イントロ
もう4年近く前から注目していたAD3が、この度関西では初めて試乗できるようになった。2013年の東京モーターサイクルショーで見た200cc版とは違い、今回用意されたのは後発の400ccバージョンだ。
ポジション/足つき/取り回し
シート高はPCXよりやや低いと思うが、シートの幅が広い(前の方もあまり絞ってない)ので足つき性は同等くらいか。もっとも、仮にもし足つき性を改善したところで、この巨体を支える自身は持てないと思うが。
ポジションは基本的に問題ないのだが、店員に予め注意されたようにこの巨体の割にはハンドル幅が狭い(グリップ部分もスクリーンでカバーするため)。これが車体を支えにくい感じを幾分助長していると思う。押し引きは自分でやると転倒させそうだったので、店員にやってもらった。よって未確認だが、慣れても街の駐輪場では苦労しそう。
パワートレイン
ガラガラ・カタカタした音が安っぽいが、動力性能としては意外なほど活発。250㎏もある巨体を発進からグイグイ加速し、レスポンス遅れや加速の谷みたいなのは感じられない。市街地コースで精々50km/hくらいしか出してないのでそれ以上の速度域でどうなるかは判らないが、少なくとも町中を走り回る上で動力性能的にかったるいことはないだろう。
店員によれば200cc版はそれなりにトロいらしいので、このバイクには400ccくらいは必要ということだろう。
ハンドリング/乗り心地
先ずはこのバイクの肝であるフロント・サスペンションについて少し説明すると、Adiva独自のダブルウィッシュボーンタイプ。詳しいメカニズムは関連リンクを見てもらうとして、TRICITYやMP3等のテレスコピック方式よりも重心が低く高剛性で、総重量も幾分軽く出来ると思われる。反面、左右のホイールが一つのショックユニットを共有する半独立サスである。
さて結果としてのハンドリングだが、先ず跨った瞬間から取り回しの重々しさが半端ない事に気付く。車体を僅かに傾けるだけで、足で支え切れずにそのまま転倒してしまいそうな重量感と不安感がある。車両重量392kgのゴールドウィングF6Bですらもっと扱いやすいと思えるほど。
走り出してもその状況は同じで、寝かし込みがワンテンポ遅れる感じだが、そこから先は一気に倒れ込み、そのまま転倒してしまうのではないか?という恐怖感が付きまとう。本来は広大な駐車場などでもっと大きな回転半径から試したいところだが、市街地コースで直角コーナーしかないのでそれも叶わず。一方、直線でも停止中でも少しの風で左右に傾きそうになる。よって、何とか転倒させずに店までたどり着くのに精一杯というのが正直なところだった。
平たく言って高重心すぎる訳だが、ルーフ自体は然程重そうな構造ではないので、巨大なリアトランクの影響が大きいように思う。尚、MP3のような極低速以下で車体の傾きをロック出来る機構は付いていない。考えてみれば僕自身、ルーフ付きのバイクどころか、背の高いトランクやスクリーンが付いたバイクに乗ったことが無いので、短時間の市街地走行ではどう扱って良いか全く見当がつかなかった。
総合評価
というわけでビビリ走行で終わったため、残念ながら肝心のハンドリングの評価するどころではなかった。従ってAdiva方式のフロントサスの特性は良くわからないし、ルーフ付きの高重心車体をトライクの安定性がカバーしてるかも微妙。そもそもトリシティーなど屋根なしチルティングトライクだって、低速で特別安定してるわけではなく寧ろハンドリングに独特の重みがあるので、それとルーフの重みが合わさって強調してしまったかもしれない。
雑誌などでは「慣れれば問題ない」という決まり文句で終わってしまいそうだが、実際にこのバイクのオーナーとなった人が慣れるまでに、一体何度ヒヤッとし一体何度転倒しないといけないのだろうか?少なくとも、屋根付きバイクに乗ったことが無い人がいきなり乗って、さほど苦労もせずすぐに自在に操れるようなバイクでは無いと思う。
僕は普段、人には足がつく限り取り敢えず試乗することを勧めるが、これは手放しに勧められない。だからと言って試乗せずに買うのはもっと悪いが、試乗するならそれなりに覚悟して乗って欲しい(転倒させた場合の修理代も含め)。これはアドベンチャー系以外で日常がアドベンチャーになる「新感覚」の乗り物なのだから。