ポジション/足つき/取り回し
アメリカン並に低いシート高だが、アメリカンのように股下に邪魔な突起物がなく、スームな形状。これにより未だかつて覚えがないほど良好な足つき性だ。
その割に足元の窮屈さはなく、かと言って日本人体型を考慮していない本場のアメリカンのように、ステップが遠すぎてストレッチ状態を強いられる事もない。上体のポジションも、ハンドル高さ/位置共に尋常なので、チョッパーに有りがちなバンザイ攻撃になることもない。とても自然でリラックスできるポジションだ。
また、車高が低いバイクは引き起こしが重いのだが(てこの原理から当然)、このバイクは意外なほど軽かった。そのそも、車体サイズが写真で見るよりずっとコンパクトなので、跨って足で漕ぎやすい。
パワートレイン
基本的にNC750X/Sと同じパワートレーンだが、若干NCより回転がスムーズな気がした。理由はギヤ比やDCTのマッピング、もしかしたらパワー特性自体も変えてあるのかもしれないが、NC750Xのバリバリゴロゴロとしたパルス感が少し弱まってると思う。
低速回転型エンジンなのでアメリカンテイストなバイクとは相性がよいが、かと言って1300ccVツインのような爆弾トルクも無く、パワー/レスポンスともスムーズで扱いやすい。
ただ、コース全域で30km/h台という超スロー走行だったので(試乗会の方針)、街乗り速度域でのエンジン特性すら実は良くわからない。
ハンドリング/乗り心地
地をはうようなロープロファイルと長大なホイールベースにより、車体が寝てる割に旋回半径が大きいというアメリカンなハンドリング。ただし、車体は見た目に反して軽量で寝かしこみも軽いので、意外と楽しくコーナリング出来る。またアメリカンで時々感じる低速の切れ込みも無かった。
よって、ペースは遅いかも知れないが乗ってる本人は気持よく攻めてる気分になるし、ハンドルの下から覗くロー&ワイドなバックミラーがステップより先に接地しそうに見え、なんか遊園地の乗り物みたいで楽しいのだ。
乗り心地に関しては、スパーフラットな泉大津の突堤では欠点が見えることはないが、ミニマムなリアサスのストロークながら感触はゴツゴツしておらず、最低限のショック吸収性は有るような気がする。
総合評価
3月のMCショーに「参考出品」されたこのバイクを初めて見た時は、あまりに未来的すぎて市販するのかどうかも判らず、まさか2ヶ月後に試乗できるとは思わなかった。しかし乗ってみると意外にも率直で、アメリカンやメガスクーターなどよりよほど扱いやすかった。
色はパールホワイトが正義の見方っぽくて良いのだが、僕はマッドブラックが渋くて好き。直線的なエッジを持つ複雑な造形は、第5世代ジェットファイターを思わせ、路肩に設置された敵のレーダーに対するステルス性を期待させる。左右のフロントカウル(?)は正にウェポンベイのようにハッチが開き、ミサイルや多弾倉ロケットが出てきてもおかしくない形状だ(逆に飲み物や雑巾が出てきたらガックシだ)。
しかし問題は、誰が見ても戦隊ヒーロー的なこのマシンに、一体どんな格好で乗れば良いのかということだ。昨今のハイテク系仮面ライダーか?あるいはアイアンマンかロボコップか?よくは知らないが、そのへんのコスプレが必要に思える。実を言うと、椅子に腰掛けてピアノを弾いているようなリラックスした姿勢のお陰で、メタボもしくはもやし体型のオッサンが乗ってると何だかシニアカーのように見えてしまうのだ。
今後、大きなお友達が急速に高齢化していくなか、こんな戦うシニアカーみたいな乗り物が増えていく近未来を想像すると、喜んでよいのか悲しんでよいのか・・・。ここはやはりライダーもパワードスーツなどで強化する必要が有るかも知れない。物理的にも見た目的にも。