イントロ
発売から大分経った2019年にようやく試乗できた。今からインプレを書いても読む人は居ないと思ったが、意外とそうでもないようなので遅まきながら書いてみた。
居住性/ラゲッジ
ノーマルのスイフトもシートが大きめでしっかりして中々快適だが、スイフト・スポーツのシートは更にがっちりしておりメタボなボディーをしっかりサポートしてくれる。近年の非ワゴン系としては立ち気味のAピラーやスポーティーカーとしてはアップライトなポジションも心地よい。
ただインテリアはベーシックカーとしては十分ながら、フィットやマツダ2など200万円クラスのライバルと比べるとやや安っぽい。赤の挿し色も「スポーティーで御座い」みたいな陳腐さを感じる。またステアリングホイールの下半分の内側がツルツルで硬い素材になってる意味が良くわからない。
パワートレイン
かなり久しぶりのMT車だったが、クラッチの繋がりがスムーズなのかエンジン特性が良いのか、ギクシャクせずに発進出来た。例によって低速・短距離の試乗コースだが、短い直線でちょっと踏むと怒涛の加速を見せる。少なくとも60Km/hくらいまでの速度域では、ターボ感は皆無で低回転からリニアにガツガツ引っ張る感じ。エンジン音もドライで悪くないが、やや硬質であまり軽やかに回るタイプではないかも。決して荒々しい訳ではないが、非常にトルキーでジェントルだった先代スイスポのエンジンと比べると、若干硬派かも知れない。
尚、信号待ちから1速発進で普通にクラッチを繋いだつもりがホイールスピンさせてしまった。2速発進を試すと普通に出来てしまうが、油断して殆どアクセルと開けずにクラッチを繋ぐとエンストしてしまった。低速トルクは十分だが粘りはあまりないというか、アイドリング+αの極低速トルクはそんなにないかも。6AT仕様も乗ってみたい。
ハンドリング/乗り心地
先ず乗り心地がノーマルのスイフトと比べて上質。RS系のようにビシバシ硬くないし、それ以外の標準サスのグレードよりどっしり落ち着いた感じ。唯一Hybrid SL(ストロングハイブリッド)の乗り心地はなかなか良かったが、スポーツは当然もっと引き締まっている。
ハンドリングは交差点くらいしか曲がっておらず、この車を評価するには余りにもしょぼいコース。SUVとか軽ワゴンならロールがデカいとかステアリングインフォメーションが希薄とかが判ることはあるが、スイスポで走ったらただ安定してるとしか言いようがない。
電子制御
「スズキ セーフティ サポート」が強制的に付いて来ないスイフトは、このスポーツと最廉価グレードXG(レスオプション)だけ。なので「そんな軟弱な装備は要らねえ」という硬派なドライバーは、軟弱な同クラスのクルマと同じような価格で、このハイパフォーマンスカーを手に入れる事が出来る。
総合評価
この世代のスイスポはスイフトの最上位グレードというよりはスイフトの兄貴分的車種という感じ。最初は「なんでスイフトのくせに3ナンバーなんだよ」と思ったけど、スイスポを見てしまうとノーマルのスイフトが寸詰まりというか特に顔はショボく見える。機能面でも使うバーツのアップグレードだけでなく、全幅の拡大によるトレッドの拡大やボディー剛性向上や多分サスジオメトリの変更などが走りに上質さに貢献してそう。
個人的に惜しいのが、上述のインテリアの質感よりもプレミアムガソリン仕様という事。それだけで燃費(燃料消費率ではなく文字通り燃料費という意味)の点でライバル車に大きく差を付けられてしまう。それさえなければ、普通のファミリーカーとして使っても何ら欠点はなく、ヤリスやフィットやMazda2と比較してただパフォーマンスだけが傑出した車になれたのにと思う。
とは言え、ヤリスは動力性能が強力でシャシもなかなか上質だが「スポーティー」かというと微妙だし、GRヤリスなんて値段が100万円以上跳ね上がる。その意味でスイスポは文字通りコストパフォーマンスの高さで今のところ世界中に並ぶものなしではなかろうか?今から15年もすれば「昔はあのスイスポが200万円以下で買えたのに」等とノスタルジーに浸っているかも知れない。