Pure Aero 20232024-05-10
【2024 7/6追記】
前回の試打で思いの外好印象だったので、別の店でも借りて再び試打しました。前回のストリングはXcelでしたが、今回のは縦がRPM ブラスト ラフ、横がTCSでテンションは50ポンドでした。レビューは各項目の末尾に【ポリ仕様追記】として追記しました(但し重複する内容も有ります)。
また、前回のレビューも内容は大体同じでしが、読みやすいように修正しました。
概要/スペック
近年はヨネックスの逆三角形程極端ではないにせよ、先端が広がったしゃもじ型のフェイスが多い中、Aeroシリーズは普通の楕円に見えます。
今回は同じ100平方インチのGrinta100と比較してみましたが、何故かAeroの方が全周で3-5mmづつ小さかったです。一方ストリングパタンはAeroが通常の16*19なのに対し、Grinta100は横糸が1本少ない16*18です。オマケにストリングの配置はAeroの方が全般的に中央部に集中しているので、大分目が細かくなっています。
製品名 | 重量 | バランスP | フレーム厚 | 重量(実測) | バランス(実測) |
---|---|---|---|---|---|
Pure Aero 2023 | 300g | 320mm | 23-26-23mm | 325g 320g 314g | 327mm(ポリ仕様)※ 326mm ※ 329mm |
Vcore 98 2023 | 305g | 315mm | 322g | 326mm | |
Vcore 100 2024 | 300g | 320mm | 25.3-25.3-22mm | 323g | 331mm ※ |
Speed MPL 2024 | 280g | 325mm | 23mm | 298g | 340mm |
CX200 2024 | 305g | 315mm | 21.5mm | 316g | 325mm |
Ezone98 2022 | 305g | 315mm | 23.5-24.5-19.5mm | 329g | 321mm ※ |
Blade 98S V7 | 295g | 325mm | 21mm | 314g | 332mm ※ |
Pure Aeroの試打ラケは分厚めのグリップテープ(6g)が巻いてあったので、試しに外してみると重量が314g、バランスが329mmとなりました。こうなると軽量でややトップヘビーな数値ですが、軽く振ってみると左程トップヘビーには感じませんでした。
グリップテープを外した状態で AeroとVcore100を比較すると、同じ黄金スペックなのに3g重く、バランスは5mmもトップヘビーです。一方、スペック上は5g重いVcore98は実測では2g重いだけ、バランスはスペック上5mmの差がありますが実測では3mmの差でした。
【ポリ仕様追記】
表の冒頭に今回追記した2本目の試打ラケ(ポリ仕様)の実測値を記載しました。同じグリップテープ付きのナイロン(Xcel 130)仕様と比較して何と5gも重いという結果に。バランスは1mm違い(誤差の範囲)なのでグリップテープの重さやストリングの重さの違いという訳でも無さそうです。ただ実際に使った感じとしては後述のように、スウィングウェイトの違いは感じませんでした。
試打インプレ
先ず、お店で手に取って最初に感じたのは、黄金スペックの中ではトップライトという事です。勿論、毎度言うように、カタログスペックは全くあてになりませんが(多分製造上のバラつきというより、そもそも設計上の目標値ですらない)、実測値でも左程軽くもトップライトでもありませんでした。試打ラケには厚めのグリップテープが巻かれていたので、試しにこれを外しても左程トップヘビーには感じませんでした。
これは、スウィングウェイトとは慣性モーメント(回転運動における慣性重量)なので、同じ重さ、同じバランス(重心位置)でも、質量が重心付近に集中している方が小さい(軽い)からだと考えられます。つまりPure Aeroはスロート部分に質量が集中し、逆にフェイスの先端とグリップエンド付近が軽い質量配分になっていると思われます。
また、Ezone98と同様に、やや短いラケットを振ってるような感覚があります。理由は質量配分が集中している事に加えて、全体に高剛性である事、そしてもしかしたらエアロ形状により回転運動時の空気抵抗が小さいのかも知れません。
次に打感ですが、思った以上にマイルドでした。ピュア・アエロを試打するのは初めてなので、過去モデルとの比較は出来ませんが、回転系(反発系)のイメージとは裏腹に、コントロール系の打感と飛び方だと思いました。
他のラケットと比較すると、一瞬で肘が痛くなる現行のPure Driveより遥かに柔らかいし、新作Speed MPLと比べても明確に柔らかい(剛性感、衝撃感共に)。そして2023 Vcore98/100(VDMで衝撃は抑えている)と比べても、今作のAeroの方がホールド感と言う意味では柔らかく感じました。
ネットのレビューを見ると、今作のAeroは僕と同じく柔らかくなったという人は多いです。しかし、逆に硬くなったという人も結構居るようです。何故真逆の感想になるのか考えてみるに、物性としての剛性は確かに下がっているので、恐らくフラット系で分厚く当てる人は今作の方が柔らかく感じ、逆に薄く擦る人は飛ばないし持ち上がらないので硬くなったと感じるのではないでしょうか?
