Wilson Clash 100 Tour2019-04-26
ノーマルのClash100は打感は期待通りだったけど軽すぎると感じたので、より重いClash100Tourを試してみました。
スペック
このラケットはどのカテゴリにも属さない特殊なスペックなので、比較対象として今まで試した全てのラケットに登場してもらいました。
製品名 | 重量 | バランスP | フレーム厚 | 重量(実測) |
---|---|---|---|---|
Clash 100 Tour | 310g | 306mm | 24mm | 326g |
Clash 100 | 295g | 310mm | 24mm | 308g |
Pure drive team | 285g | 320mm | 23-26mm | 300g |
Vcore 98 (G) | 305g | 315mm | 22/22/21mm | 335g |
Vcore 100 | 300g | 320mm | 24/25/22mm | 323g |
CX200Tour | 310g | 310mm | 20.5mm | 333g |
Vcore pro 97 | 310g | 310mm | 20.0mm | 328g |
Prince Tour 95 | 310g | 310mm | 22/22/20mm | 336g |
Pro Staff 97CV | 315g | 310mm | 21.5mm | 330g |
Pro Staff Tour 90 | 315g | 315mm | 17mm | 336g |
先ず重量は、スペック上は又もや横並びの310gですが、実測では326gとツアーモデル中最軽量でした。バランスポイントは306mmと全モデル中一番手元にあります。実際持ってみると、確かにPrinceやDunlopの製品ほど重々しく感じませんが、何故かより重くバランスが先端にあるハズのPro staff 97CVより重く感じます。
写真はノーマルのクラッシュのものを流用していますが、外観やサイズはTourも全く同じだそうです。使用ガットはClash100と同じイチバン127(ナイロンのモノフィラメント)。テンションは52ポンドとなっていました(ノーマルClashは50ポンドでした)。
試打レビュー
先ず打感ですが、あれほどソフトだったノーマルのClashとうって変わって、わりとガツンと来る硬めの打感でした。ホールド感もそれほど無く、私には普通の厚ラケと大差ないように感じました。これだとプリンスやダンロップのボックス断面のツアーモデルの方が、面剛性を含む全般的な硬さは若干柔らかいように思います。
スイングウェイトも上述の通り、スペックの割には重く感じました。私のTour90の方が実測重量で10gほど重く、実測バランスPはほぼ同じ位置なのに、不思議なことにClash 100 TOURの方が鈍重に感じるのです。試しにピックアップウェイト(振らずにグリップ部分で持つだけ)をジックリ比較してみると、両者同じような重量感でした。
ピックアップウェイトとスイングウェイトは別の指標(物理単位)なので違っていても不思議はないですが、それでもこんなに差がつくのは何故だろうと考えた時、Clashは振った時の空気抵抗がTour90より大分大きい事に気付きました。
理論上は、完全にフラットなショットなら、フレームの全面投影面積が小さくラケットの進行方向に長い(分厚い)厚ラケの方が空気抵抗は少ないはずです。しかし、実際にはストロークでもサーブでもそれなりにスピンを掛けるわけで、その場合フェイスに対して斜めにラケットが進みます(しかも基本的にスピン量が多いショットほどヘッドスピードが速い)。そうすると厚ラケの平たい断面に対して斜めに空気が流れる事になり、小さな正方形断面の薄ラケより空気抵抗が大きくなる筈です。
なのでClash Tourは振り抜くのを諦めて、ゆっくり丁寧に振るとパワフルで安定したショットが打てます。これはピュアドライブのように硬い典型的な厚ラケでも同じでした。今日の厚ラケはいくら軽くても空気抵抗でヘッドスピードが制限されるので、ゆっくり丁寧に打つ(それでもパワーは出る)のが鉄則のようです。
それともう一点気づいたのは、ノーマルのClashよりは一回り重い筈なのに、ボールに対する打ち負け感はさほど変わらないという事です。打ち負け感とはラケットの軽さによるブレや振動だと思っていましたが、そうとは限らないようですね。では何が原因かというと、恐らくねじり剛性の過剰な高さだと思います。打ち負け感を覚えるのは特にラケットの左右にミスヒットした時ですが、その際ラケット自体は確かに捻れないので、その分手首に衝撃(ねじりトルク)が伝わり結局ぶれてしまうのではないでしょうか。
その点薄ラケはミスヒットで捻れるんでしょうけど、その御蔭でラケットがねじりトルクを吸収し、腕に伝わる衝撃を緩和しているように思います。体感上のスウィートエリアが高剛性な厚ラケも低剛性な薄ラケもさほど変わらないのは多分この辺が理由でしょう。ブレとかエネルギーロスを考える時には、ラケットだけではなく腕の関節で起きるロスも含めて考える必要があると思います。
なのにメーカーは何故「高剛性=高性能」のように宣伝するのでしょうか?それは他のレビューでも書いているように、恐らくラケットを万力で固定してそこにボールを当てるような実験方法のせいだと思います。或いはその実験によって導き出された「捻れない・しならないラケットほどパワフルかつコントローラブル」という厚ラケ信仰の弊害でしょう。
それに対して、「しなりは必ずしも悪ではない」という考え方で生まれたのがClashです。更に私がClashを試打して得た所見は「しなりは勿論、ねじれですら必ずしも悪ではない」というものです。つまり普通の薄ラケ(無ければ中厚)で良いじゃんという何時もの結論に戻ってしまいます。Wilsonの現行のラインナップでは、Clash程しならないけど捻れはもっとあるというBladeがベストになりますね。
最後になりましたが、ClashのノーマルとTourを比較したら私はノーマルの方が好きです。最初にノーマルを試打した時は、若干軽すぎ・しなりすぎかなと思いましたが、TourはClashらしさを消しすぎで普通の厚ラケみたいだし、重くしたメリットも見いだせないからです。
(今回はいつもの「試打レビュー」と「考察」が一緒くたになってしまったので、項目としては分けていません)