イントロ
690Dukeは2016年モデルから大幅に変更されたという事を、大阪の試乗会で初めて知り試乗してみた。公道走行可能な車両を準備できたのはこの試乗会が最初で、ディーラーのスタッフも未だ乗っていないという。
2015モデルからの最も大きな変更点はエンジンで、従来からある1次バランサーに加えて、新たに2次(?)バランサーが追加された。具体的には、従来中央にあったカムシャフト(SOHC)が吸気バルブ側に移動して直押しになり、一方の排気バルブは長いロッカーアームで駆動する。そうして排気バルブの頭上に空いたスペースにバランサを追加したという。
ポジション/足つき/取り回し
ポジションは従来通り、上体はほぼ直立するしハンドルはフラットで幅広い。 リアシートとの段差がスムーズなのである程度前後に動ける。 個人的には日本のネイキッドのポジションより、こうしたモタード的ポジションの方が好きで、ストリート・ワインディング共に走りやすいと思う。
重量的にはツインの250くらいしかないので取り回しは良いが、車高が高いので跨ると250並みというわけにはいかない。シート高も幅もそれなりにあり、足つき性はMT-07/09より一回り悪い。
パワートレイン
690のエンジンは従来からスムーズで、390Dukeと比較してなぜか音も振動もマイルドだった。新型はアイドリング付近でかすかにザラついた感触が無きにしも非ずだが(追加されたバランサの影響?)、基本的には従来型と同じでビックシングルらしからぬスムーズさだ。
パワー的にも従来型と殆ど変わらないように感じたが、顕著な変化は低速域でのドライバビリティーの向上だろう。従来モデルは40-50km/hくらいでレスポンスが過激すぎるので、シフトアップして回転を落とすと(多分3000rpm以下)、今度はストール寸前みたいになったが、新型はそうした気難しさを全く感じずに(意識せずに)普通に乗れた。
勿論新型でも、2速で無造作に開けると飛んでいきそうなパワーはあるし、3速に入れたらさほど五月蠅く回ってないのに70km/h以上出てしまう程のパフォーマンスだ。これに乗るとMT-09ですら鈍重に感じてしまう。
ハンドリング/乗り心地
250Dukeが意外とネットリしたハンドリングなのに対し、690はこの排気量としてはかなり軽快な部類だろう。モタードのようにヒラヒラ軽快というわけではないが、意外とネットリしたミシュランタイヤ装着のMT-07よりは軽やかだと思う。勿論、日本のマルチシリンダのように、小さいのに重くてゴロンと寝るようなハンドリングではない。
サスは引き締まった感じでストローク感はあまりないが、乗り心地は悪くない。ゴツゴツ感や突き上げ感はなく、無駄に動かないが仕事はちゃんとするサスなのだろう。ただ、出だしの極低速で250/390では感じなかったピッチングを多少感じた。排気量なりにプリロードは強めだが、その割にWBが短いという事だろうか?
総合評価
このところ250や390ばかりに気を取られていたが、690Dukeもかなり面白いマシンだと再認識した。400ccオーバーで最小・最軽量のバイクはMT-07ではなく、この690Dukeだという事を忘れていた(モタードやオフロード系は除く)。恐らく100km/h以下の公道で最も速いバイクだろう。
その反面、低速ドライバビリティーの向上により、市街地走行やツーリングも楽々こなす。これ以上にコンパクトだが、旧態依然とした空冷ツインのスクランブラーがギクシャクしてしんどい事を思えば、690Dukeのエンジンは何と洗練されている事だろう。
凝った新機構のエンジンがトラブルを起こさないかちょっと心配だが、それさえなければ目下のところ最強のオールラウンドプレーヤーではあるまいか。