居住性/ラゲッジ
ノーマルスイフトはシートバックの形状が背中にフィットせず居心地が悪かったが、スポーツのシートバックはもっとフラっとな感じで違和感は無かった。上着を脱いで乗ったにも関わらず、サイドのサポートは意外とタイトだった(僕が太ってるせいもあるが)。
また、僕のような短足がMT車に乗る場合、ハンドルとの距離を適切に調整したらクラッチが遠かった、というケースがありがちだが、このクルマでは問題なかった。座面の角度や前後長や形状も適当で違和感は無かった。
ただ、ウエストラインが高いせいで少し閉塞感がある。特に前ドアの後半から盛り上がる為、左斜め後ろの視界というか開放感に劣る。
ラゲッジスペースはノーマルと同じだが、普通のハッチバックの感覚からすると、床面も開口部もかなり高い。旧型と比べても高くなってるらしい。フィットハイブリッドと良い勝負かもしれない。
パワートレイン
先ず非常に静かなエンジンである。アイドリングだと静かな環境じゃないと、エンジンが掛かってるのかどうか判りにくいほど。走りだしても、意識的に回転を上げない限り普通のコンパクトカーより静かだと思う。ノーマルスイフト(1.2CVT) もとても静かなクルマだったが、その印象はスポーツでも変わらない。無理にスポーティーなサウンドを演出していない上質さに好感が持てる。
久々のMTなのでギクシャクしがちだったが、それでもクラッチが非常に軽いので思ったほどしんどくなかった。パフォーマンスについては、兎に角トルクが素晴らしく豊か。喩えて言うなら、非常にトルクフルに感じた新型インプレッサの2L-CVTに勝るとも劣らない。帰りに自分のDRZ-400SMに乗った時、出だしの加速に物足りなさを感じる数少ないクルマ。
6速MTなので4速辺りまではショート気味のギア比なのかと思いきや、印象としてはどっちか言うとロング(まあ、久々の4輪のMTなので、2輪のMTの感覚で測っている可能性はあるが)。さほど流れの速くない街中なら4速までで充分。新御堂など流れが速めの幹線道路でも5速で充分。試しに6速に入れてみたら殆どアイドリングで走ってるような感じだった。これは素晴らしく静かで快適な高速クルージングが堪能できそう。
上がどれほど回るかは例によってほとんど試していないが、新御堂への合流しかも上りで若干回したら、もう充分な加速を得られた。
燃費の点ではハイオク仕様なのがネックだが、燃料消費率としては回して走る事が多い試乗車で11km/Lくらいになるそうで、普通に走れば13km/Lくらい行くだろうとの事。
ハンドリング/乗り心地
残念ながら、市街地での試乗(しかもディーラーマンが同乗)なので、ハンドリングが判るほどのコーナーリングは出来なかった。交差点を回った印象としては、クルクル曲がる感じのノーマルスイフトよりは安定志向だと思った。とは言え、回頭性が悪いとか頑固な特性では決してない。ステアリングの操舵力も適度で反力も自然。
サスペンションもノーマルより幾分引き締まってはいるものの、ゴツゴツ感や突き上げなどは感じられず、むしろ重厚でしなやかな乗り心地だった。「スポーツモデルにしては快適」とかじゃなく、普通の基準で良い乗り心地だと思う。
ただ、難点というほどではないが、サスを引き締めると相対的にボディーの剛性感が落ちるという理の通り、ノーマルで感じた剛性の高さは感じなかった。従って、スプラッシュのあの強固な剛性感にも及ばない。
総合評価
スイフトスポーツを「ホットハッチ」と称する人が多いが、そうしたやんちゃさは全くないといって良い。むしろ、エコ重視でちょっと安っぽい最近のコンパクトカーの中にあって、異例に上質で大人びた味わいのクルマだと思う。
現行モデルになってからノーマルのスイフトは、高品位な車体に対してエンジンが余りにも非力だと書いたが、スポーツでようやく本来のバランスに達したという感じ。
ワインディングで乗っても勿論楽しいとは思うが、タイトなコーナーをヒラヒラとクリアするというタイプではなく、伊豆/箱根のような中高速ワインディングをビシッと走る感じ。そして上述のように、静かなエンジンと高いギヤ比、安定した車体と快適な乗り心地によって、高速クルーズが快適なクルマだと思う。