イントロ

400ccのパラレルツインエンジンを共有するCBR400Rなどの兄弟車。今年のモーターサイクルショーで初めて見て、サイス感もポジションもジャストフィットだったので、翌月のホンダ・ライドオンフェスタで試乗してみた。

僕はてっきり今年出た新モデルと思ったが、実は3年ほど前からあったらしい（；^ω^） ただ今年はマイナーチェンジで、大型スクリーンやLEDライト、フロントフォークのプリロード機構が新採用されたらしい。

ポジション/足つき/取り回し

ポジションは上体が完全に直立したオフロード系でとてもリラックスして乗れる。リッタークラスのアドベンチャー系のようにハンドル位置が高すぎるとか幅が広すぎるといった事はなく、平均的な日本男子にフィットするジオメトリだと思う。

足つき性もクロスオーバーとしてはかなり良好で、大体ローダウン仕様のNC750Xと同等かな。よってノーマル車高のNC750Xよりは一回り良い。シート高はともかく、シート幅がNC750の方があるので、その分足つきが悪化する。

パワートレイン

エンジンは3年前に乗ったCB400Fなどと共通なので、フィーリングも当然同じマイルドな癒し系。ただ今回の400Xは若干スムーズでフリックションが減ったような気がしないでもない。

パフォーマンスも少なくとも舞洲のコースを走る限り十分以上。やはり250と比べたらパワーの余裕が全然違うばかりか、同じパラツインで排気量が2倍近くあるNC750と較べても大きな差は感じられなかった。勿論、NC750のバキバキと荒々しいフィーリングと比べたら、400Xは断然スムーズ＆ジェントルだ。

400同士だと、グラディウス400の方が高回転ではパワフルだと思うが、Ninja400のようにガサツではない。そして程度の差こそあれ、ツインならどの排気量でも感じるエンブレの強さやドン付きが、400Xでは感じなかった。

ハンドリング/乗り心地

ハンドリングは普段PCXに乗っている僕でも重々しさを感じなかったので、結構軽快にリーンするタイプだと思う。しかしそこはホンダらしいというかクロスオーバーらしいというか、リーンは軽快だがセルフステアは控えめで落ち着いてる。

言ってみれば、やや重めで重心が低いモタードという感じで、ワインディングを常識的な速度で楽しむには最も適したキャラクタだと思う。同じ400でも直4のような塊感は無し、Vツイン特有の頑固さもない。そればかりか、同じパラツインで排気量が小さいNinja250の方が遥かに重々しいハンドリングだ。

乗り心地も400の中では多分一番良い。車高から言ってサスストロークがネイキッドと大差があるとも思えないが、フィーリングとしては足長系でしなやか。少なくともフラットな舞洲のコースでは、ノーマル車高のNC750Xと較べても乗り心地に遜色なかった。

総合評価

街を走ってるのを殆ど見かけないし、存在すらあまり知られていないような地味なバイクだが、乗ってみるとかなり良かった。ホンダの400ccパラツインエンジンのジェントルなキャラと穏やかなハンドリングマッチしており、乗り心地も快適で非常に安楽。一方、ワインディングなどでバイクの楽しさをちゃんと味合う事ができる（はず）。

400という排気量は、大型バイクと維持費が同じな上、車両価格も600クラスと変わらないばかりかヘタすると高い。勿論パワーは格段に低いとなると400に人気がないのは当然だ。しかし400Xに乗ると、たとえ同じ費用でパワーダウンしても、あえて400のイージーさを選びたくなる。

例えば、MT-07の軽さとパワーは素晴らしいが、逆にパワフルすぎてちょっとしんどい（個人的にはポジションがしっくりこないというが最大のネックだが）。勿論、リッタークラスのクロスオーバーなんて、乗り降りや取り回しでとても扱いきれるシロモノではない。

一方、GSR250だと維持費も車体も安い上に、400Xと同等の快適性が得られると思う。しかし、GSRのエンジンがいくら良いとはいえ、あの車体重量に対しては非力さは否めない。単独で上り坂もない高速巡航ならともかく、周囲のクルマとの駆け引きを有利にすすめるには、400以上のパワーはどうしても必要だろう。

そう考えるとやはり、日本人と日本の環境にベストマッチなのは400なんだなあと改めて思う。もっとも、欧米向けの500ccバージョンも重量/サイズは同じはずなのでこれでも良いと思うが。とにかく、250を超えるといくら大きくてもパワフルでも維持費は同じという日本の制度はやはり歪と言わざるをえない。400-500はとても良い排気量なのに、歪な制度のせいでガラパゴス化⇛不人気⇛メーカー撤退では悲しすぎる。