Phantom 100 & O32023-03-26
ウィンザーラケット店内の試打コーナーで試打して素晴らしかったファントム100とそのO3。遂に梅田まで行かなくても借りれる店を見つけて借りてきました。ノーマルとO3タイプ合同のレビューです。
外観・スペック
正面から見ると瓜二つですが、側面から見ると同じ商品名の仕様違いとは思えない程違います。O3の穴がインパクトがあるのは当然ですが、見た目の厚みが両者で全く違います。
しかし何故かスペックだとリムの厚みはあまり変わらないので、ノギスで測ってみるとノーマルは最先端-中央(リムの4時/8時)-手元(スロート最下部のくぼみ)がスペックより夫々0.5~1㎜程度分厚くなっていました(下表参照)。厚みを測定するのは初めてですが、こんなに誤差があるもんなんでしょうか?
一方O3は、最先端はスペックより1㎜厚く、中央で0.5㎜薄く、スロートの根元で0.8㎜厚くなっていました。つまりスペックとは違い先端から手元に向かって徐々に薄くなっていく形状で、しかも最薄部でも17㎜を超えており16.5㎜というスペックはちょっと極端でした。
製品名 | 重量 | バランス | フレーム厚 | スウィング ウェイト | 重量 (実測) | バランス (実測) | フレーム厚 (実測) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Phantom 100 2022 | 305g | 315mm | 20-22-20mm | 290 | 327g | 323mm | 20.6-22.5-21 |
Phantom 100 03 2022 | 310g | 310mm | 20-20-16.5mm | 295 | 327g | 323mm | 21-19.5-17.3 |
Phantom 100 2019 | 305g | 315mm | 20-22-20mm | 330g | 323mm | ||
ProStaff Tour90 | 315g | 315mm | 17mm | 336g | 318mm | 17.5-17.4-17.2 | |
Speed MP 2022 | 300g | 320mm | 23mm | 322g | 330mm | ||
CX400 Tour | 300g | 320mm | 23.0mm | 322g | 322mm |
持った時の重量感も、ノーマルはズッシリ重く、対してO3はトップライトで軽快に感じます。ところが意外な事に、実測バランスと重量は意外にも両者完全一致してるんですね。ただこれは、ノーマルにはオーバーグリップが巻かれていたのに対し、O3の方には巻かれていなかったからというのもあるでしょう。もしO3にもオーバーグリップを巻けば、スペック通りやや重くややトップライトのバランスになる筈です。
因みに、O3のリムは大穴が空いているので一見華奢そうですが、フェイスの裏と表の部分はちゃんと繋がっているので、順しなり方向の剛性は見た目ほど低くないと思います。丁度、鉄道のレールの断面形状がI(アイ)の字になっていて、軽い(断面積が小さい)割に剛性や強度が高いのと同じです。
試打インプレ
先ずO3ですが、スロート部分は重量感がありますが先端が軽いのでスウィングウェイトとしてはノーマルより軽く感じます。因みにこれでも僕のProStaff Tour90と比べたらズッシリ重いので、重量がかなりあるのかと思いきやTour90の方が実測で9gも重かったです。その代わりバランスはO3より5㎜トップライトな318㎜(ガット、オーバーグリップ込み)です。
打感はとても柔らかくベリースウィートな味わいでした。店内の試打ルームでも感じましたが、ボレーや短いボールの処理などインパクトが小さいショットはタッチ/コントロール共に良好です。しかも、試打ラケットには振動止めは付いておらず、張ってあるガットがファントム ハリアー レスポンスというポリガット(テンションは46-44lbs)でした。もっともこのガット、中心部にエストラマー(ゴムの一種、但し商品イラストのようにドロッと溶けだしたりしないw)が入っているのは通常のポリよりは柔らかそうですが。
スウィングスピードを上げて行くと、最初はエネルギーが吸収されてパワーロスしているような感じを覚えましたが、ボールを押し出すように振るとラケットが撓みボールを掴んでからドカンと発射されるようなマッシブなショットが打てます。近年のラケットはいくら柔らかさを謳っていても、フレーム全体としては高剛性でこのように撓る感じはありません。
