居住性/ラゲッジ
室内空間は最近の軽らしく4人乗りでも充分に広い。パッケージングとしてはモコ(MRワゴン)に近いと思う。インパネの造形や質感もモコと同様にクリーンで良いと思う。しかもN-ONEは前席下に燃料タンクがあるため、後席を倒すとかなり低くフラットなラゲッジが出来る。
N-BOXと共通のプラットフォームなので室内長(バルクヘッドから室内後端)はほぼ同じ。違いは屋根の高さとAピラーの生え際と傾きで、これによって見た目の広さは結構違うが個人的にはN-ONEの広さで充分。むしろ後席は緊急用と割り切り、もっと軽量/コンパクトなスポーティー軽があれば良いと思うが、今の御時世では室内長MAXな軽しか許されないのだろう。
コメントで複数指摘があった助手席のオフセット感だが、確かに尋常ではなかった。軽トラみたいに運転席の方を広く取ってセンターコンソールも左にオフセットしている為、パッセンジャーの右足が外に押しやられ、女性の横座りみたいになってしまう。
シートとドアのクリアランスが何故か広いので、もう少し座面を広くしもっと左よりに座るようにしたらマシになると思う。もし側突安全上それが無理なら、センターコンソール(物入れ)自体要らないと思う。もしかしたら助手席は子供用で、大人が快適に座りたければ広い後席へどうぞという事かもしれない。
パワートレイン
ターボとNA(ノンターボ)両方乗ったので併記する。
先ずターボは他の軽とは一線を画すパワフルさ。喩えればNAノート(1.2Lの割にトルクフル)と同等の加速感があり、少なくとも街乗りでは不満のない動力性能だ。
ただし、エンジンノイズは他のNA軽以上に五月蝿い(音質も安っぽいガサガサ感)。さほどアクセルを踏み込んでいないのに、出だしからブワッと回転が上がり加速Gもやや唐突に思えるほど強い。もう少しトルク待ちのCVT設定にした方が良いと思う。
この仕様にはパドルシフトが付いていたので試したが、回転の勝手な上下動を抑制できるため、フラットなワインディングなど速度の上下動が程々の場所では良いかも。
一方NAだが、ターボが全く不要に思えるほどパワフルだった。何気なくスタートしても他の軽とは明らかに違う加速感。やはりCVTが回転を直ぐ上げてしまう設定なのでちょっと騒がしいが、何故かターボに比べると音質的にも音量的にもマイルドに感じた。
普通の軽ならエンジンが猛烈に唸るだけで殆ど加速しない程の急坂を登ったが(但し低速)、するすると登っていった。これは1.5L位のパワー感だった。一方、下り坂だったが80km/h程度で走ってもエンジンノイズは殆ど気にならなかった。負荷が増えれば当然回転は上がるだろうが、少なくともギア比的には快適クルーズが出来るほど高いという事だと思う。
ハンドリング/乗り心地
先ずターボ仕様から書くと、ステアリングがかなリ軽くインフォメーションもほぼ皆無というゲーム的操舵感。クルマの動きも(少なくとも中低Gに於いては)ロール感を伴わずヒョコッと向きを変える感じで、クルマを操っている感覚に乏しい。
サスは硬めだがギャップを超えた時のボディーのシッカリ感がある。良い意味で引き締まった乗り心地。ただ、こういうセミハイト系のボディーに対して、このシャシ設定が相応しいかは疑問。まあこれがホンダ流のハンドリングなんだろうけど。
続いてノンターボだが、 手応えがまるで無いステアリングは同じ。こんなWiiマリオカートみたいなステアリングタッチが今後普通になっていくとしたら非常に困る。ワインディングは走ってないので正確には判らないが、NAは若干足回りが柔らかいのか良い意味で軽やか&自然なハンドリングに思えた。
総合評価
スタイルは初代N360のカエル顔を採用したが、全体のプロポーションはエッセ(オリジナルはルノー5)と同じ台形で今更陳腐。目玉が飛び出したカエル顔は上下に大きく見える上に、実際のボンネットフードも高いので益々大顔/腰高感がある。
僕がもしN360をモチーフにデザインするなら、ボンネット及びウエストラインをもっと低くして、前後バンパー部分は逆スラントにして軽快感を出したいところ。だが、ハイト系前提のプラットフォームの制約上、上に向かって積み上げていくようなスタイルにならざるをえないのかも。
初代N360はバイク用のエンジンを流用しブッチギリのパワーでおまけに安いという革命的なクルマだったらしい。そういう意味ではN-ONEはN360と本質的に異なるクルマ。現代版N360とはどんなクルマか想像すると、NC700のエンジンを流用して車重は500kgで価格は60万円みたいな何かだと思う。
と、色々文句を付けたが、NAエンジンのパワーとその結果としての快適性はライバルを圧倒していると思う。結局、軽自動車が疲れる原因の大半は非力で五月蝿いエンジンだと思うので、パワーに余裕があるというのはとても大きい。現行軽乗用車の中でどれか選べと言われたら僕もこれにすると思う。
排気量的にもコスト的にも、軽のエンジンはこれ以上良くなりようがないと思っていたが、まだカイゼンの余地があったということか?ならば、この新世代エンジンをアクティーに積んでなおかつMTと組み合わせて欲しいとか、次期ビートはオープンやめて車重を600kgくらいに抑えたらかなり面白そうとか、また勝手に商品企画をしてしまった。