Prince Tour 95 レビュー2019-02-06
試打ラケット2本目はプリンスのTour95というモデルです。これを選んだのはフレーム厚が薄めのBOX構造であること。LAFINOのレビュー動画では、柔らかいタッチで球持ち感があり、おまけにパワーもあるという評価だったからです。
スペック等
今回もスペックを書き出して、私のPro Staff Tour90そして前回借りたPro Staff 97CVと比較してみました。重量もバランスポイントも殆ど変わりませんね。
製品名 | 重量 | バランスポイント | フレーム厚 | 重量(実測) |
---|---|---|---|---|
Prince Tour 95 | 310g | 310mm | 22/22/20mm | 336g |
Pro Staff 97CV | 315g | 310mm | 21.5mm | 330g |
Pro Staff Tour 90 | 315g | 315mm | 17mm | 336g |
ところがラケットを振ってみると、プリンスTour95は私のTour90(名前が似すぎ)より何だか重いです。打感についてはボールをリフティングしてみると、ポリガットを張っている(テンションは53P)にもかかわらず柔らかいフィーリングなので期待が膨らみます。このガットはアスタポリという製品で、ポリエステルの中では柔らかいようですが、それでもナイロンガットと比べると硬くて飛ばないらしいので、やはりラケットの特性自体がソフトタッチなのでしょう。
因みにウイルソンのラケットは、フェイスの何処で打っても打感や飛びがあまり変わらないように、ガットの間隔がフェイスの中心に行くほど狭く(つまり硬く飛びにくく)なっています。しかしこのラケットはどこも同じ間隔のようで、フェイスの中心で打つととても気持ちよくハネてくれます。この感覚は高校の時に使っていたアルミの安いラケット以来です。打感も飛びも良いことからスイートスポットで打った事が判るわけですから、これで良いと思いますけどね。
試打レビュー
さて実際に壁打ちをしてみるとやはり打球感は素晴らしく、今まで試した薄ラケでないラケットの中では最もソフトでホールド感がありました。またパワー(飛びの良さ)もあるので、ドスン・ドスンとフラット系の重い球が打てます。
ただ問題は、重いので振り始めたら止まらないというか、軽く打つのが難しいのです。取り回しが悪いというんでしょうか、追い込まれた時にタッチで強さや方向をコントロールするようなショットは打ち辛いです。後で私のTour90(97CVと比較した時は重く感じた)に持ち替えると、軽々と振り回せるように感じました。
またトップヘビーだとヘッドが走るのでスピン向きとよく言われますが、このラケットには振り抜きの良さは感じられませんでした。勿論スピンをかけるスイングをすればちゃんとかかりますが、振り回すのがシンドいので自然とフラット系のショットが中心になります。サーブもちゃんと当たれば速く重いフラット系が打てますが、スピン系は打ちにくいし軌道やタイミングの微調整も効かないので、入る確率がやや落ちる気がします。
一方スイートエリアは、Tour90と大差ないと感じた97CVとは対称的に、ちゃんと広さが感じられます。フェイス形状がWilsonのように完全な楕円ではなく、先端に向かって少し広がった形状のため、先端方向へのミスヒットに強くなっているのでしょう。そのせいか割合余裕がある状況で打つボレーは、上述の球持ち感の良さも相まって、意外と打ちやすかったです。
考察
というわけで、このラケットを一言で言うと直線番長でしょうか(^_^;) 『スピンだのプレースメントだの小細工は不要。漢は黙ってドッカンフラットで勝負!』的なキャラクタだと思います。私の持ち玉もどちらかというとフラット系なので、決め球にはドッカンフラットは良いでしょう。
しかし、私はフェデラー殿下のように多彩で華麗なテニスを目指しているので、フラットしか打つ気にならないようなラケットでは困ります(^_^;) いやフェデラーでなくとも多彩なスピンコントロールは現代テニスの重要課題になっているようですし、今日のラケット技術の助けを借りて自分でも色んなスピンを打ち分けてみたいと思うわけです。
ただ不可解なのは、スペック的にも実測(重量)的にもほぼ同じの3本の中で、Tour95だけが重々しいことです。そこで、バランスポイントを家で簡易的に測ってみたところ、TOUR95はTOUR90より5mmほど先端に釣り合うポイントがありました。この差がどの程度大きいのかよく判りませんが、トップヘビーだから重く感じるという方向性は理屈に合います。
では、このバランスポイントの差(スペックは同じ)を生み出した原因は何でしょうか?多分、張ってあるガットの重量差だと思います。TOUR95のガットは1.30mmのポリガットで、Tour90は1.25mmのナイロンガットですから前者のほうが重いはず。そして張ってあるガットの総延長もフェイスが大きい分だけTOUR95の方が幾分長いでしょう。一方、ガットを除いたラケット単体のスペック重量はTOUR95の方が5g軽いので、単純に考えるとガットが5g重いから総重量は同じになり、バランスポイントは先に移動したという事で辻褄が合います。
そうだとすると、Tour95に細いゲージのナイロンガットを張れば、スイングウェイトは幾分かは軽くなる筈です。ただそれがどの程度なのかというと微妙な気がします。仮に私のTOUR90と同じガットを張ったとしても、総延長は不変(TOUR95の方が長い)なので、そっくり5g軽くなるわけではないでしょう。そもそもこの5gは机上計算であり、実はラケット自体バランスも、製造のばらつきによってスペックよりトップヘビーの可能性はあります。
従って、もしこのPour95を買って軽めのガットを張ったとして、今回試打した個体とどの程度印象が変わるかは、やってみないと判りません。判りませんが、多分このラケットのフラット番長的なキャラクタが変わるほどの変化は無いと思います。