サーブもバシッと叩くように打つのではなく、重めのウェイトを生かしてゆったりドスンと打つ感覚が合っています。というか、ラケットの特性上自然にそういう打ち方になります。じゃあスピン系のサーブはどうかというと、O3の大きな穴のお陰か面と平行に擦る方向には自然と速度が出るようです。
もっともストロークは、僕が基本フラットドライブ系だからか、Tour90やBlade98Sと言った薄ラケと比べ、明らかに振り抜きが良いとは感じませんでした。また勝手にスピンが掛かるような特性ではなく、あくまでしっかり擦ってスピンを掛けるタイプだと思います。何れにしろ、他のレビュアーも言うように、普段のラケットと空力特性が違い過ぎて、それを生かすようなスウィングをするには、もっと使い込む必要がありそうです。
次にノーマルのPhantom100ですが、これはひとことで言うと普通に黄金スペック的なラケットでしたw 勿論、これも振動止め無しでポリガット(ファントムタッチ17。46lbs)という条件にしてはかなりマイルドな打感です。しかし、O3のようなしなり感はなく、中厚系の剛性の高さ(弾きの良さ)を感じます。また、振り抜きの問題なのかO3と同じ実測重量とバランスなのに、何故かトップヘビーで鈍重に感じます。
スピンも巷で言われるほど良く掛かるとは思いませんでした。勝手にスピンがかかるのではなく、スピンを掛ける打ち方をすればちゃんと掛かる感じです。まあ僕はスピン性能を謳うラケットを使っても、あまりスピンが掛からない質ですけどねw 寧ろ18*20の薄ラケの方が良くスピンが掛かったり。
まとめ
という訳で、ノーマルのPhantom100はソフトでパワーもあり十分良いラケットだと思います。ただ振り抜きと言い反発の仕方と言い、薄ラケというより黄金スペックとか中厚系に近い感じでした。だから比較するならVcore98やVcorePro100、Speed MP、SX300Tour、CX200Tourあたりでしょうか。それらと比べて傑出した点も無ければ劣った点も無く、無難な選択だと思います。
あと旧作(2019モデル)も試打した事が有りますが、これはもっと硬くて飛ばない印象でした。もっとも張ってあるガットがプロハリケーンツアー(48ポンド)という硬めのポリだったせいでもありそうです。そして実測重量が3g重く、実測バランスは同じなのに今作より僅かに軽く感じました。
そして注目のPhantom100 O3ですが、これは打感的にも振り抜き的にも正真正銘の薄ラケでした。このようなラケットはあらゆるブランドの現行モデルの中で唯一無二だと思います。ただ…じゃあ買うのかと言われると、残念ながら答えはNOです。何故なら僕のプロスタッフ ツアー90と比べて明らかに優れているとは言えないからです。
先ずスウィングウェイトですが、冒頭に書いたようにTour90より9gも軽いにも関わらず、バランスがややトップヘビーなので、若干鈍重で振り回すのがしんどい感じがしました。勿論今のラケットの中ではかなりトップライトなんですが、僕が好むTour90のバランスと重量のラケットは最早存在しないという事でしょう。
じゃあやや重めで面積が広いのだからパワーはあるのかというと、実はこれも微妙なんです💦 意外にもTour90の方が若干反発感のある打ち応えでパワーがあり、ボールをしっかり捉えた時にすっと振動が消える、所謂ポケットフィーリングが気持ち良いです。Phantom100 O3はスウィングスピードが遅くても速くても同じ柔らかい打感なので、小技は打ちやすいのですが、取り回しがやや悪く感じます。勿論、実験室で測定したらPhantom100 O3の方がパワフルなんでしょうけど、スウィングウェイトとの対比であるパワーウェイトレシオと言う意味ではTour90の方が僅かながら有利に感じました。
最後にスウィートエリアは流石にPhantom100 O3の圧勝!…かと思いきやこれも大差ないんですよね💦 勿論細かくチェックすればO3の方が広いですが、無意識に打った時にあまり差を感じないという意味です。まあこれは僕がTour90に慣れているという事と、今回は壁打ちしか出来なかった事もあるでしょう。もしダブルスゲームでネットプレーをやると、Phantom100 03のスウィートエリアの大きさが体感できたと思います。ただその場合は、スウィングウェイトの大きさがネックになるかもしれませんが。
まあ古い薄ラケとの比較など気にしてる人は滅多に居ないのに、個人的な「まとめ」が長くなってしまい申し訳ありません。一言で言うとO3はノーマルのPhantom100とは、全く別物のラケットです。これらを同じモデル(製品名)の仕様違いで売り出す意味があったんでしょうか。比較レビューもあまり意味が無かったですね💦