ポジション/足つき/取り回し
250クラスの中でも圧倒的にコンパクトな200Dukeと同じ車体だから、400としてはあり得ないほど小さい。タンクとか股下の幅も200よりちょっと広いなんて事はなく、全く同じで異様にスリム。重量感は200と乗り比べるとハッキリ差はあるが、単体で乗るととても400とは思えないほど軽い。
ポジションはモタードほど殿様ではないが、250クラスを含む大抵のネイキッドよりアップライト。車体なりにコンパクトなポジションだが、ハンドルが近すぎたり低すぎたりということはなく、窮屈さはない。
ただ、ステップ位置が高すぎ後ろ過ぎでスーパーバイクのバックステップみたい。低いシート高に対して地上高(バンク角)を確保するのにある程度高めなのは仕方ないとしても、後ろすぎるのは何とかならないものか?これではアップライトな上体とのバランスが悪い。
シートは硬めが好きな僕でも硬いと感じる位だから、殆どの日本人には硬すぎるのではないか?シートの角も硬いし前端もあまり絞られてないので、スリムな車体の割には股間が開いてしまい足つき性を悪化させている。もっとも、シート高自体は低いので安心感は高く、日本人男性の平均身長と体重があれば全く問題ないと思う。比較すると、Ninja250やCBR250やGSR250なんかと同等の足つき性(体重の軽めの人はやや不利か?)。
パワートレイン
体感パワーはDR-Z400SMを100とすれば、この390Dukeは120くらいある(因みに200Dukeは65くらい)。KTMらしくカラッと回ってパンチがあるが、レスポンスが唐突すぎることもない。それに比べたらDRZはややモッサりねっとりした回り方。
ただ、690Dukeの200Dukeも同排気量の中ではかなりスムーズでジェントルな回り方だから、390もスムーズかと思いきや意外とバリバリと勇ましい。200、390、690の中では390が一番ハードなフィーリング。もっともこれは、振動が多いというよりは排気音から来る印象だと思う。
シフトフィーリングはGromの横置きエンジンのような節度感の無さ(KTMっぽい?)で特にニュートラルに入りにくい。また、シフトアップ後にちょっとスピードダウンして再加速するときにノッキング気味になった。ハッキリ確認できなかったが、ギア比的に2速か3速くらいが高いのか?それともパワー特性的に下がスカスカなのか?
ハンドリング/乗り心地
跨ってすぐ感じるのはサスの硬さとストローク感の無さ。揺らしてフォークを縮めると明確に引っ掛かり感がある(倒立らしいとも言えるが)。走ってみても低速ではゴツゴツ感/ゆるられ感が強い。一方、50-60km/h出てしまうと不思議にゴツゴツ感がなくなりギャップでも意外と突き上げが少ない。
ただ、街中では40km/h以下でノロノロ運転を強いられる事は少なくないから、この低速ゆすられ感はストリートバイクとしては無視できないレベルだと思う。せめてサスを調整出来れば良いのだが、変えられるのはリアのプリロードだけというミニマムさ。DRZのサスと比べると、調整機能だけでなく動きの質感という意味でもグレードダウン感は否めない。
コーナリングはコンパクトな車体からくるクイックさと、ある程度のエンジン重量と重心の低さから来る安定感が中和されて中々のバランス。ただ当然ながら、モタードのような長い足と長いWBと軽い車体による奥深いハンドリングとは違い、凹凸の多い路面では揺さぶりが強そう。
と言っても、車体剛性がパワーに負けているという意味ではなく、むしろコンパクトすぎる車体をパワーに負けないように固めた結果、ある程度飛ばしてないと工合が悪いスウィートスポットの狭いシャシになってしまったように思える。
総合評価
軽量/コンパクトかつパワフルという意味では期待通りのバイクだったが、シャシ性能については余裕の無さというか懐の浅さを感じた。コストの制約でさほど高級なサスを付けられないのは仕方ないとしても、もう少ししなやかさが欲しかった。また、パワーに対して車体が小さすぎる事がセッティングを難しくしていると思う。
バイクは軽ければ軽いほど良いが、小さければ小さいほど良いわけではない事がよく判る。パワーに対して小さすぎると、前後荷重移動が大きくなりすぎ、それを抑えるためにサスを硬くするとスウィートスポットの狭いハンドリングになってしまう。その点、200Dukeの方がパワーと車体サイズがマッチしていて(サスももっとしなやか)バランスが良いと思う。
とは言え、リトルダイナマイトな390Dukeは急坂でタイトコーナーの多い北摂・六甲方面の僕にとってはかなり楽しくて速いバイクであることは確かだろう。DRZも基本は似たバイクだが、やや車体が大きすぎ重心も高い事が390Dukeに乗るとよく判る。だから、もしDRZに乗っていなければ390Dukeを買っていたかも知れないが、DRZから買い換えてもあまり代わり映えしないというのが正直なところ。しかも、似たバイクなのにサスは大幅グレードダウンとなると、差し引き30万円以上の出費に見合う買い物とも思えない。
まあこれは僕の個人的な状況なのでどうでもよく、今年から多少値上げしたとは言え60万円を切っているのは未だにコストパで国産400を圧倒してると思う。ただ、値引きはほぼゼロだろうし、輸入車なので新車購入時にはあのバカ高い諸費用が必要になるのが痛い。
これは690Dukeなどもっと上のクラスにも言えることだが、最近MT-09のような軽量・コンパクトで定価も安めの国産600-800クラスが国内仕様で登場してるのに対して外車は分が悪くなってしまった。ならばDukeの中では諸費用も税金も安い200が走りのバランスも含めて最もリーズナブルな気がしてきた。