イントロ
今年出たハスラーの普通車版のような車。
居住性/ラゲッジ
クロスビー最大の長所は室内空間だと思う。全幅・全長ともにスイフトより短いにも関わらず、高さと四角さによって前席も後席も広々している。しかも妙に高さだけが突出した軽のハイトワゴンと違って、幅と高さの比率が自然で居心地が良い。今時珍しい粗垂直に立ったAピラーによる、眼前の空間は広いのに明るすぎない室内も新鮮。
ただ外観はハスラーと同様、ボンネットの高さが不自然に高く見える。リッドを開けたらフェンダーパネルだけが80mmほど高い位置まで嵩上げされ、エンジンの上にかなり空間があった。僕がもしこの車をデザインするとしたら、60mmほどボンネットを下げ、そのうち40mmほどフロントウインドやサイドウインドを下に伸ばし、20mmほどルーフを下げて(その分着座位置も下げて頭上空間を維持し)、全体にロープロファイルにするだろう。
パワートレイン
パワートレーンは2グレード共通で、スイフトRStと同じ1L直噴ターボ+6AT。これにマイルドハイブリッドが付く。
先ず、低速平坦路で速度を維持するだけといった超低負荷領域では最近のスズキらしく静か(恐らくボディーや遮音性の問題)。しかし加速のために少し開けると、スイフトRStほど静かではなく意外とノイジーだった。恐らくそのせいで、パワー感・加速感も2割程度非力に感じる(同じノイズでのパワー感を比較してしまうから)。
これは重量増に伴いギア比をショートにした為、使う回転数が全般的に高いからだろうと思いきや、車体重量はスイフトRSTと比べて30kgしか増えていなかった。また最終減速比も各ギアの減速比も全く同じだし、タイヤの外径もサイズ表記から計算すると次の通り、クロスビーの方が6mm大きいだけだった(比率にして1%程度)。
クロスビー: 175/60R16 ⇒ 616.4mm
スイフトRSt:185/55R16 ⇒ 610.4mm
エンジンの最高出力はスイフトの方が僅か3馬力高く最高トルクは同じ。因みにモード燃費はクロスビーのほうが10%良い(2WD同士の比較)。というわけで、同じエンジン+ミッションのスイフトRStよりノイジーで非力な理由が全く解らない(-_-;) 。まあ新型ジムニーシエラと比べたら軽快で活発な感じがするが。
尚、6ATのフィーリングだけはスイフトと同じで良好。少なくとも街なかの低速・低負荷領域では、変速ショックは粗ゼロで、トルコンの滑り感も無かった。
ハンドリング/乗り心地
乗り心地は、かなり引き締まったスイフトRStと比べると、遥かに柔らかく快適。ジムニー・シエラに似たふんわり感だが、タイヤはシエラのようなバルーンタイヤではなく、普通のオンロードラジアル。アクスルハウジングも含めたバネ下重量の違いからか、同じ柔らかでもシエラには重厚感があり、クロスビーは軽快で率直な感じ。
ハンドリングはコーナーでそれなりにロールするがサス自体は腰砕けではなく、かと言って奥で突っ張るような感じもない。恐らくクロスオーバーとしては軽量・コンパクトな車体のお蔭で車の動きに一体感が有り、ハンドリングは意外と軽快。喩えて言うなら、脚長系のモタードやアドベンチャー系のバイクのように、大きめの姿勢変化を利用してヒラヒラとコーナリングする感じ。
総合評価
幅方向に寸詰まり感があり上に嵩上げされたようなハスラーのスタイルを、もっとロー&ワイドにしたら格好良いんじゃないか?を具現化したようなスタイル。オンロードスポーツであるスイフトを、モタード化したようなシャシと走り。このようにコンセプトは素晴らしいが、何故かエンジンが騒がしく・体感的に非力になったのが残念。
そして更に残念なのは、売れ筋と思われるグレードで200万円を超えてしまった価格。幾ら装備的に凝ってるとは言え、コンパクトカーが200万円超えとは、スズキの立ち位置としては大分変節してきた感がある。近年、出す車が尽くヒットしているスズキがまさか天狗になってるとは思わないが、「うちの車は安っぽいのではなく安いのだ」という名言を忘れないで欲しい。