イントロ
日本では今年の9月に発売されたばかりのニューモデル。7月のスズキファンライドには間に合わなかったので試乗は初めて。
やや豪華・高価になりすぎた旧グラディウスの反省からか、新型SVは軽量・簡素・スリム化され、パワーはアップ、重量はダウンしている。
ポジション/足つき/取り回し
試乗車のバーハンドルがやや前に倒れた位置にセットされていた為、ちょっとハンドルが遠めに感じた。店にあったGSR-S1000と比べてもグリップはやや遠く、ハンドルはとても狭い。下半身に関してはステップ位置がやや高い気もするが、前後位置は丁度良く上体の前傾度とマッチしてると思う。個人的にはもう少し低いステップが好みだが、スポーティなバイクとしては標準的な位置かもしれない。
車体はとにかくスリムで、タンクやシート前方の細さは250クラスを通り越してZ250SLクラス。しかも足つき性はZ250SLより遥かに良いばかりか、GSR250に勝るとも劣らないだろう。ただ車体はスリムでも、重量はしっかり詰まってるので(重心が高いと言うべきか?)取り回しは250並というわけではない。
尚、最大のライバルであるMT-07は、個人的にはポジションが唯一の弱点(ハンドルとステップに対してシートが後ろすぎ)なのだが、再確認の為にSVの試乗直後に近所の店で跨ってみた。するとハンドル取り付け角度がやや手前にセットされてたお陰で、意外にもSVより一回りアップライトなポジションだった!あれ?おかしいな(^_^;) 勿論SVもハンドルをもっと手前に倒せばポジションは改善するだろうが、SVのアドバンテージだと思ってた部分がそうでもないとしたらちょっとショック。
パワートレイン
グラディウス400と同様の非常にスムーズなエンジンを連想していたが、意外とドロドロ・マッタリした回り方だった。良くも悪くも昔ながらのVツインのイメージというか、これならアメリカンに積んでもマッチしそうな感じ。
店のスタッフは「5000rpmから上でこのエンジンのキャラクタが発揮される」と言っていたが、残念ながら試乗コースは渋滞気味でそんなに回せなかった。一瞬だけ5000rpmくらいまで回ったが、ビービー言うだけであまり気持ち良い回り方ではなく、僕なら低回転を繋いで走りたい。
中・大型のツインはどうしてもレスポンスが唐突になりがちだが、このバイクについては実用上問題ないレベルに何とか収まっているといったところ。初代SV400と比べたら間違いなく扱いやすいが、グラディウス400と比べたら微妙。基本的にグラ400の方がスムーズだしね。
回転の落ち込みを自動的に防止してくれるという「ローRPMアシスト」は、確かにアクセルをあまり開けずにクラッチを繋いでもスムーズに発進してくれるし、クラッチを繋いだまま停止直前まで減速しても、ガクガクとノッキングするような事はなかった。ただクラッチレバー自体は若干重め。もしローRPMアシストが無くて長いクラッチを使うハメになると、左手がかなりシンドくなりそう。
エンジンからの放熱は、気温25℃くらいで渋滞にハマってもホンワカ温かいくらいで済む。ドゥカティ・スクランブラーやHD/ストリート750の灼熱地獄に比べたら、遥かに快適で実用的だ。
ハンドリング/乗り心地
直線で車体を軽く左右に揺すってスラロームを試みると・・・全然動かない(・・;)まるでタイヤが接着剤でくっついてしまったかのよう。交差点でちゃんと体重をかけて曲がると思ったより率直にリーンし、途中から急に重くなるとか、逆に急に軽くなって倒れてしまいそうな挙動は感じなかった。
ただハンドリングの軽やかさや率直さという点ではMT-07や09の方が確実に上だし、GSR750と較べても頑固な感じ。こうした頑固さは、旧グラディウスを初めスクランブラーでもモンスターでも感じるので、やはりVツイン特有の特性なのかもしれない。その中では新型SVはリーン中の手応えが一定という意味で率直な方だと思うが、メーカーやマスメディアが言う軽快さとはかけ離れている。
乗り心地については特に意識していなかったが、特にゴツゴツ感や突き上げ感は無かった。停止直前くらいの速度で若干ユサユサするが、このクラスのネイキッドでは良くあること。極薄シートも見た目通りストローク感はほぼゼロでかなり硬いが、不思議と座り心地は悪くない。ただシートの表皮が体重移動でずれるのが若干気になった。まあ全般的には、試乗コースがあまり路面の良くない市街地(低速)ということから考えると、乗り心地は良い方かもしれない。
総合評価
最近のスズキ車がとてもスムーズで洗練されているので、新型SVにもそういうキャラクタを期待していたのだが、実際にはもう少しワイルドというか良くも悪くも漢らしさが残るバイクだった。勿論、街乗り等実用上問題があるわけではないし、本気を出せば・・・いや出さなくても普通に速く乗りやすいバイクだとは思う。
ただ、このバイクのスローガンはぶっちゃけ「打倒MT-07」だと思うが、それが達成できたかというと微妙と言わざるをえない。パワーは3馬力上だがその差が乗って体感できるとも思えない(少なくとも中低速で感じない)。車重は依然MT-07より14㎏も重く、実際乗っても重さは感じる。
そして個人的に大きいのは、MT最大の弱点と思っていたポジションが、ハンドルの取付角度で大分緩和されるのが判った事。これで逆にMT07のポイントが高くなってしまった。
もっとも、MTは低速でややスナッチーだし全般的に落ち着きに欠けるころもあるので、急かされないという意味ではSVの方が優秀かもしれない。しかしそれなら、パワーを狙わずもっとスムーズに回るようにして、MTよりマイルドで洗練されたキャラを訴求すれば良かったのではないか?(勿論軽量化と低コスト化はするに越したことはないが)
因みにVツインは動弁系が2つありシリンダブロックも2つに別れているので、重量やレイアウトやコスト面でパラレルツインより不利。逆に利点は、パラレルツイン(特に180°クランク)のようなガサツさがなく、スムーズでジェントルなエンジンが多いこと。
正にグラディウス400がその典型なのだが、どうも650はそうでも無いらしい。そう言えばグラディウス650に乗ったことがある複数の知り合いによると、期待したほど走らないとかモッサリしてるとか評価がイマイチだった。ならば単純に、この車体に400のエンジンを載せてくれたら良いバイクになるはず。それじゃあ折角スズキが頑張って作った新型SV650は浮かばれないけどね(;_;)