ポジション/足つき/取り回し
短い車体、高めのシート高、低めのハンドルというつんのめり系のポジション。足つきは良いとは言えず、重量もあるので停止中にグラッと来たら立て直すのが大変。
シートの角が45度に面取されていて一見足を足しやすそうだが、実はお尻の下(足の付け根)辺りが擦れて痛い。
タンデムシート下の小物入れは、小さめのレインコート(上下)が入る位の容量があり、形状もスクエアなので使いやすい。
一見見難そうな小さなデジタルメータだが、実際は視線移動が少なく、グラフィカルなタコメーターと数値のスピードメータは一目瞭然で視認性は高い。
あと小さなビキニカウルは案外エアロダイナミクスに優れているようで、ネイキッドにしては高速でも風当たりが激しくない。
パワートレイン
ヘタなリッタークラスに匹敵する豊かな低速トルク(当時のZ1000より上)、ジェントルレスポンスでありながら適度なメカノイズと野太い排気音で気分を高揚させるベリースイートなエンジン。
しかし気持ちいいのも4500rpmくらいまでで、それ以上はガーガー騒がしくなり、7000rpmも回せば何が何だか判らないほどギャンギャンほえまくる。
よって美味しいところは使用可能な2000rpm弱から4000rpmという狭い範囲に限定され、しかもトルクがあるからすぐに到達してしまう。
風当たりと高周波振動に弱い僕としては、快適巡航速度は105km/hくらいまで。回転数は100km/h6速で約4500rpm。
燃費は街乗りで16km/L弱、田舎道を流しても20km/Lといったところ。
ハンドリング/乗り心地
短いホイールベースと近いステアリングそして比較的高い重心により、鉄球がコロッと転がるような塊感のあるハンドリング。このクラスとしてはクルクル旋回する。
フレームもサスも適度に柔軟なので姿勢変化や接地感はつかみやすいが、タイヤ(特にフロント)グリップへの依存度は高めなので、低μ路ではちょっと怖い。
セルフステアは標準状態ではナチュラルだが、フロントタイヤの空気圧や磨耗度、フォークのオイル量等によって割と敏感に変化する。
フロントサスの動きはスムーズだが、リアサスは乗車1G(1G')以降のストロークが急に硬くなり、ギャップ通過時の突き上げがかなりきつい(これが最大の弱点)。
結果として最も得意なのは40-70km/hくらいの低中速コーナーでしかも路面が良いところ。六甲~北摂のようなチマチマ峠でも結構楽しめるが、理想は伊豆スカイラインの林間部分あたりだと思う。
ちなみに、サス調整はリアのプリロード7段階と伸び側減衰力4段階のみ。
つんのめり系ポジションの上、フロントソフト/リアが硬めなので、70kgの僕でもプリロードは標準の中央から2段階抜いて適度に感じた。伸び側減衰力は当初は標準(ゆるい方から2番目)で良いと思ったが、2万キロくらいからばたつき始めた為一段強めたら丁度良くなった。
総合評価
発売された04年に購入してから5年が経ち、そろそろ乗り換えようかと思ったので記念にラストインプレを書いた。
元々重くて大きなバイクには関心が無く、さりとて2000年代初頭の600クラスは今よりさらに選択肢が少なく、トルクもヘタしたら400より薄いバイクが多かった。そんな中、サイズもトルクもハンドリングも満足できるこのバイクが登場した。
当初は大型バイクなのに高速巡航向きではない事に多少矛盾を感じたが、結果的に直4ネイキッドの汎用性を体感できたという意味では買って正解だったと思う。
このクラスとしてはシャープな運動性でありながら、カワサキらしさなのかどこか緩いというかマッタリした部分があって心地よい。峠では重いバイクを振り回している達成感を味わえるが、あまり速さを追求するより流す+αくらいにしといた方が安全だし楽しめる。
多くの楽しい思い出を作りながら、それなりに運転技術の向上ももたらしてくれた1台。そして反面教師じゃないけど「バイクは軽いに越したことはない」と再確認させてくれた。