居住性/ラゲッジ
今時めずらしいロー&ロング&ワイドなプロポーション。ちょっと造形に凝りすぎてゴテゴテ感はあるが、今のシーマやクラウンほど下品ではない。インテリアもブラックで硬質なテイストであり、やや保守的な上質感の方向性。
乗り込むとフロントウインドの傾斜や頭上スペース的に多少圧迫感があるが、走りだすと特に気にならなかった。足を投げ出すようなペダル位置だが、シートの調製でまあ妥当なポジションになった。
パワートレイン
試乗したのはFF 6AT 2.2LディーゼルのXD Lパッケージと言うグレード。アイドリングでドアを開けたままだと、昔ながらのディーゼルサウンドが聞こえるが、ドアを閉めると格段に静になる。
出だしの加速は案外トロいし、ATの滑り感やエンジンノイズもそこそこある。何というか最初からガッツリトルクが出るのではなく、タイムラグがあってジョローっとトルクが出てくる感じ。例えば、40km/h程度の急坂ではプリウスやアクアの方が力強く登っていく。2ステージターボの低速側でもラグがあるということか?
という訳で、街中をとろとろ走ってる限りディーゼルの力強さを感じないが、70km/h超えたあたりからの加速は非常に伸びやかで気持ち良い。ある意味高速型のエンジン及びATの設定だと思う。
なお右のマツダのサイトでは14という低圧縮比を自慢してるけど、これは高価なNOx後処理装置無しで最新排ガス規制をクリアするための苦肉の策で、高圧縮比=理論熱効率が高いというディーゼル本来の売りからすれば本末転倒。段々直噴ガソリンと差がなくなるという皮肉な話(右の「最新ディーゼル事情」を参照方)。
ハンドリング/乗り心地
サスペンションは硬め。ボディーがしっかりしているので、不快な振動や突き上げ感はギリギリ押さえられているが、市街地によくあるマンホールやちょっとした段差をハッキリ感じることが出来る。
その代わりロール剛性は高く、交差点でも回頭性の高さも感じられる(ワインディングを走ってないので半分想像だが)。よってシャシもやはり高速/高G向きのセッティングなので、街中を走る限り恩恵はあまりない。
ボディーもサスもガッチリで重厚な手応えは、MPVやデミオでも感じるマツダテイスト。そういう意味ではブランドとして首尾一貫しているが、硬さ=スポーティーあるいは欧風(ドイツ車風)という固定観念や押し付けがましさを感じないでもない。大きなドイツ車には乗ったことがないが、UP!なんて全然ガチガチじゃなかったよ。
総合評価
評判の良いマツダのSkyActiveディーゼルを試そうと、当初はCX-5に試乗するつもりだったが、店頭で見てより軽くスポーティーであろうアテンザに乗ることにした。結論から言えば、速度の伸びはすばらしく「ディーゼル=遅い」という固定観念(がまだ残ってるなら)を払拭するには充分だと思った。ただ、他社の最新クリーンディーゼルに乗ったことがないので、マツダのスカイアクティブDが相対的にどうなのかは判らない。
後で考えると同じエンジンとはいえ、CX-5の方が低速よりのセッティングになっている可能性もある。少なくともこのアテンザはエンジンもATもハンドリングも高速ツアラーという感じで、街中でうろちょろせずに直ぐに高速に入って140-150km/h位でクルーズしたら快適そう。
価格は同じ仕様のガソリン車の丁度40万円高で、不思議なことに2Lガソリンでも2.5Lガソリンでもディーゼルとの差額は変わらない。そしてもっと不思議なことに、セダンとワゴンで値段が全く変わらない。なので僕が選ぶならワゴンにする。
ただ、車両代に300万円出せて高速代も苦にしない人が、マツダというブランドを選ぶのかどうか僕にはよくわからない。まあ、同クラスのBMWやAudiより何百万円か安いのに(多分)同等の高速性能を持つというのがポイントかもしれないが、それならスバルの方が通で知的なイメージだ。性能的にはしっかりしているが、個性的なスタイル以外は価値観が古臭いというか…マツダ車全般に言えることだが、未だに80年台のドイツ車信仰(コンプレックス)を引きずってる気もする。