ポジション/足つき/取り回し
試乗会に出ていた大型マシンの中で、これが一番足付きがマトモそうだったので乗ったが、それでも両足同時に接地するかしないかだった。他のKTMバイクと同様に、シートの角を落としてないのも足つきが良くない原因だと思う。
ただ、ポジションはスーパーバイクとしてはあまりきつくなく、多分ここ5年位のGSX-R1000と同じくらいの前傾度だと思う。
パワートレイン
ギア比は1速から高めだがトルクは有り余るほどあるので、アクセルワークで気を抜くと飛んでいきそう。かと言って2速に入れて、30km/h台に速度が落ちるとスナッチが発生する。
よって、ボトムで30km/h~直線で50km/h台の試乗コースでは、2速固定でコーナーではクラッチを切るという走り方になってしまった。70km/h位まではカバー出来そうな余裕があったので、市街地では2速までしか要らない。こんなバイクはBuel1200と隼くらいかな?ドライで大トルクという意味ではクロスプレーンR1に近いかも。
普通の国産直4リッターバイクのように、一瞬タメがあってこれか回るぜみたいな盛り上がり感もなく、イタリアの赤いやつのように「ドカドカ凄いだろ」みたいな演出もない。このバイクはアクセルオン→瞬間加速、ただそれだけの素っ気なさ。
と言っても、レスポンスが過敏という意味ではなく、大型ツインとしては柔軟でむしろ扱いやすいと思う。ただ、最初からパワーがありすぎて、市街地走行は完全に想定外という感じ。最低でも50km/h位出てる場所で初めて楽しさが味わえるだろう。
ハンドリング/乗り心地
国産スーパーバイクはステアリング周りに重量物が集中したような塊感があり、日常的な速度域ではセルフステアも倒しこみも頑固なところがあるのだが、このマシンは990Dukeの如く率直にリーンして曲がってしまう。
エンジンにタメがないと書いたが、ハンドリングにもタメがない。もっと小さなバイクのようなカラッとしたテイスト、これぞ正しくKTM。だからと言って、サスが硬い訳ではなくむしろしなやか。ブレーキも猛烈によく効くが、カックンではない。
総合評価
エクストリームの木下選手がこのバイクで軽々技を決めていたので、割と扱いやすいかもと思ったが、半分正解で半分不正解だった。トッププロが操ると軽々と凄技が決まるが、素人が気を抜くと簡単に明後日の方向に飛んでいける感じ。正にエクストリームバイク。
キャラクタとしては、エンジンパワーもハンドリングも大型バイクとしては素っ気ないというか淡白。国産SBが演歌歌手で、イタリアンSBがエロ爺大統領だとすると、RC8はロボコップ。余計な演出は無く、与えられた仕事を確実にやるのみ。これぞ正しく、スポーツの道具だと思う。
喩えが分かりにくければ、ポジションが違うだけで990Dukeなどと同じようなフィーリングと言えば良いか。ただ、パワー・トルクは更に上なので、街中や中低速峠では完全に持て余すだろう。このバイクのポテンシャルを解き放てるのは、ミニサーキットでないサーキットか、あるいは伊豆・箱根スカイライン辺りでゴーストライダーをやる時くらいだと思う。