イントロ
KTMのアドヴェンチャーシリーズの中で最も「軽量・コンパクト」らしいので、オレンジキャラバン(試乗会)で乗ってみた。
ポジション/足つき/取り回し
ローダウンではない、アドベンチャー系に試乗するのは多分05年の東雲以来だが、「跨ることがアドベンチャー」という本質は健在だった。
実は試乗前にこれのローダウン仕様(50mm低くバネも柔らかい)に跨ってみたところ、両足のつま先が何とか同時に接地するという実用上ぎりぎりの線だった。よってノーマルの試乗車は想像通り雲の上だった。
まず、サイドスタンドを立てた状態でステップに左足を乗せ馬のように跨り、逆の右サイドに腰をずらして右足で車体を支えるところまでは何とかなった。しかし次に空いた左足でスタンドを払い上げようとしても、足がちょっと触れるだけで突起もないので上がらない。結局スタッフに手でスタンドを上げてもらって何とかスタート。降りる時も同様に手でスタンドを立ててもらってようやく下車出来た。
そういうケースなら、KTMがすかさずローダウン仕様を勧めてくると思うが、確か20万円ほど追加料金が必要になる。また、スプリングまで軽量な日本人向けに柔らかいものが装着されるので、僕のように体重に恵まれたライダーには余計。まあ、単なるあんこ抜きよりは随分ましだとは思うが、車高が下がると美点であるハンドリングや乗り心地が、大なり小なり影響を受けるのは避けられまい。だから僕は基本的に、大幅に改造しないと乗れないようなバイクは、そもそもその人向きではないと考えている。
すると、このバイクを実際使うという事はつまり、スタンドの上げ下げをやってくれる従者を随伴させるか、あとは自転車のようなケンケン乗りをマスターするしかなさそう。もしどちらも無理なら、多分又下770mmくらいが必要条件(推奨:820mm以上)だろう。何れにせよ、素の690Duke程度の車高が問題になるようでは、アドベンチャー系は手に負えないのは確か。
ポジションについては、僕の短い腕でも若干ハンドルが遠く、幅も広いかなといった程度で基本的にはアップライト。なので、このバイクで足付きが何とかなる体格の持ち主であれば、超楽々殿様ポジションになる筈。
パワートレイン
最小のアドベンチャーとはいえ1LもあるKTMのV2なので、余裕ありすぎのパフォーマンス。特性がかなりフラットなせいかエンジンキャラクタを推し量るのが難しい。とにかく、評価を下すには試乗の速度域があまりにも低すぎる。
敢えて言うなら、50km/h以下の市街地でもギクシャクしないし、690Dukeのようにウイリーしそうな唐突さもない(パワーモードは一番穏やかなアーバン)。あくまでも穏やかなツアラー的な性格だと思う。
ハンドリング/乗り心地
乗り心地は極楽で、まるで筋斗雲のよう(乗ったことないけど)。サスは舗装路の尋常な凹凸ならまるで無きモノのように吸収し、車体の姿勢変化も最小。シートもKTMの他のシリーズ(DukeやRC)と比べると異例にフカフカで快適。
にもかかわらず、ハンドリングが鈍重かというとそうでもなく、割と率直にリーンする。車体の大柄さはそれなりに感じるが、ゴロッと倒れこむような塊感やセルフステアの不自然な強さは感じない。ワインディングでも狭小でなければ結構楽しめそう。
総合評価
乗り心地は多分Vストローム1000より若干快適。取り回しもやや固まり感のあるVストロームより軽快な気がする。だからもし、足つき性も価格(140万円)も苦にならない体格にもお金にも恵まれた人なら、これほど長距離移動が楽なバイクもないだろう。
まああまり体格に恵まれなくても、アドベンチャーなのは乗り降りだけで、一旦走り出せば雲の上の極楽浄土。止まるな危険、停止1秒ケガ数週間。地球の果てまでアクセル踏んで、怖いものはStop and GO! ('◇')ゞ