自作のEVなどは、低コストな直流モータ。

乗用車サイズの量産EVの主流は、少々高価でも高効率な埋込磁石同期モータ(IPM)

高速一定回転の特性を生かして長距離輸送用は誘導モータ(IM)

次世代低コストモータとしてスイッチトリラクタンスモータ(SRM)

勿論、今後の開発状況によっては勢力図が変化する可能性があります。個人的には、IT技術の発展と低価格競争、永久磁石に使われる希土類資源問題の点からSRMに注目しています。

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