ポジション/足つき/取り回し
見た目は原付1種の中でも小さい部類に見えるが、特に窮屈なポジションではない。
リアキャリアを持ってヒョイと持ち上げようとしたら動かなかった。やはり重量がかなりリアに集中しているようだ。
シート下はバッテリーパックと、それと同じ大きさの充電器が占領していて(オプションの追加バッテリーを買ったらここに装着)、収納スペースはゼロ(書類をのけると財布くらいは入るかな?)。もう少し配置を工夫したら、多少は収納スペースは取れたはずなのに…と僕と店員の意見が一致した。フタ付きの前カゴが標準装備されるが、これには鍵が付かない。
モーターはインホイールモーターではなく、スイングアームの中に組み込まれており、そこにリアホイールを片持ちで装着するという、エンジン+CVTと同じスタイル。なのでホイール自体はエンジン仕様と同じ汎用品であり、タイヤ交換も普通にできて合理的。
パワートレイン
600W(原付1種扱い)の電動バイク。同じカテゴリのヤマハEC-03と比較して、出足は力強いと感じた。車体重量が重い事を考えると、モーターのパワーが上なのは間違い無いだろう。
スタート直後の数メートルのレスポンスは緩慢だが、そこから先で急にパワーが立ち上がる。飛び出しを嫌った設定だと思うが、僕はもう少しリニアなトルク特性のほうが扱いやすいと思う。
50km/h台中盤までは割と直ぐに加速するが、60km/hには下りでも中々届かない。キツめの上り坂だと、40km/hちょいにスローダウンしてしまう。登坂能力はEC-03と似たり寄ったりだと思う。
エコモードはお約束の30km/h制限。ブツっとリミッターが効くのではなく、出だしからパワーが無くなり、30km/hで精一杯という自然な遅さ。まあこのモードは普段使わんでしょう。
回生ブレーキが付いてるらしく、アクセルオフで普通のCVTの原付並みの減速感はある。ただ、言われなければ分からないほど自然な設定。と言うことは、回生できるエネルギーも気休め程度ではなかろうか?
アクセルはエンジンバイクのようにケーブルを引っ張るのではなく、単なるポジションセンサーだから、渋さは無いがリターンスプリングの力が強い感じ。ストロークも長めで常に全開だから腕が直ぐに疲れてしまった。ただその後、ブリップの持ち方を工夫するとあまり疲れなくなった。
細かい点はともかく、全般的には原付一種としては異例にパワフルと言って良いだろう。当然ながら、エンジンバイクから乗り換えると、非常にスムーズかつ静かであり、とても快適なコミューターだ。
ハンドリング/乗り心地
乗って直ぐ感じるのは、ドッシリと安定した車体。EC-03のような高重心感はないし、ギャップを乗り越えてもフラつきは少ない。小径ホイールだからスラロームをすると不安定だが、真っ直ぐ走ってる限り安定している。
駐車場でクルクル旋回してみたが、切れ込みやフラッと倒れる感じはなく、Uターンも問題ない。流石に旋回中にギャップを乗り越えると不安定になるが、小さな車体の割にはサスのストローク感はあって、乗り心地も悪くない。この辺りは、ストローク感が乏しく突き上げがきつい中国製電気バイクとは一線を画す。
あと、プレーキが非常に強力。カックンブレーキではないにせよ、DRZの感覚で操作すると、ガッツンといきなり止まってしまう。
総合評価
EC-03は自転車のように簡素な作なのに25万円もする事が不満だと書いた。それに対してe-Let'sは、安定した車体に取り外し可能なバッテリーや大型前カゴを装備して5万円高(追加バッテリーは8万円)。
実用性という点でe-Let'sの方がマシとはいえ、30万円の原付一種となるとスズキも認める通り一般に普及するような商品とは言いがたい。第一、サイクル寿命600-700回で8万円のバッテリーでは、ランニングコストの安さで元を取るのは実質不可能だろう。
「価格競争はしない」と決め込んでるパナ/サンヨーのリチウムイオン電池(LIB)を使う限り、金持ちエコマニア向け商品からは脱却出来ないだろう。台湾製のLIBは世界最高水準の品質を誇るらしく、価格は中国製の2倍ながら日本製と比べれば格安。日本のバイクメーカーもそろそろ海外にサプライヤを求めたらどうかと思う。