イントロ
昨年販売されたモデルだが試乗は初めて。銘機の誉れ高いGSX-R1000 K5をベースにネイキッド化したという。
ポジション/足つき/取り回し
ボリューミーなルックスに惑わされたのか、ポジションは前傾が強めに感じたが、GSR750と比べると同程度の前傾姿勢だった。GSR750はシャープなイメージの割に実はタンクが横にも上にも大きく、それを乗り越えてハンドルがあるという感じ。対してS1000は、トップブリッジもメーターもやや低めの位置にあり、ハンドルが僅かに手前で低めということではなかろうか。
足つき性もGSR750とほぼ同じだが、S1000の方が僅かにシート幅が広い分(というか角ばっている?)若干悪いかも。
パワートレイン
クオーンというやや荒々しい乾いたサウンドは漢スズキ直4の血統。音とパワーの盛り上がりから、結構引っ張ったつもりでも恐らく4000rpmくらいしか回ってないというビック直4にありがちなパタンだろう。
以前R1000 K5(2006モデル)に試乗した時は、軽さと小ささにビックリしたものの、パワー的にはさほどでも無いと思った(少なくとも低速では)。このS1000もどっかんトルクではないがよりスムーズで、GSR750と比べると一回り力強い。K5からの重量増を考えると低速トルクは大分増強されていると思われる。とは言え、基本的に回してパワーを出すタイプのエンジンだろうから、低速ではこのくらいで丁度良いと思う。
ただ気になったのはレスポンスが過剰すぎること。特にコーナーではアクセルON/OFFでギクシャクして走りにくい。このバイクにはパワーモードのようなものは無く、あるのはトラクションコントロールの効きの調整だけなので、グリップする範囲で走ってる限りはパワー特性の調整は出来そうにない。
因みに、フルカウルバージョンのS1000Fは、もっと穏やかなレスポンスだったので、ネイキッド版はよりアグレッシブなキャラクタに設定してるのだろうか?
ハンドリング/乗り心地
バイクの生い立ちとルックスから相当塊感の強いハンドリングを想像したが、実際に乗るとそうでもなかった。塊感とは前輪分担荷重、若しくはハンドル周りの質量感で、これが強いとセルフステアが強かったりリーン時にゴロッと倒れてしまうような特性になるのだが、S1000ではそのようなことは感じなかった。リッターネイキッドとしてはかなり軽快で扱いやすいハンドリングだと思う。
もっとも直後に乗ったGSR750は、左右に揺らした時にもっと軽快で、しかも前輪がより遠くにあるように感じた。それに比べたらS1000はSS由来らしく、前輪とエンジンの重心が近い感じではある。ただ絶対的な重量が軽く(GSR750より5kg程軽い)車体もコンパクトなので、フロントの重さが程よい安定感に繋がっているのだと思う。
乗り心地に関しては、例によってフラットな舞洲のコースで走る限りは快適だった。加減速での車体の動きから察するに、割合しなやかなサスかもしれない。
総合評価
個人的には、軽量・コンパクトなMT-09や07が登場した今日、今更重厚強大なリッター直4ネイキッドはお腹いっぱいという感じだったが、GSR750より軽くてコンパクトなら話は別。シャープ過ぎるエンジンレスポンスをなんとかしてくれたら、S1000は今ワインディングで一番楽しく、街中でも苦痛が少ない大型直4ではあるまいか?