イントロ
ホンダから新発売された大型スクーターをオフローダーぽく仕立てたバイク(クロスオーバー?)。3月の大阪モーターサイクルショーではまだ参考出品的な扱いだったのに、1ヶ月も経たないうちにライドオンフェスタで試乗できた。見た目に巨大で手に負えそうも無いと最初は敬遠していたが、展示車両があって跨ってみたら思ったより遥かにマトモな足つき性だったので試乗することにした。
ポジション/足つき/取り回し
スクーター(特に大型のもの)は車体幅が広いので、シート高の割に足つき性は非常に悪い。よってそれの車高を上げたようなこのバイクは、とても僕の手(いや足か?)に負える代物ではないと思っていたが、冒頭に書いたように開けてビックリの足つき性の良さだった。
具体的には400XとかVersys-X 250と同じくらいの足つき性かな。じゃああまり良くないじゃんと思うかもしれないが、T-Maxなんてこれより遥かに悪いからね。普通のスクーターと違い、X-ADVはシート下の形状を脚を出した時に干渉しないように、上手く削ってるからだと思う。勿論、絶対的なシート高が遥かに高い、V-Strom650/1000やMT-09 TracerやKTMのアドベンチャーに較べて足つきが良いのは言うに及ばず。
次にポジションだが、スクーターと違いフラットで幅広なハンドルバーが高めの位置にあり、オフロードっぽい抑えの効きそうなタイプ。と言っても本物のオフローダーのように幅広ではなく、オンロードでの軽快なハンドリングと楽な姿勢と言う意味で丁度良いポジション。
パワートレイン
エンジン型式等を全く知らずに試乗したが、あとで調べるとNC750と同じ型式だった。しかし乗ってみると、NCのガサツさや鈍さは感じず、もっと軽やかで伸びやかな感じ。バリバリした音こそNCっぽいが、それは寧ろオフローダーっぽい勇ましさみたいなポジティブなフィーリングと受け取れた。
DCTだから嫌な振動が出る前に勝手にシフトアップするのは同じながら、ノッキングギリギリの低回転を使う感じのNCに対して、X-ADVはもう少し高い回転数を使ってるみたい。ようはバイクのエンジンとして普通に回ル感じで、ピークパワーもアップしてるかも。
ハンドリング/乗り心地
ハンドリングはライバル(?)のT-MAX(旧型)やBMW C650等より軽快。先ずリーンが軽くて左右にヒラヒラ切り返せる。旋回性(セルフステア)はホンダらしく穏やかで自然だが、さりとて大径ホイールのアドベンチャー系程大回りすることもない。また重心の高いバイクに有りがちな、グラっと倒れ込むような重々しさもない。実はこのホイールサイズって絶妙のバランスなのかも。
乗り心地はアドベンチャー系(脚長系)のような絶大な余裕は感じられないが、少なくともNC750X(ノーマル車高)くらいの快適性はあると思う。つまり一般的なネイキッドより快適だし、スクーターのようなリアのドタバタ感もない。よく考えたら、これはスイングアームとCVTが一体のPUではないので、正確にはスクーターじゃないけどね。
ブレーキも強力というか、ピッチングモーションが少なく安定してるから、結果的に速く減速できる感じ。と言っても、僕は試乗会で意識的に強くブレーキをかけることはなく、何気にレバーを握っただけだが割合強く掛かる感じ。だから普通のバイクにこのブレーキだと所謂「カックン」、つまりガクッとノーズダイブしてしまうかも。
総合評価
唯でさえ大きくて重いスクーターを嵩上げしたら、伝統的な日本男児の体型ではとも扱えない、どうせ欧州市場向けの商品企画だろうと思いきやさにあらず。所謂アドベンチャー系よりも寧ろ日本人向けのサイズで、スポーツ系の大型スクーターよりも愉快なハンドリングを備えたバイクだった。
それでいて、快適な乗り心地と余裕のあるパワーや大型ラゲッジと言った、所謂アドベンチャー(クロスオーバー?)に求められる要件をちゃんと満たしている。これぞ正に日本人というかアジア人の為のロングツアラーではあるまいか?
とべた褒めしたが、あとで価格を知って軽いショックと脱力感に襲われた。最近ホンダは不可解なプライシングをするからなあ、と思ったらT-Maxも120万円くらいすると知ってちょっと納得。オッサン(爺さん)向けバイクはドンドン高くなってると言うことか?まあ、これより高価な本物のアドベンチャーはいくらでもあるので、それを買ってその巨大さに冷や汗をかくより随分スマートなお金の使い方だと思うけど。