イントロ
実は昨年発売直後に梅田の試乗会で試乗していたが、コースや先行車の関係であまりに低速走行を強いられたので、レビューを書くほどの情報が得られなかった。それから大分間が開いたが、街のバイク屋で試乗出来たのでようやくインプレが書けた。
ポジション/足つき/取り回し
ポジションは小型スクーターらしくコンパクト。ステップボードが狭めで足元はやや窮屈(前2輪のお陰でトーボードが後ろに張り出してる)。シート下トランクは後席下にあるので深さが浅く、これでヘルメットが入るのか?と言う感じ。
他のスクーターでもそうだが、無理やりステップボード(フラットフロア)にせず、センタートンネルにした方がレイアウトもポジションも自由度が増えると思うんだが。どうしても床に荷物を置きたい人がいるのかな?
シート高が割とあるので足つき性はあまり良くない(PCXより悪い)。上述のフロントの重さを含めやや腰高感もあるから、取り回しは良いとは言えない。125としては全体的に大柄なので、大島優子のように小柄な女性が乗ると、まるで大型バイクのように見える。
パワートレイン
狭めの市街地コースなので、最高でも60km/hに届かなかったが、その範囲内でのパワー感は大体PCX125くらいかな。シグナルダッシュでもさほどストレスフルではないし、キツ目の坂も登ったが失速感は無かった。車重が150kg以上ある原付き2種としてはよく頑張ってると思う。多分中低速寄りのセッティングなので、高速域の頭打ちは早いと想像するが。
ただエンジンフィーリングはPCXと比べてガーガーと五月蝿いしガサツ。まあマジェスティーSもこんな雰囲気だったから、ヤマハのスクーターは皆こんなもんかも知れない。
ハンドリング/乗り心地
注目のハンドリングだが、結論から言うとフロントが重めの普通の2輪車というのが総評。3輪だから極低速で安定してるかと言うとそうでもない。まあ普通にリーンするんだから当然と言えば当然。勿論、通常のスクーターで時々見られる、フロントが軽すぎてピョコピョコ不安定、と言った挙動はない。
タイトターンをやってみると、リーン初期は重さによって割とバタッと倒れようとするが、その奥では逆に「立ちが強い」(セルフステアが制限されてリーンしにくくなる)挙動が若干見られる。もっともこの辺は、もっと大きなエンジンをフロントに積んだスポーツバイクでも偶に見られる特性だと思う。
前2輪らしさといえば、スラロームをすると内輪差が感じられることくらいかな。左右の車輪は違う軌跡を通ってるなと判る。だからどうということはないんだけど。あとはコース的に殆ど試せなかったけど、高速直進安定性とかブレーキングの安定性が、MP3と同じくリーニング、リバーストライクの特徴なんだと思う。
勿論、フロントグリップに余裕があるので、路面μが低い場合での安全マージンは高いはず。PCXみたいにダートでリアを滑らせて遊んでたら、フロントがいきなり切れ込んで転倒みたいなことは無いだろう^^;
総合評価
僕は以前から前2輪のリーン出来るトライクに興味があって、こういう検証もしている。http://www.mc-taichi.com/moto/eng/mfi.html
残念ながらTricityもMP3もダブルウィッシュボーン式ではないので、ホイールとテレスコピックフォークが一式丸々追加され、更に平行リンク機構の分も加わった重量増となっている。実際に乗っても、丸々重量感として現れており、直進・減速時の安定性以外は、フロントが重い普通の2輪という印象になる。
もっとも、僕や話を聞いた販売店の予想に反して、少なくとも発売当初は結構売れたらしく、街中でもちょくちょく見る。多分、2輪車のサイズとコストで、2輪車より安定している乗り物が欲しいというニースがそれなりにあったんだと思う。その後、ヤマハやホンダがもっと大排気量のコンセプトバイクを出したのを見ると、リーニング・トライク市場に商機を見出しているのかも知れない。
自分自身これからドンドン高齢化して、転倒のリスクやダメージが増大すると思うが^^; さりとて4輪じゃつまらないしサイズ的に取り回しがしんどくなる。となると、転倒しにくいバイクみたいな乗り物が欲しくなるので、メーカーにはこの分野の開発を進めて欲しいと思う。