イントロ
試乗会の1週間ほど前に発売され、前日に登録が完了したというVストローム250。事前の車種リストには載ってなかったけど、流石ユーザーフレンドリーなスズキ、ちゃんと大阪に持ってきてくれた。
ただ、最大限頑張って用意してくれであろう試乗車3台も、このバイクの人気からすれば少なすぎた模様。空いてる車種から乗っていけば、終了間際には人気車種も空いてくるという僕の基本戦略が当たらず、一番最後に一番長い列に駆け込み、最後から2番めの組で何とか乗ることが出来た。
ポジション/足つき/取り回し
またがった瞬間に、その前に乗ったミドルバイクより明らかにスリム&コンパクトなのが判る。実はGSR250よりもシートや車体がスリムで、足つき性は一回り良いと思う。
ポジションは250のアドベンチャーらしく、ハンドルが高いけど遠すぎず、僕のように手が短めで腹が出てるオッサンでも快適。この点だけは、殿様ポジションだけどハンドルがやや遠いV-Strom650や、ハンドルが遠目・低めで前傾キツめのS750は敵わない。
パワートレイン
その日乗った600~750のバイクと比べてしまうと、格段に非力なのは仕方ない。GSX-R600より重い車体に1/5のパワーという絶望的なスペックの割には、普通に走れるかなと言う感じ。
ただ、レスポンスが妙にモッサリしているのが気になった。勿論、車重の割に非力だから加速時の回転上昇が遅いというのもあるが、レーシングでも回転の上昇/下降供鈍い。Ninja250のようなガサツなフリクション感ではないが、ムービングパーツが全部重い感じといえば良いのか。GSX-S750の方が総排気量で3倍シリンダあたりの容積でも1.5倍あるのによっぽど軽々と回る。
勿論、ベースであるGSR-250のエンジンフィーリングと基本的には同じだけど、あちらはレスポンスの鈍さがあまり気にならなかった。理由は判らないが、敢えて想像すると最終減速比の問題とか?
というのも、開発者インタビューでV-Strom250はドリブンスプロケットをGSR250のものより1丁だけ大きくしているという話があった。ギアボックスやリアタイヤのサイズは同じなので、V-Stromの方が全般的にローギアードと言うこと。つまり、元々モッサリしたエンジンを若干高い回転数で使うので、鈍さが強調されたとか?
ハンドリング/乗り心地
跨って少し傾けてみるとズッシリ重く、印象としてはS750とさほど変わらない重量感。走り出すと、その重さと細いタイヤの効果で、割合ヒラヒラ・パッタリと倒れる感じ(正にGSR250と同じ)。セルフステアも基本的にニュートラルだが、ふとした事で若干の立ちの強さを感じるところもGSR-250Sに近い。ただ、車体のスリムさのせいなのか、或いは上述の少し高い回転数のせいなのか、Vストローム250の方が若干シャープな印象もある。
サスペンションは柔らかめでフリクションが少なく、250らしからぬドッシリした快適な乗り心地。ただ、その前に乗ったS750やR600の、硬くはないが無駄な動きもない精緻なサスと比べると、フワフワ・ドタバタとやや安っぽい印象はある。しかしだからといって、単純にダンピングを強めてしまうとサスの動きのスムーズさは失われてしまうだろう。マッタリ系のバイクに低コストのサスだとこれくらいが妥当な線か?
総合評価
僕がこのバイクに注目したのは、快適で意外とパワフルだが不細工というGSR-250Sのスタイリッシュ版を期待したからだが、果たして結果は期待以上でも以下でもないといったところ。
エンジン自体の完成度は元々高いので、それ以上に良くなるとはあまり思ってなかったが、車体はもっと軽量化出来なかったのか?(勿論スペックだけでなく乗り味も含めて)左右で10kgを超えるというGSRのマフラーが、V-Stromであれほどコンパクトになっても、車重が全く変わらないのは何故なんだ?
ところで、他のスズキ車との比較ばかりで、直接のライバルであろうVersys-X 250と比べるのを忘れていたので、ここでまとめて書いておこう。
【エンジン】V-Strom:低速トルクはあってスムーズだけどモッサリした回り方。Versys:軽快に回るけど低速トルクは弱め。
【ハンドリング/乗り心地】V-Strom:オンロードバイク的な軽快感と快適な乗り心地。Versys:思ったように寝ない切れない頑固なハンドリング。乗り心地も固め。
【ポジション・車格】V-Strom:スリムでコンパクトだがズッシリ重い。Versys:大柄だけどその割に軽い。
というわけで、V-Stromはオンロード、Versysはクロスオーバーというコンセプトの違いがシッカリ出ている。しかし如何せんこうしたツアラー志向の大柄なバイクに対して、今日の250ccエンジンは残念ながら絶対的なパワー/トルクの不足は否めない。
まあ大パワーが不要な状況では、非力でトルク変動が少ない=疲れにくいとも言えるから、高速も街中も殆ど走らず、空いた田舎道だけをノンビリ流すという前提なら快適なツアラーと言えそう。ただその程度の速さで良ければ、PCX150で十分なんだよね(^_^;)
個人的な嗜好としては、250ならトリッカーのように軽量・コンパクトでホントに野山を走り回れるバイクを出してほしいが、巷ではクロスオーバーとかスーパースポーツ等に人気が集中しているようだ。しかし、そんな豪華なバイクを志向する人が、何故250という枠にそれほど拘らないといけないのか理解できない。よく言われる車検なんて、新車から3年以内に乗り換えたらなら0回、5年以内でもたった1回ですぜ。