イントロ
昨年大阪MCショーで試乗して好印象だったので、公道で初めて試乗してみた。尚、今会乗った2016年モデルは2015モデルと較べて、ブレーキのタッチなど地味ながら効果的な改良がされているらしい。
ポジション/足つき/取り回し
足つきは見ての通り、あらゆる排気量・あらゆるジャンルのバイク中で最良だと思う。僕の恵まれない股下長でしかも足をガバッと開いてるのに、両足の裏がべったり着くバイクを他に知らない。
ただポジションについては、店内ではコンパクトに感じるものの、走りだすとハンドルが遠すぎて数十分で腰や肩がだるくなる。正確にはシートに対するハンドルの高さ・遠さ自体はネイキッドと同じくらいだと思うが、前すぎ高すぎのステップのせいでスクーターの如く足を投げ出した状態になる下半身とのミスマッチが問題なんだと思う。
これがもし僕のようなずんぐりライダーではなく、手足の長いスラっとしたライダーだとしても、上体は楽になるが下半身は膝の曲がりはよりキツく窮屈になるはず。だから多分誰にとってもチグハグ。とは言えステップをこれ以上下げると地面に擦っちゃうし、ハンドルを手前に持ってきて上体を起こすと、スクーターいや下手したらシニアカーみたいでカッコ悪いから、このシンドイポジションに耐えるのがアメリカンの男気ということなのだろうか?
パワートレイン
大阪MCショーの超低速コースでも意外とパワフルに感じたが、公道で乗ると素晴らしくスウィートなエンジンだった。よく知られたとおり、この水冷750エンジンはHDの他のモデルのどろどろ感とは一線を画し非常にスムーズ。ドタバタしたNC750より明らかになめらかだし、低速トルクはあるがビリビリ振動するW800などより伸びやかだと思う。
しかもただスムーズなだけではなく、下からジューシーなトルクが湧き出て軽やかに回転が上昇し、引っ張られるようにグングン加速する様はまるでPCXの拡大版と言った趣。スムーズだから低いギアで引っ張り気味になるのか、低速域ではレスポンスがシャープ過ぎると感じる事もあるほど。
といっても、ドゥカティ・スクランブラーのような過激なトルクレスポンスには程遠く、癒し系Vツインのマッタリ感も若干持ちあわせており、伸びやかだけど急かされない。MT-07のエンジンもミドルツインの中ではよく出来てると思ったが、これと比べるとドライというか素っ気ない感じだし、場合によってはシャープ過ぎる。
6速ギアボックスはギア比がかなりワイドなようで、80km/hくらいまでの領域なら、これがトップギアかな?と思いきや実はもう一段上があったという状況。だから110km/h位で高速道路を流せば、非常に快適にクルーズできると思う。
尚、試乗したのが真夏だったので、信号待ちで停止するとエンジンからの放熱でかなり熱かった。思わず手動でアイドリングストップをしてしまったが、一旦暖機が済むとそんなの関係無う暑かった。とは言え大型のネイキッドくらいなら多分これくらいが普通で、空冷のドゥカティ・スクランブラーと比べたら若干マシな気がする。
ハンドリング/乗り心地
素晴らしいエンジンに較べて、ハンドリングは最初かなり戸惑った。先ず極低速で僅かに傾けるとグキッと切れ込む。そうかと思えば、交差点などでホントに曲がろうとすると切れない寝ない曲がらない(;´∀`) キャスターアングルが寝たバイクの特性なのか、強力なセルフステアと強力な復元力がせめぎ合ってる感じ。加えて店のスタッフによると、17インチというHDとしては小径なホイールも切れ込みやすさに貢献してるらしい。
ただ、試乗コース不定・時間制限無しという外車ディーラーらしい太っ腹さに甘えてワインディングを何十分か走ってみると、このハンドリング特性が何となくつかめてきた。実はスラローム的に左右に振ってみると意外とというか相当軽快。その浅いリーンアングルから更に寝かそうとするとクッと重くなるようだ。
曲がるコツを平たく言えば、昔の舘ひろしのようにガニ股で大きく足を開き、肩を大げさに内側に入れたヤンキー乗り(;´∀`) イヤつまり、内側に大きく体重移動して曲がればしっくり来る。超低いシートと相まって膝擦り出来そうな気がするが、それくらい大げさなイメージで丁度良いみたい。 まあ個人的に普段乗ってるPCXがあまりに軽く寝てしまうので、体重移動を極力避けるような乗り方が染み付いてるのかもしれない。
乗り心地については、リアのストロークが見た目にミニマムなのでそれなり覚悟していたが、意外と突き上げ感やゴツゴツ感は無く快適だった。これは小径(15インチ)ホイールだが厚み(高さというべきか?)のある専用のバイアスタイヤの貢献度が大きいのではなかろうか? 因みにこのリアタイヤ、厚みはあるのにトレッド部分はかなり偏平(平ら)だった。寝かすときに抵抗感があるのはこのプロファイルのせいかも。
総合評価
素晴らしくコンパクトで低い車体、ベリースウィートなエンジン、やや癖があるが慣れればそれなりに楽しめそうなハンドリング、そして外車としてはリーズナブルな価格。だから不自然なポジションが余計に気になるが、その辺は個人差もあるだろうから是非乗ってみて欲しい。
HDのバイクとしては相当異質だと思うが、それ故にアメリカン(米人が言うところのクルーザー)など全く興味が無かった僕のようなライダーに訴求すると思う。ぶっちゃけ色々難ありのドゥカティやBMWと比べてソツがないし、下手な日本の大型バイクと比べても乗りやすく快適ですらある。
従来のハーレーファンがどう思うか判らないが、HD社には是非この路線を拡充してもらいたい。・・・と思ってたら、来年モデルからいきなり14万円ほどアップして、定価で100万円台に突入するという_| ̄|○ il||li だからコストパが高いHDが欲しいなら今年が最後のチャンスかも。こうなったら、スズキやホンダがこれとそっくりなバイクを出してくれんかな?