イントロ
今年はじめ頃にマイナーチェンジしたTricity。主な変更点はシート形状を変更しシート高が15mm低くなったらしい。2019大阪モーターサイクルショーで試乗できた。
ポジション/足つき/取り回し
冒頭から悪いが、足つき性をチェックするのを忘れてしまった。ただ、何も考えずに跨って足つきの悪さを感じなかったので、PCXより悪かった従来モデルより大分改善されている筈。ただ足を付いて車体を傾けて行くと、ハーレーのロードスター系くらい重々しい。まあ前2輪効果でリーンがゆっくりなので、大型2輪車のように何かの拍子にばったり倒れてしまうような不安感は少ないが。
ポジションはPCXのように足を投げ出せないので足の長い人には窮屈かもしれないが、膝から上が短い私には問題無い。垂直にそそり立つトーボードが間近にあり、しかもフロントカウルを含めた壁が結構高いが、それが今回はプロテクトされてるような安心感に繋がっていた。
その点PCXはカウルもハンドルも低い位置にあるので、見晴らしは良いけど気分的に少々落ち着かないし、ウィンドプロテクションも殆ど無い。今回のトリシティーはシート高の低下に伴いハンドル位置も下げたのかあるいは以前のままなのか判らないが、相対的にハンドル位置が高く、より背筋が伸びた正しい姿勢で疲れにくいと思う。
パワートレイン
少なくとも大阪モーターサイクルショーの極低速コースでは、155ccで165kgもあるとは思えないほど力強かった。出だしから40km/hくらいの速度域なら、私のPCX150と大差ない加速感だと思う。以前乗った125バージョンでも街中の50km/h程度までならあまり非力さを感じなかったので、155なら70km/hくらいまでは大丈夫な予感。
またヤマハのスクーターはホンダのそれに比べて、駆動系を含めたエンジンノイズがガサツでうるさいモデルが多いと思うが、Tricity155に関しては低音寄りのマイルドな音質で音量も控えめだった。残念ながらNMAXには未だ一度も乗れていないが、PCXへの対抗心むき出しの新開発BlueCoreエンジンの出来はかなり良さそう。
ハンドリング/乗り心地
ハンドリングは良く言えば安定、悪く言えば鈍重。車体を寝かすのも起こすのも、操作に対して常にワンテンポ遅れる。まるでリーニングダンパーでも付いてるかのように、ネットリ・ドッシリした動きだ。ただ取り回しのところで書いたように、大きく重い普通の2輪車とは違い、速度が落ちてもバタッと倒れてしまうような兆候はない。乗り心地についても、重さのお陰で125クラスとは思えないほど落ち着いていて快適。
実は数年前に同じコースで従来型のトリシティ155に乗ったが(インプレは書いていない)、ヘアピンカーブで別段攻めていないのに前輪(恐らく外側)が外に逃げて行くように感じた。しかし新型はそのような事はなく、前輪に左右一体感があるというか接地感が均等にあった。
公式サイトには今回のマイナーチェンジでサスペンション設定を見直したとは書いていないので、単にシート高が下がった事で、よく言えば安定(悪く言えば鈍重)志向になったのかも知れない。軽快さを売りにするバイクではないので、新型の設定の方がコンセプトには合ってると思う。
総合評価
トリシティーは他の原付2種クラスのスクーターのように、車の間を縫うように走る俊敏さは全く無いが、逆にそんな小賢しい走りをしようという気が全く起きないほど安定しまくっている。だから原2クラスのスクーターは忙しい朝の通勤快速という発想から転換し、休日にゆったり流すローカル線と考えれば、かなり快適で楽しい乗り物ではあるまいか?
安定して快適と言えば新しいForza250もそうだが、よりパワフルで高速向きである半面、低速ではパタッと倒れてしまうような不安感を覚えることも有る。その点トリシティー155は出だしから安定しており、流石にリバーストライクだと思う。
ただ勝手に商品企画をさせてもらえれば、あまりに重すぎ複雑すぎ高コストすぎるフロント2輪機構は何とかしたい。トレッドの制約でAdivaのようなダブルウィッシュボーンサスが無理なら、ヘッドチューブをもっと低い位置にもってきて、同じパラレルリンクからもっと短いフォークを出すとか。そうすればフレームはもっとストレートな形状で軽量・高剛性になり、太めのフォーク使えば各車輪に1本づつで済ませられると思うんだけど。