Wilson Burn FST 99S 購入レビュー2019-08-05
前回はFST99(ノーマル)も含めた試打ラケットのレビューをしましたが、今回は新たに張ったガットも含めたFST99S購入後のレビューです。
試打ラケットは何時も裸で貸してくれますが、購入したら勿論ケースが付いてきます(写真)。しかしこのケース、スポンジっぽいクッションが入っているものの、単なる袋という感じですね。Tour90のケースはグラフィックも形状もこのモデル専用でもっとしっかりした作りしたが、今は皆こうした全モデル共通の袋なんでしょうか。
グリップテープも革製のTour90と違ってFSTはシンセティックですが、私はむしろこの方がシックリきます。革製のテープは吸湿性が良すぎるのか、どうも滑ってしまうんですよね。その点シンセティックの方がしっとりして滑らないし感触も少し柔らかいです。
グリップサイズは2ですが、同サイスのTour90と比べて若干細く感じました。なのでオーバーグリップを巻こうと買たのですが、慣れたらこれで問題ないですね。軽いラケットと私の小さな手には、このくらいが丁度良いかも。
ガット選び
さて試打ラケットとの最も大きな違い、ガット選びの話です。最近新製品が圧倒的多いのはポリエステルですが、私はガットを切るタイプではないので、打感と飛びを重視してやはりナイロンマルチから選びました。
中にはナチュラルガットに迫る打感と好評の製品もありますが、お値段もナチュラルに迫る勢いです。価格と品質のバランスを考えると、結局私のPS 90Tourに張っているバボラのアディクション辺りに行きつきます。同価格帯では他にテク二ファイバーのXR-3が良さそうですが、違うラケットに同じガットを張ればラケットの違いが鮮明になるだろうということでアディクションを張ることにしました。
テンションはTour90なら50ポンドくらいで丁度良いのですが、フェイスが大きくなるとより高いテンションで張らないと緩く感じるはずなので、少しだけ強い52ポンドで張ってもらいました。果たして結果は…期待通りいやそれ以上に柔らかいですね。同じガットを50ポンドで張った直後のPS Tour90より僅かながら柔らかい気がします。これだったらFSTは54ポンドくらいで同じくらいのテンション感かもしれません。
レビュー
先ず打感ですが、想像通りアルパワーが張ってあった試打ラケットより明らかに柔らかいですね。試打ラケットのコツコツ感が無くなり、代わりに柔らかな弾力性が有ります。ポリガットは最初は意外と柔らかく感じても、インパクト後に硬い振動が残るというか、1時間も打っていると手首が痛くなったりするんですよね。最近柔らかさを売りにするポリ系ガットは多いですが、少なくとも衝撃吸収という点ではまだナイロンマルチには敵わないと思います。
ちなみに同じガットを張ったTour90との比較ですが、先ず打感としては思ったほど変わりませんでした。ピュアな薄ラケであるTour90と最近のラケットの中では最も薄い(私の中では中厚くらい)のFSTでは、しなやかさにそれ程違いはないという事ですね。ProStaffシリーズも、six.one tour等の薄ラケからいきなり現在の厚ラケにせずに、このFSTくらいにしておけばフェデラーもスムーズに移行できたのではないかと。
また最近のラケットはフェイス面積が皆100平方インチ弱(Tour90より10%近く大きい)にも関わらず、体感的はスウィートエリアはさほど変わらない製品ばかりでしたが、FST99Sは初めて明確に拡大してると感じました。これは多分、最近のトップヘビーなラケットが私にとっては取り回しが悪く、上手くコントロールできないので結果的にオフヒットが多くなり、物理的なスウィートエリアより狭く感じたのかもしれません。
パワーについては、試打ラケットでも打感も淡泊(しなり感やホールド感が薄い)割に反発力がありましたが、それがナイロンガットによってよりパワーや弾力感が向上していると感じました。上述のスウィートエリアの大きさもあって、重量的に軽い割には打ち負け感も殆どありません。ただそれでも、バランスはそのままで重量はもうちょっと重くても良い気がしました。Tour90だと重さを生かしてリラックスして振り抜けばドスンと重いボールが打てますが、FSTは積極的に叩かない威力のあるボールは打てない感じです。
またTour90には重さによる慣性力という意味だけでなく、空気抵抗が小さいような振り抜きの良さもありますが、FSTはそれ程でもありません。FSTのフレームも最近のラケットの中ではかなり薄いので、フラット軌道でもスピン軌道でも、投影面積は小さい部類だと思うのですが…ガットの総延長が長いからですかね?何れにせよTour90は、重さとの相乗効果でリラックスしたまま強烈なショットが打てます。
もっとも、最初はついつい力んでしまうFSTも、スカッシュのように一回り軽いラケットとボールでプレイしているつもりで打つと、リラックスして打てるようになります。勿論、同じくリラックスしてクリーンヒットした時のボールの威力は重いTour90の方があると思いますが、それが出来るのはある程度時間に余裕がある時だけでしょう。対処時間が短い時に重めのラケットを素早く的確に操作するのは困難ですから。軽いラケットで急場を凌いで、余裕がある時に思いっきり振る方がトータルで簡単という考え方もできます。
ようは威力と操作性のバランスを何処に持ってくるかですが、そのバランスは最初に感じたようにTour90とFSTの中間辺りが私にはベストではないかと思います。ただこれは対戦相手のレベルやプレースタイル、自分のその日の調子、あるいはコートサーフェイスによっても変わってくるでしょうから、ゲームの中で経験を積んでいくしかないでしょうね。その時の状況に応じてラケットを使い分けたら(公式試合ではNGか?)相手を翻弄出来るかもしれません。その前に自分が翻弄されるかも知れませんね。
これまでの考察
これまで沢山試打してきた感想や、同じラケットでガットを換えた場合の違いなどを元に、まとめを箇条書きにしてみました。
- ポリガットとナイロンマルチは依然打感が明確に違うので、試打ラケットの評価は張ってあるガットも十分考慮すべき。
- ラケットの打感(振動的に硬いか柔らかいか)はガットの種類と大いに関係するが、全般的なしなり感やミスヒット時の打感の変化(厚ラケは急にガツンと来る)は主にラケットの特性と考えられる。見極めは難しいが。
- 重量バランスはスイングそのものに影響する。なのでガット次第である程度調整可能な打感よりも、重量バランスを重視すべき。
- スウィートエリアの実用上の(体感的な)大きさは、使用者にとっての取り回しの良し悪しに左右される。
- ラケットメーカーの宣伝する商品コンセプトや対象プレーヤーは全くあてににならないと考えるべき。時にはスペックまでもが現実を反映していない。それらはあくまで新製品を売らんが為の方便である。
- 他人のレビューもメーカーの宣伝よりは参考になるが、レビュアの感性やスタイルが読者に近くないとやはりあてにならない。兎に角、試打してその人が感じた事が全て。Don’t think, feel!