Tennis -- MCタイチ

Vcoreシリーズと同様に2021年初頭にモデルチェンジたダンロップのCX200/400シリーズ。これもまた試打ラケットが皆貸出中OR予約で一杯になっており、暫く待った後偶然空いていたCX400Tourから試打する事になりました。

今回のCXシリーズはちょっとややこしいラインナップなのでスペックを纏めてみました。

重量 バランス フレーム厚 フェイス面積
CX200 Tour(18*20) 315g 310mm 20.5mm 95 sq.in.
CX200 Tour 310g 310mm 20.5mm 95 sq.in.
CX200 305g 315mm 21.5mm 98 sq.in.
CX400 Tour 300g 320mm 23.0mm 100 sq.in.
CX200 OS 295g 325mm 21.5mm 105 sq.in.
CX200 LS 290g 325mm 21.5mm 98 sq.in.
CX400 285g 330mm 24.0mm 100 sq.in.

このように重量順に並べると200と400が入り乱れており、重量と大体相関関係にあるのはバランスポイントだけです(軽くなるほどトップヘビー)。200と400の基本的な違いはフェイス面積とフレーム厚(400の方が広くて厚い)ですが、200同士または400同士で同じかというと結構違いますし、中には逆転してるスペック(CX200 OSの面積)もあります。

それだったら200と400に分けずに、Vcoreみたいに面積でCX95、CX98、CX100等と分類して夫々にTourとかOSとか付けた方が判り易と思いますけどね。そもそも同一ラインナップの中でこんなに多くのモデル(スペック)が必要なのか良くわかりません。勿論選択肢が多い事自体はユーザーにとってはメリットですが、フレーム形状が多種類だと型(モールド)の種類も多くなり製造コストが上がってしまいますよね?

試打レビュー

何も考えず普通に打って弾道が高くスピンも良くかかりパワーもあります。パワー比較するとXR3を張ってパワフルになった私のBurnFST99SやFX500、Clash100辺りと同等。ExtrimeMPやVcorePro97(2018)より若干パワフルと言ったところ。打感も黄金系では最高ランクのソフトさで、厚ラケっぽい弾き感が微かにありつつも、フレームの撓みやボールのホールド感は薄ラケに近いと思います。もっとも使用ガットはナイロン・マルチの中でもかなり柔らかくて良く飛ぶというバボラのエクセル130(テンションは48ポンド)だったので、そのお陰も結構あるかも知れませんが。

体感的なバランスはトップライトな順にBurnFST99S<Vcore95<Ezone100<CX400Tour<FX500<Extrime MP(右に行くほどトップヘビー)と言ったところ。ただ打つともう少し鈍重に感じるのは、しなり感やホールド感からくる鈍さのせいかも知れません。まあいつも言うように僕は今のラケットは皆トップヘビーだと思っているので、一般的な基準ではミドルバランスと言ったところでしょうが。

ストロークはこのしなり感とスピン性能そして(僕には)トップヘビー気味のバランスを生かして、ゆったり巻き込むようにトップスピンをかけると良い感じで重い球が打てます。ただトップライトで球離れの良い私のBurnFST99Sの感覚だと振り遅れ気味になるので、それを見越して動作の開始を早める必要があります。これはリズム感なので慣れの問題だとは思いますが、追い込まれて時間が無い場合はちょっと厳しいかな。マッケンローっぽく振らずにタッチだけで返球する感覚を思い出す必要があるかも。ボレーもホールド感と重みを生かしてタッチだけで重い球が打てそうですが、やはり速い動きは苦手かも知れません。

一方、最初から最後まで自分のリズムで打てるサーブはなかなか打ちやすいです。基本的に重さを生かしたフラット系が得意ですが、ホールド感も良いのでそんなに擦らなくてもそこそこスピンはかかってるようです。

FX500の打感も柔らかいと思いましたが、CX400Tourと比べると厚ラケ然とした硬さや弾き感はあります。エクストリームMPは目が粗いストリング配置(フェイス全体に分散してる)事で柔らかさやホールド感を出してるのに対して、このCX400Tourはフレームのしなりで柔らかさを出しているように感じます。またCrash100はフレームが捻じれずに、(面と垂直方向に)しなる事で柔らかさとパワーを出しているのに対し、CX400Tourは面と平行な方向(面に正対して左右)にもしなっているように思います。

