イントロ
Bモードのみの大阪MCショーの試乗から、公道で初試乗しSTD/Aモード試したら全然印象が変わった。MT-07とも比較して、9/21に再修正。
ポジション/足つき/取り回し
ポジションもまた「モタードみたい」と言われるが、普段モタードに乗ってる僕としては全然普通のネイキッドに思えた。本物のモタードはハンドルがもっと幅広で近い。逆にMT-07に跨るとハンドルが妙に狭くて遠く感じるし、前後の着座位置の自由度が無い。
その点MT-09はシートが割とフラットで前にも後ろにも座れるので、その意味ではモタード的とも言えるが、僕は普通のネイキッドでもこうあってほしい。また、ステップが後ろすぎるという声も聞かれるが、僕はあまり感じなかった。もっとも、より前傾のキツイ07のステップはもっと前にあるという点ではアベコベ。上半身と下半身のポジションの組み合わせを、09と07で入れ替えたらしっくり来ると思う。
タンクのせいで車体は一見幅広だが、シートの前端がかなり絞ってあるしサスも柔らかいので、足つき性はこのクラスとしては非常にに良い。例えばパラツイン並にスリムだと思ったCB650Fでも、シートはこれほど絞ってないので足つきはもうちょい悪い。また、250並にコンパクトだがシートの角が硬い390Dukeの方が実は踵が浮いてるかも知れない。とにかく、大型バイクの中では傑出して足つきが良いと思う。
パワートレイン
大阪MCショーの試乗コースは精々40km/hまでの速度域だが、とても扱いやすくスウィートなエンジンだった。排気量なりに低速トルクは十分以上だが、レスポンスが穏やかでエンブレも強すぎないので非常に扱いやすい。
しかし、公道でSTDやAモードを試すと過激なエンジンに豹変してしまった。アクセルを開けた時のトルクの出方が唐突でギクシャクしてしまう、所謂「ドンツキ」だ。これはBモードからSTDモードの変化が顕著で、更にSTDからAモードに変えてもそれほど違いは判らなかった。
よくパワーモード切り替えが付いてるバイクでマイルドなモードにすると、本来のパワーにフィルターをかけたたようなフィーリングになるが、このバイクはBモードが標準で他のモードが人工的に過激にしたように感じた。
街中のみならずワインディングでもBじゃないとギクシャクして扱いづらいと思う。敢えてSTDやAモードにするのは、広々とした直線で「おおぉぉ!俺のバイクすげえ」と悦に入る時ぐらいしか思い当たらない。
では、ずっとBモードで走れば何も問題ないのかというと、若干だがアクセル開度とトルクの出方がリンクしないような不自然さを感じた。例えば690Dukeなどビックシングルだと、アクセルを開けた分だけ即座にトルクが出てくる感じだけど、MT-09はバネが一旦縮んだ後にビヨーンと伸び上がるようなトルクの出方。
レスポンスの話ばかりしたが、パワーやトルク自体はもう十分なんてもんじゃなく、街乗りや中低速ワインディングが中心の僕には過剰。これよりもっと低速トルクが有るバイクや、もっとピークパワーが出るバイクはあるが、MT-09のように両方を兼ね備えたバイクを他に知らない。
ビックシングルとは違い、2000rpm以下でもストールしない柔軟性は素晴らしい。アイドリング付近のサウンドは直4に近いが、直4特有の中速域の抵抗感を伴う振動が無い。ちょっと割れたような軽めの排気音を出しながら、一気に吹け上がるような高揚感はストリートトリプルを思い出した。文句の付けようがないパフォーマンスだが、無い物ねだり的に言えば、常にハイテンションを強要されてるようなシンドさも感じた。
ハンドリング/乗り心地
よく「モタードみたい」といわれるほど軽くはないが^^;一般的な中型(400-600cc)ネイキッドより軽い。特に直4のようなフロント周りの重量感・塊感のようなものは無く、その点ではツインに近い。大体グラディウス400かNinja250位の重量感かな。コーナリングも軽快なんだけど、シャープすぎたり切れ込んだりせず至って自然。接地感は良好でヘヤピンやUターンもやりやすい。
ただ、少なくとも体感的には前後長が短く(慣性モーメントも小さく)、その割に重心はやや高め。更にサスが結構柔らかいので、ピッチング方向の動き(特にブレーキングでのノーズダイブ)が大きい。ただしサス自体は腰砕けではなく、フリクションが小さいから動きがスムーズで柔らかく感じるというタイプだと思う。
シートも柔らかいので乗り心地はかなりソフト(低速でギャップを越えると揺さぶられる時はあるが)。どっしりした安定感を重視するライダーには好まれないだろうが、よく動く足はストリートバイクとして好ましいと思う。
総合評価
MT-07との最大の違いはハンドリングや重量感ではなく、エンジンのフィーリングだと思う。3気筒の09はやや過剰レスポンス&全域パワーではあるが、排気音や振動は直4に近く、片や07はやはりツインのドライさ軽やかさが印象的。
なので、モタード風に仕上げるなら09でなく07でやった方が、エンジン特性的にも重量配分的にもマッチしたと思う。09はやや過激なストリートファイター的なコンセプトのようだが、そうした演出をしなくても3気筒エンジンだけで十分個性的だと思う。
とは言えMT-09単体で見れば、軽量コンパクトな車体にしなやかなサス、全域パワーのスウィートなエンジンと、ジャパニーズネイキットの価値観を塗り替える超大作ファンバイクだ。更に、シャープでクールなスタイル、85万円(8%税込み)という良心的な価格&逆車諸費用フリーの国内仕様という事なし。だから、プログラムを書き換えてフォース(というかパワー)の暗黒面から早く脱して欲しい。