イントロ
派生車種ではないノーマルのMT-07は、直前まで情報が無かったが2018年に突如モデルチェンジを果たした。しかし関西では試乗車を出しているYSPが非常に少なく、しかも2018年の夏以降は全てレンタルバイクに切り替わってしまった。なので長らく乗れずじまいだったが、翌年の大阪モーターサイクルショーでようやく試乗することが出来た。
ポジション/足つき/取り回し
跨るだけなら発売当初から何度も跨っているが、今回のモデルチェンジで大きく変わったのはポジションだと思う。
先ず以前のシートは前に向かって極端に絞り込まれ、先端部で急にせり上がる形状だったが、新型は絞り方は普通で先端部もほぼ水平のままタンクに接続する。タンク自体も比較的緩やかに盛り上がる形状になり、全般的に普通のシート~タンクの形状になった。
その結果、シート高は同じでも新型は股が開いてしまうため、足つき性は一回り悪くなってしまった。ライバル比較でいうと、SV650より少し悪く、Z650より明らかに悪いと言ったところ。実は足をついて左右に揺らした時、旧型MT07は250のように軽快だったのに対し、新型は明らかに重く感じた(それでもこのクラスとしては軽い方だが)。しかし、車体重量や重量配分は変わっていないというから、それは足がしっかり付かなくなったから車体が重く感じるのかも知れない。
一方走り出してしまえば、新型の方が座面が広く、シートクッションもシッカリしてるので乗り心地は良い。また、旧型で前の方に座ったときの股間に食い込むような感じがなくなり、僅かながら前の方に座れるようになったのか、僅かにハンドルが近くなったような気がする。そう言えば旧型はステップが前すぎるとずっと言ってきたが、新型ではそれは感じなかった。これも前の方に座れるようになったからかも。
もっとも総じて言うと、ハンドルが近くて低くシートは高いという腰高系のポジションであることに変わりない。ちなみにSV650はハンドルがもっと高めで遠目。Z650はシートが明らかに低く、相対的にハンドルの位置が高く、前後方向近さはMT07と同じという最も楽なポジションだ。
パワートレイン
モーターサイクルショーの超低速試乗だから、精々40km/hくらいしか出せないが、相変わらずベリースウィートなエンジンだった。リッチでジューシーなトルクが簡単に出てくるが、決して唐突ではないパワー特性。軽快だがガサツではない排気音。
旧型は街乗りで偶にドンツキを感じることもあったが、新型は20km/hくらいのUターンでも特に問題を感じなかった。普段スクーターに乗っている私が、いきなりマニュアルミッションの大型バイクに乗ったのにギクシャクしないと言うことは、アクセルレスポンスが改良されたのかも知れない。
ハンドリング/乗り心地
新型はバネレート・ダンピング共に旧型より高く(硬く)なったらしいが、超低速でも全くしなやかだった。ハンドリングも超タイトなコースなのに、至って軽快かつ自然に扱えた。旧型のサスも私はそれほどプアーとは思わなかったが、コンディションによってはやや鈍重なハンドリングになることがあった。これはミシュランタイヤの温度特性も関係しそうだが、柔らかすぎるサスによりストロークの美味しい部分を使い切っていたからかもしれない。
因みに新型MT07と比べると、SV650はサスの動きが渋いというか若干ゴツゴツしてるし、Z650は乗車1Gまでは柔らかいがそれより奥で急に固くなりギャップで突き上げるという、カワサキ特有キャラを(Ninja250/400ほどではないが)若干感じる。
総合評価
2014年の衝撃的デビューから早くも5年、世界的大ヒットでこのクラスの市場を支配してきたMT-07。近年はSVやZの登場もあり少し影が薄くなっていたが、昨年のモデルチェンジで再びライバルを突き放した感がある。十分以上のパフォーマンスと人当たりの良さはそのままに、若干プアなサスとシートや時々顔を出すスナッチーなレスポンスと言った従来型の弱点は的確に改善されたと思う。
私も一時は、試乗車を出し渋るヤマハを差し置いて、予想外に出来が良かったZ650に靡いたけど、今回の試乗で形勢逆転。勿論、超低速走行だけでは判らない面もあるだろうが、バイクの乗り難さというのは大抵低速ほど顕著に現れるから、今回の評価で大体あってると思う。まあ個人的には、短足・短腕に優しいZ650のポジションは捨てがたいし、SV650の易さも魅力だけど、エンジン・サス等の基本性能や質感ではMT-07が一歩先を行ってるね。