イントロ
スズキの試乗会で250の新型が非常に混んでたので、何時ものように空いてる車種から試乗しようと選んだ結果がこのバイク。試乗車が1台しか無いのに3サイクル目くらいに乗れたという不人気ぶり(;´∀`)
ポジション/足つき/取り回し
ポジションは完全にレース仕様という感じで、軟弱な僕は数分の試乗で首の後がだるくなった。R750と比べてもややハンドルが垂れていると思われ、僅かながらR600の方が前傾がきついかも。ステップも何処に有るか探してしまうほど後方かつ高い位置に有るが、前傾した上体とのバランスは自然。だから前を見ようとさえしなければ、枕の代わりにタンクを抱いてそのまま寝てしまえそう(^_^;)
一方足つき性は以外にも良くて、S750よりも良いばかりかGSR250と較べても遜色ない。だから走ってる時はキツイけど、信号待ちなどで足を着き、上体はストレッチをしたり腕組みをし集中力を高めるフリをするような時は至って楽ちん。
パワートレイン
数年前に乗ったR600はGSX-R兄弟の中では異例に静かでスムーズなエンジンだったが、今年のマシンは兄貴分とそっくりの漢っぽい排気音になっていた。
と言ってもパワー特性自体は至ってジェントルで扱いやすい。バックトルクリミッターが作動しない低めの回転数で走っても、250のように立ち上がりでパワー不足だったり、逆にビックツインのようにギクシャクしたりしない。低回転でトルクとレスポンスが適度でよく粘るというミドル直4の長所がよく出ていて、パワー特性だけで言えば中低速ワインディングで一番扱いやすいかも。
因みにこの後R750にも乗ったが、一回り太いトルクでレスポンスも良いので、低速では若干だが気を使う。もちろんR600はとて92.5kWもある最高出力を公道で出せる筈もないが、常用回転数でアクセルワークに気を使う必要がないし、もっとパワーが必要なら回転を上げればよい。これが所謂「扱いきれるパワー」ではあるまいか。
ハンドリング/乗り心地
今回の試乗コースはコーナーの多いレイアウトだったが、中々楽しいハンドリングだった。S750のようなスポーツネイキッドほど軽快ではないが、それなりに体重移動をすればタイトコーナーでもクルッと曲がるし、中速コーナーではベタッと寝かせたままアクセルワークでラインが変えられる感じ。車体が軽い上に安定志向のハンドリングなので、実際の速さはともかく思い切って攻める感じが味わえる。
因みにこれがR750だと、タイトコーナーの入り口で思ったほど曲がらないとか、S時の切り返しで重く直進してしまう感じになる。まあ、比べたら判る微妙な違いとも言えるが、計算なのか偶々なのかちゃんと差別化出来てるなあと思った。
総合評価
10年ほど前の600クラスSSはパワーもハンドリングも一番レーシーな設定で、リッタークラスのSSの方が寧ろ公道で扱いやすい事が多かったが、今は立場が逆転してるように思う。特に今年のR1000はV-Strom並に高いシートにそれと同じ位の高さにあるハンドルで跨る事自体大変。勿論このR600もポジションはかなりレーシーだが、足つき性は昨今のネイキッドより良いし、パワー特性もハンドリングも街乗り上等の扱いやすさ。
同じような立場のバイクであるR750は、排気量通りトルクも重量感も一回り大きいので、速度域が高いと有利かも知れないが、個人的にはより軽快で操ってる感覚を味わえるR600の方が好み。試乗会でも長蛇の列の250とリッターバイクに対して、中間排気量は安定の不人気ぶりだが、乗れば判るちょうど良さ。
ただ、未だにR600とR750は「逆車」なので、定価も諸費用もビックリの高さ。これを日本仕様で出してくれたら…と思うものの、出したところで売れないことはメーカーも判ってるので出すはずがない。というわけで、中身は良いけど日本では全然売れないという、ある意味漢スズキらしさが一番残ってるバイクだろう。