居住性/ラゲッジ
ポジションは姿勢が良いアップライトタイプで僕は好き。ウエストラインが相対的に低いので、見下ろし気味で開放感がある。走りだしても、上述の粘り系のハンドリングもあってか、意外と腰高感は少ない。
インテリアは日本車のみならずドイツ車やフランス車とも格が違う素晴らしさ。ポップでキュートなのに安っぽさがない。ボディーと同色のインパネがウキウキ。メーターパネルなんて、レトロモダンな時計のよう。真っ黒けのインパネばかり出してるメーカーは、デザイナーが居らんのかと問いたい。
パワートレイン
4輪車で未だかつて体験した事がない面白さ。先ずパワー感はスイスポMTより若干劣るくらいで、普通のコンパクトカーとしては非常に力強い。低速トルクがあるので回転を上げる必要はなく、普段はカラカラと軽快な音を微かに聞きながら快適に走れる。ギア比は結構高めなのか、60km/h位なら3速でも煩くない。5速まであるので、高速巡航も問題ないだろう。
アクセルを踏み込むと威勢の良いサウンドに豹変するが、その割には回転上昇は軽やかで、レブリミット(6500rpm)付近まであっさり回ってしまう。ギャンギャン五月蝿いのでレブリミットの半分位しか回さない事が多いバイクの直4とは対照的。さりとて、スムーズなバイクのツインとも違う。あえて言うなら、割れたサウンドでアドレナリン系なところがストリートトリプルに近いか?
回さない限り微かなカラカラ音+豊かなトルクという意味では、昨今のディーゼルに近いかも。ただ、ディーゼルは結構ターボラグを感じるモデルもあるようだが、ツインエアはターボがついてるなんて言われなければ分からないほど、最初からトルクフルだった。
アイドリングストップが付いているが、どうも単純にフットブレーキを踏むと作動するらしく、車庫入れで前進からリバースに入れる為にブレーキを踏むとエンジンが止まってしまう。また、ミッションは電気クラッチ式AT(DCTではない)なのでクリープが無く、割りとスパっと繋がるので、微速発進や車庫入れは少しやりづらい。
アイドリングストップはOFFに出来るらしいので、僕ならずっとOFFにしているだろう。ボンネットを開けると巨大なバッテリーが目に付くが、これはアイドリングストップ用に大型なのだという。個人的にはコスト的にも重量的にも余計な装備だ。
ミッションはDCTとは違うセミオートマだが、シフトアップ時には駆動力の抜けを感じることがたまにある。また、マニュアルモードで減速しながらシフトダウンしたら、殆どオーバーレブで拒絶されてしまう。これは、マニュアルモードでもシフトダウンは自動らしいので、ひょっとしたら既にシフトダウンされてたのかもしれない。
まあしかし、そういう細かい欠点を補って余るほど、ダイレクトなレスポンスとクラッチ操作からの開放感は素晴らしい。実を言うとMR-Sのセミオートマ(電気クラッチ)の方が完成度は高かったと思うが、何故か日本のメディアや市場には受けが悪かった。僅かにショックを嫌ってズルズルのATにするか、クラッチ踏まなきゃ男じゃないと昔ながらのMTにするか・・・日本って両極端なんだよね。
ハンドリング/乗り心地
ハンドルの操舵力はこのクラスとしては重めだが、個人的には丁度よい(大体スイスポよと同等で、インプレッサより軽い)。それもあってか、ハンドリングは外見から想像するより粘り系。少なくとも軽快感やシャープさを演出したタイプではなく、良い意味で安定感がある。
乗り心地も意外とドッシリ系で普通の路面では快適。ギャップで尖めの衝撃があったが、普段通らない場所なので当たりが堅いとも言い切れない。WBが短い割にはしっとりした乗り心地だと思う。また、ルックス重視のように見えるシートだが、サイズも硬さも不足は無い。流石イタリアン家具という感じ。
総合評価
噂に違わずとても面白い車だった。これが五月蝿いという人はむやみに回し過ぎか、直4(音質が違う)しか乗ったことが無い人だろう。第一、これよりもっと五月蝿くて不快な振動を出すクルマは幾らでもある。特に軽は尋常な速度で走るとそうなる。
日本のモード燃費は眼中に無いので減税はないが、実際の燃費は、店員によれば20km/L近く行くらしい。もっとも、活発に走れば13km/L位に落ちるというが、これだけ楽しければそんなの構わない。
問題は車両価格で、最廉価グレードで215万円もする。普通の1.2Lとの差額が25万円位なので、高過給ターボや油圧可変バルブ機構を考えると高くはない。つまりベースの値段が高すぎると言うこと。円高なんだしもう少し安くならないものか?もしアクアと大差ない値段なら、僕は迷わずツインエアにするのだが。
図太いトルク、ファンなサウンド、素晴らくお洒落なインテリア。もしHVやEVの時代になっても、こういうクルマは存在価値がある。喩えるなら、楽しさの最高効率を目指したクルマ。アドレナリンサウンドを響かせて警察のとっつぁんを置き去りにするもよし、キャンバストップから身を乗り出してつまらぬものを切るも良し。これぞ男の美学ではあるまいか。