イントロ
旧NC700Xから数えると何度も試乗したバイクだが、2016年モデルはマイナーチェンジされている。
先ず一見して判るのは、ダミータンクやフェアリングの造形が変更され、全般的にシャープなルックスになっている。そのタンクというかトランクの容量もアップしているらしいが、これは多分見た目に上の方に盛り上がっている部分のことだろう。ライト類はLED化されレンズの形も変わっている。
走りに関しては、サスペンションの仕様が少し変わっているのと、DCTモデルの場合は新たなモードが追加されたらしい。
ポジション/足つき/取り回し
試乗待ちのベンチの看板にはLD(ローダウン仕様)と書いてあったのに、実際の試乗車は全てノーマル車高だったので、仕方なくノーマルに試乗。足つき性はVFR800Xより若干良いが、400Xよりは一回り悪い。ちなみに以前ディーラーでLDに跨ってみたら、400Xとほぼ同じくらいの足つき性だった。
実はこのバイク、単独で見た時の印象よりも、実際には大柄だと思う。というのは、よく利用する駅の駐輪場に時々止まっているのだが、直4の750とかと較べてもでかいと言うか長い。かなり低重心なので取り回しはそれほど大変ではなさそうだが、この大きさには苦労しそう。
パワートレイン
エンジンは従来モデルから特に変更されていないようで、あえて言えばマフラーの形状が変わったくらい。ただ、カタログ上は変わってなくても、こっそりランニングチェンジされてフィーリングが向上している事も中にはあるので、若干の期待を持って試乗してみたが、特に変わったところは感じなかった(^^ゞ
従来通り極低速トルクが極太だが、バキバキ・ドタバタと鈍重で荒っぽい回り方。レブリミットも低いが心理的なリミットはもっと低い、回らない・回したくないエンジン。試乗したのはDCT仕様だが、自動変速モードではMTだったらエンストが怖くてそこまで落とせないような低回転を使ってグイグイ走るのも従来通り。その意味ではDCTが似合うエンジンだと思う。
今回新採用された「Sモード」(自動変速だがより高回転を使う)を短い距離で試してみると、2-3速で加速中はやや回転を上げるが、相変わらず回しても気持ち良いフィーリングではない。一方、アクセルオフで減速した時に極低速を使うのは通常のDモードと変わらなかった。勿論、エンブレが強いと扱いづらいので、このくらいの設定で妥当だと思う。
ハンドリング/乗り心地
毎度、平らな舞洲の試乗コースを低速で走るだけだから、針の穴から外界を見るようなインプレしか書けないが、サスペンションの品質向上はそれなりに感じられた。
元々NC750Sのような突き上げ感はないが、どこか大味な従来のNC750Xに対して、新型のサスはよりしなやかで、精緻な動き方をしているように感じる。「デュアルベンディングバルブフロントフォーク 」なるものの仕組みは判らないが、単純にスプリングをより高品質なものに変えた時の感じかな。
ハンドリングは従来通り大味というか大らかというか、よくも悪くも車体の長さと重心の低さを感じる。その意味ではVFR800Xよりも大柄な印象。
総合評価
サスペンション性能の向上は歓迎だし、ルックスもシャープになり、今回のマイナーチェンジは正解だと思う。ただ、初期のNC700から値段が年々上がっていき、更にMT-07という強力なライバルが登場したこともあり、以前のようなお買い得感はもうなくなってしまった。
まあクロスオーバーと考えればライバルたちの半値くらいだが、パフォーマンスも質感も半分ちょいと言ったところ。ダミータンクのトランク以外、これといった特徴の無いバイク。
見た目とコンセプトが似てる400Xは一回り小さいので扱いやすいしエンジンがスムーズで上質。排気量が2倍近くあるのに価格は4万円しか変わらないと聞くとNC750Xの方がお買い得に思えるが、個人的には400Xのパワーで十分。
逆に言うとNC750Xに向くのは、比較的大柄でチマチマと街中を走ることは少なく、コストパ重視で細かいことを気にせず、楽な姿勢で高速道路をバコーンと走りたい人といったところかな。