イントロ
今年「全面改良」したV-Strom650。と言っても、エンジンやフレーム等の基本構成は同じで、パット見判る違いはフロントカウルの形状変更&縦目化。だが個人的に大きいのは大阪モーターサイクルショーの展示車に跨ってみたら足つき性が格段に良くなっていたこと。
尚、試乗会での並び順の関係で偶々XTに乗ったが(XT1台とノーマル2台あった)、見た目以外スペック上は同じようなので、乗った感じも多分同じだろう。
ポジション/足つき/取り回し
冒頭に書いたように足つき性の向上も目覚ましい。従来モデルだと僕の股下長では乗車からしてアドベンチャーだったのが、新型はスタンドで立てたまま左ステップから乗り、座ってからスタンドを払うと言う動作が普通に出来る。とは言え400Xなら両足の親指の付け根が付くくらいなのに対し、新型でも両足のつま先立ちレベルだけどね。それでも従来モデルの片足つま先立ちと比べたら偉大なる前進だ。
参考までに旧型のスペックを確認したら、何とシート高は835mmで変わってないではないか!試乗会のスタッフに因ると、シート形状を絞って足つき性を改善したというが、それだけでここまで変わるとは。スリムになったとは言え、他のバイクと比べたら依然大きめでフカフカの極楽シート。逆に今までが幅広過ぎたというか、最初からこの形にしてくれよと。
パワートレイン
従来モデルがどこかモヤッとしたエンジンだったのに対し、新型は霧が晴れたように快活なエンジンになっていた。実際レスポンスも軽快になったしトルク/パワーの向上も体感できる。丁度、Ninja250/Z250からVersys250のエンジンへの進化とそっくり。正直、従来モデルは車格に対してちょっと非力な印象があったが、新型はアドベンチャーらしく余裕のトルクで楽ちん高速移動が出来そう。
尚新採用のトラコンとローRPMアシストの効果はよく解らなかったが、ほぼ価格据え置きのままこうした電子制御が付くのは素晴らしい。
ハンドリング/乗り心地
ハンドリングも全面改良されていた。従来モデルは走りに大柄感があるというか、寝るのも曲がるのもマッタリという感じだったが、新型は軽快に寝てゆったり曲がるというアドベンチャーらしいハンドリングになった。今回の試乗コースはコーナーの多いレイアウトだったが、それが苦にならないばかりかむしろ楽しかった。
コーナーの立ち上がりでは若干リーンアングルが固定してしまうような強固さを感じたが、それ以外は至って率直なセルフステア。スポーツネイキッドのように(良くも悪くも)フロントのグリップ感や旋回性を意識すること無く、車体全体をベタベタ寝かせばフロントのグリップを保ったままそれなりに曲がってしまう感じ。
総合評価
エンジンにハンドリング、そして足つき性まで同時に改良されたモデルチャンジは中々珍しい。特にハンドリングは単にシート高を下げただけだと逆に重くなってしまう筈だが、逆に軽快にしてしまったところは素晴らしい。個人的にはバイクはワインディングを楽しんだり、街中を軽快に走り回る為の乗り物なので、長距離移動が楽なだけのマシンでは意味がない。しかし、このマシンなら高速で速さと快適さを味わいたくなるし、目的地周辺のワインディングでも楽しめそう。
最近流行りのアドベンチャー/クロスオーバーというジャンルの定義は良くわからないが、実態としては大きなモタード、つまりワインディングを含めた公道で現実的に速いオンロードバイクだと思う。V-strom1000もKTMのアドベンチャーも(ライダーの体格さえ十分なら)そうしたバイクだしね。
じゃあ体格に恵まれないライダーはどうするかというと、いきなり250に下がってしまうところが悲しい。V-Strom250もVersys250も人気はすごく有るけど、乗るとやはり非力過ぎる。400Xの500cc版を日本仕様で出してくれたら理想なんだけど…