イントロ
ベースの1.2Lガソリンエンジンをミラーサイクルにして、スーパーチャージャーを付けた話題の仕様。
居住性/ラゲッジ
シートの形状や硬さはマアマア。旧型のように妙に小さいという事はない。ただヘッドレストが前に出っ張り過ぎているのか、シートバックと背中は隙間があるのに、首だけ前に押し出されている感じがした。
更に顕著な問題は背もたれの角度調整レバーの位置。写真の前方の長いレバーは座面の上下用で、後ろの小さいレバーが背もたれの角度調整。これが丁度シートベルトに隠れてしまう位置にあるので、最初は背もたれ調製が何処か判らず座面調製ばかり触ってしまった。判ったあとも使いにくく、これってポカミス?と思えるほど意味不明な設定。シートベルト装着前にポジションを調製させるための仕様とか?
室内も広くなったというが、現行ティーダと同レベル。旧ノートよりシートが若干大きくなった程度。
パワートレイン
自慢のスーパーチャージド・ミラーサイクルエンジンだが、パフォーマンス及びドライバビリティーは残念ながら旧型ノート1.5Lより若干劣る。
例えば出だしは若干もたつくし、速度が乗ってからの伸びやかさも旧ノートのほうが気持ちよかった。もっとも、旧ノートはこのクラスとしてはかなりパワーに余裕がある方なので、新型も1.2Lクラスと見れば充分力強い。ただ、全般的にトルクが安定して厚い旧ノートに比べて、新型はSCのON/OFF微妙に行なっており、若干だが音やトルクの変化が感じられてちょっと落ち着かない。
ノイズについては普通に走って五月蝿いレベルではないが、ブ~という低音とヒューンという高音の重奏で、ちょっと昔懐かしい感じ。今で言うとタクシーの音に近いか?
上りのアクセルを多めに開けると、音もトルクもそれなりに盛り上がるが、あまり回したくなる性格のエンジンではない。FIAT500ツインエアのような痛快さや伸びやかさも無ければ、HVのような無言のトルクもない。SCで大幅緩和されているとは言え、ノイジーな割にトルクがないデミオのミラーサイクルエンジンを思い出した。
尚、エコモードにすると殆どSCがオフになると店員は言うのだが、実際やってみるとトルクの落ち込みはさほどでも無い。これが無過給状態ならベースエンジンの実力は大したものだが、普通のATと同様にシフトプログラムが低回転よりに誘導してるだけかも。
あとアイドリングストップが付いているが、エンジン始動時の音が割りと五月蝿く感じた。これはスタータモーターの音なのか、それともエンジンのアイドル回転の音なのか?
ハンドリング/乗り心地
サスペンションはファミリーカーとしてはかなり引き締まっていて、ロール剛性が高く重厚かつタイトなハンドリング。その分乗り心地は、鋭い衝撃は抑えられているものの、路面のウネリでは多少突き上げ感や揺すられ感がある。その一方ステアリングホイールのグリップが細めで、操舵感もややグニャとしたところがあるので、タイトな身のこなしとミスマッチ。
また、小排気量・レスシリンダーのメリットは、エンジンの小型化と軽量化だが、その割に回頭性が良いとか鼻先が軽い感じはしなかった。もっともノートは旧型からティーダに対してアンダーステア傾向の設定だったので、新型もサスセッティングの問題かも知れない。
総合評価
欧州で流行りの過給ダウンサイジングに加えミラーサイクルも採用した意欲作…のはずだが、ドライバビリティーに関しては旧型より若干落ちているというのが正直な感想。
それと引換に得たのは大幅なカタログ燃費アップと、若干の実用燃費アップだとしたら悲しい。試乗なので本当の燃費は判らないが、燃費計は13km/L台を示していた。コースはアップダウンがキツめの街中+ワインディング。同じようなコースでティーダの燃費は12km/L弱位を指すので1割アップくらいになってしまう。
走り方がもっと大人しければもっと好燃費だとは思うが、それだけなら今流行の低燃費強制ギブスでしかない。穿った見方をすれば、ハードウェアを電子制御にしてあとはプログラムで何とでもなるというお手軽チューンの領域を、従来のATとFIに加え過給圧まで拡大したと言えなくもない。そんな事より、もっと内燃機関としての本質的な効率向上を目指して欲しかった。と言っても、本当の効率はちゃんと燃費を計測しないと判らないが。