外観/スペック

製品名 重量 バランスP フレーム厚 重量(実測) バランス(実測)
CX400 Tour 300g 320mm 23.0mm 322g 324mm
V core 95 2021 310g 310mm 21.5-22-21mm 325g 320mm
FX500 300g 320mm 20~26mm 317g 330mm
FX500LS 285g 325mm 23~26mm 305g 340mm
Extreme MP 300g 325mm 23/26/21mm 312g 330mm
EZONE 100 300g 320mm 23.5/26/22mm 315g 326mm
V core pro 97 2019 310g 310mm 20.0mm 335g 318mm
Pro Staff Tour90 315g 315mm 17mm 336g 315mm

毎度申し合せたように300g/320mmという黄金スペックですが、ガットやグリップテープ込みの実測では322g/324mmでした。これは黄金系としては若干重めで若干トップライトなので体感と合致します。

フェイス形状は先端が幅広で手元が尖っている逆卵形状で、私のBurnFST99Sとほぼぴったり重なる程似ています。

しかしハッキリ違うのはストリングパタンで、FST99Sは18*17という縦糸が多いパタン(しかも中央が密)でマス目がかなり縦長になっているのに対し、CX400Tourは通常の16*19ではあるものの横糸が中央で密になっているため、珍しい横長のマス目になっています。ダンロップがパワーグリッドと呼んでいるこの配置は、フェイス中央と外側の打感を揃えるという昔からあるコンセプトのようですが、今回のCXシリーズはなんで横糸だけを密にしたのかが謎です。というのも所謂Sラケは横糸を疎にして縦糸のスナップバックが起きやすくスピンが掛かりやすくしていますが、これはその逆だからです。もっとも結果としてCX400Tourがスピンが掛け辛いわけでは無く、寧ろ上述のようにかけやすい方ではありますが。

あと見た目の問題ですが、CXシリーズは先端部分の形状がFSTのようにスムーズな円弧ではなく、さりとてヨネックスのようにハッキリ四角くなってる訳でも無く、両角が僅かに角張っているので、なんか精度が悪いように見えてしまいます。先端付近のスウィートエリアを広げたければ、ヨネックス形状の方が効果的だと思います(実際Vcore95は明らかに広い)。

まとめ

ちょっと判りづらい2021のCX200/400シリーズの中で、いきなり本命に当たってしまったかもしれません。パワー、スピン、打感全てが高次元。パワーが欲しければ硬いのは我慢しろというバボラ系厚ラケは最早過去のものではないでしょうか。個人的にはもっとトップライトなら理想ですが、多くのプレーヤーにとってCXシリーズ中どころか全ブランド/全モデル中でベストラケットオブザイヤーに輝くかも知れません。

Yonexの Vcoreシリーズが2021年開けにモデルチェンジしました。流石に人気があるようで、いつも試打ラケットをお借りしてるショップではVcore97や100あたりは既に貸し出し中&予約済みであり、唯一空いていたVcore95を先ずお借りしました。

試打レビュー

先ず意外なほど打感がソフトでホールド感もあります。前作のVcore97と比べても全然柔らかいし、飛び(パワーアシスト)も一回り上だと思います。2020のEzone98とEzone100の中間位の飛びと柔らかさですね。プリンスの白いTour95よりも柔らかくてやや飛ぶ感じ。ただ飛ぶと言ってもこの種のラケット(フレーム薄目、面積小さめ)にしてはという事であり、所謂黄金系の厚ラケ程には飛びません。

重量はそこそこありますが、バランス的には僕好みのトップライトなので持った感じや振った感じは良好です。更に空気抵抗が少ないのか、もっと面積が小さい僕のプロスタッフTour90と比べても振り抜きが良いのには驚きました。ただ飛び自体はTour90と大差ない上、スイングウェイトもVcore95の方が重く感じるので、パワーウェイトレシオと言う意味ではTour90の方が上になってしまいます。