冒頭で今作のアエロはコントロール系ラケットの特性だと書きましたが、これはスピンをグリグリ掛けるより、ボールを押してパワーとコントロールを得るタイプという意味です。即ち、飛びとしてはやや控えめで軌道は若干低め。だから、よく暴発させる僕としては「抑えが効く」という感想になりますが、パワーアシストや弾き感を期待する人には向かないと思います。
ただ僕も元々フラット系の打ち方であるが故に、吹かすミスも多いがネットミスも多く、やはりスピンをかけて確実性を上げたい所です。その点、今作のアエロのスピン性能はやや不満が残ります。しっかりとワイパースウィングする余裕がある時は良いのですが、軌道が低いサーブをコンパクトなスウィングでリターンする時などは、ボールが持ち上がらずネットしてしまう事が多いのです。因みに僕のGrinta100 Liteの方が楽にスピンが掛かりますし、新作CX200はもっとかかります。
今作のエアロは、打感が柔らかいと言っても、ボールの引っかかり感やホールド感は少ないんですよね。まあこれは張ってあるガット(エクセル130)の特性とも言えますが。エクセルってナイロンマルチの割にホールド感が希薄だしあまり飛ばないので。
ショット別にみると、先ずストロークは、しっかり打ち込めたら重くて伸びるフラット系のボールになります。逆に、妙な体制で打たされた時は、ネットミスしたり逆に吹かしてしまいます。近接戦でなんとか当てるだけで返した場合も、相手の球威が十分あれば意外としっかり飛びますが、逆にヒョロヒョロ失速系のボールが来ると、小手先でひょいと返すのは苦手です。
スライス(バックスピン)はボールを乗せて運ぶような打ち方は難しいですが、ブロックするようにコンパクトに打つと、バック・フォア共に上手くいきます。故に、基本的にブロック系スライスであるボレーは、中々打ちやすいです。剛性感も重量感もそれなりにあるので、ラケットを振らずにぶつけていく打ち方に自然になります。
同様にサーブもフラット系が打ちやすいです。僕の身長とリーチでフラットサーブが入るという事は、スピードはあまり出ていない筈ですが、バウンド後に伸びているのか、相手は球威に押され気味に見えます。逆に擦ってもストロークと同様引っかかり感が希薄で、更に 分厚いリムは擦る方向に空気抵抗が大きいのか、スピン系のサーブはあまり得意ではありません。
【ポリ仕様追記】
先ず壁打ちで試したところ、今回のポリ(縦:ブラスト・ラフ / 横:TCS)仕様の方が、明らかにスピンが掛かると感じました。まあ流石に前回のナイロンマルチ(Xcel、しかも毛羽立ち気味)じゃあスピン性能を期待するのは酷というものでしょうが、しかしAero Teamは同じXcel、同じテンションと古さなのに滅茶苦茶スピン掛かりますね。
打感はポリとしてはかなり柔らかく、Xcel仕様と変わらないばかりか、より少ない力で飛ぶせいか、場合によってはより柔らかく感じる事も。尚、TCSの素材は正確にはポリエチレンで、元々柔らかい打感なのに加えて、直ぐに緩んでしまう事で有名です(なので通常はポリエステル)。更に全体のテンションも少し緩いので、結果的に打感はXcel仕様と変わらず、パワーとスピン量は1割以上増してる感じでした。
ただダブルスのゲームで使ってみると、接近戦のコンパクトなスウィングでは大してスピンはかかりません。この辺りは前回と同様『スピンを掛けるスウィングをした分だけ掛かる仕様』という印象です。一方飛びも、振った分だけ飛ぶ感じ。よって、Pure Aero TeamやCX200のように勝手にスピンが掛かるとか、かなり自己抑制しないと暴発するような事は無かったです。
お陰で、ハイボレーやスマッシュと言った打ち下ろし系のショットが、僕としては珍しくコートに収まりましたした。勿論、バブリンカのバックハンドをイメージして上に飛び過ぎたら、バックネットを直撃してしまう位のパワーアシストはありますが、これは完全に技術的な問題でしょう。
サーブもスピンが掛かってる感触は左程ないけど、実際にはかかっているのか、それとも球速が適度に抑えらっれているからか、普段よりアウトミスが少なめでした。所謂『抑えが効く』飛びと打感ですね。スウィングスピードが閾値を超えると、それ以上はガットやフレームが弾性範囲を超え、球速が頭打ちになるような特性を感じました。
逆に言うと、相手のゆるふわボールをこちらもソフトタッチで返すようなショットはやりにくいです。相手か自分の何方かがしっかり打たないと、ホールド感とかしなり感と言ったインフォメーションが希薄でコントロールし辛く、何処に飛ぶか判らないがネットは超えないという情けないミスになります。
これは多分、このラケットが振動吸収やガットの動きやすさの点ではそこそこ「柔らかい」ものの、フレーム自体の剛性が高いからだと思います。高剛性だからソフトタッチのイメージが掴みづらく、普通のショットも無意識にボールを運ぶのではなくヒットするような打ち方をしているのかも知れません。
結局、どの程度のインパクト(相手の打球と自分のスウィングの相対速度)で最適になるようなラケットを選ぶかの問題で、そういう意味ではPure Aero (ノーマル)は僕にとって程よいパワーかも知れません。また、勝手にスピンが掛からないという意味でも、元来フラットドライブ系の僕のスタイルに合ってると言えます。
ただ、もうちょいしなり感が欲しいと同時に、(これは全く個人的に話ですが)僕のフラットドライブ系ショット(40歳以下のプレーヤーから見たら粗ドフラットかも知れない)だと、ネット上ギリギリ通さない限りオーバーミスみたいな状況が多く「やはり下から上へのモダンスウィングで確実性を上げて行かないと」とも考えています。そこで、所謂勝手にスピンが掛かるラケットで、自分のテニスを改革したいという願望もあります。ただ、上述のAero Teamのように、激スピンラケットは大抵、激飛びラケットでもあるんですよね。やっぱり自分の技術を向上させるしかないか。