弾道は普通に打つと低くフラット気味の球になります。擦り上げるようなスイングはし辛いし、無理に持ち上げようとするとフラットのまま軌道が上がってオーバーしそうな勢いです。薄ラケであるVcore Pro 97の方が遥かに軌道が上がりやすくスピンもかけやすいのはガットのせいだけとも思えません。

もっともスピンの掛かり難さは考え方次第で長所にもなり、例えばバックのスライスは吹け上がらず低弾道の重いボールになります。サーブも意外とスピードが出るのは、多分あまり回転がかからず自動的にフラットサービスになるからでしょう。ボレーも速い動きには向きませんが、十分準備する時間が有れば低く重い球を打てそうです。

外観/スペック

他のVcoreに比べて上下に短く、一見して95だと判ります。近年のトレンドに従い、先端にスウィートエリアを移動させるべく、フェイスの上辺が下辺より長いのは他のYonexのラケットと同じですが、上下に短いためより逆三角形感が強調されたユニークなルックスで、僕は嫌いじゃないです。ただこの色使いは頂けませんね。シックじゃない朱色と言うかオレンジベースにこれまた明るい青の挿し色。場所もテキトウに考えた感じ。悪いけどYonexの製品には美的センスを感じません。

まるで揃えたかのようにフレームと同色のガットは、ルキシロンのエレメント125らしく、テンションは48ポンドとなっていました。ポリガットなのに柔らかい感触だと思ったら「ルキシロン史上最高のソフトフィーリング」だそうです。「モノ・マルチストリング」ってどっちやねん?という感じですが、モノのコアの周りに細いマルチフィラメントが巻いてあるとかでしょうか?

打感は良いとしてスピンのかけやすさはどうなんでしょう?あとパワー(反発力)の点でもポリガットだからイマイチなのか?それともナイロンマルチ並みの性能なのか?皮肉にも使用ガットが低性能な程、他のガットに変える事でラケットの評価が向上する余地が大きいという事ですね。

フェイス形状は私のプロスタッフTour90と比べても上下長はあまり変わりませんが、先端部の幅が明らかに広くなっています。因みにボールをリフティングしてみると、スウィートエリアはVcore95の方が明らかに広く、特にラケット先端部分は広い範囲でブレずにがっつり飛びます。ところが実際にプレーすると、不思議とスウィートエリアの差を感じません。Tour90はスウィートエリアを外してもフレームがブレて衝撃を吸収してるようですが、Vcore95で外すと流石にガツンと腕に来て疲れそうです。

製品名 重量 バランスP フレーム厚 重量(実測) バランス(実測)
V core 95 2021 310g 310mm 21.5-22-21mm 325g 320mm
FX500 300g 320mm 20~26mm 317g 330mm
FX500LS 285g 325mm 23~26mm 305g 340mm
Extreme MP 300g 325mm 23/26/21mm 312g 330mm
EZONE 100 300g 320mm 23.5/26/22mm 315g 326mm
V core pro 97 2019 310g 310mm 20.0mm 335g 318mm
Pro Staff Tour90 315g 315mm 17mm 336g 315mm

スペック的にはVcoreシリーズ中、最もトップライトなバランスで310mm。重量は一番重く310g。何方もVcore Pro97と全く同じですが、実測では10g以上軽く、パランスは若干トップヘビーでした。振った感じはVcore95の方が少しですが確実に軽いと思いました。

まとめ

前作のVcoreは97であれだけ硬くて飛ばなかった事を考えれば、今回のVcore95は弱点が粗無くなり、格段に使い易いラケットになったと思います。技術的には例のVDMで振動を吸収し、ガットが動きやすい新グロメットでホールド感を出したと言ったところでしょうか。

結果的に打感の柔らかさとホールド感が有り、振り抜きの良い小さめのフェイスでバランスもトップライトという僕好みのラケットになりました。ただ飛びはツアー系としては良好というものの、パワーウェイトレシオでTour90に劣り(BurnFST99比だともっと劣る)、スピンもかけ難いなど扱いづらい面もあります。だからこのラケットが向くのは、80年代からテニスをやっていて小面積ラケットをフラット気味に振り抜くスタイルのベテランプレーヤーでしょうか。そういう意味では僕も該当しますが、 体力的に厳しいので最新テクノロジーで楽をしたいのです(;’∀’)